やはり最初は偽証の中身を確認するところから始まると思います。
正直、原作では何を解けばよいのか?どこが謎解きの入り口なのか?という点がドラマ程はっきりしていない印象なのですが、やはりとっかかりはスカイローズガーデンでの偽証の分析から始まるのだろう、と考えるのです。
まずは、成瀬、杉下、西崎の謀議(口裏合わせ)の内容を確認します。(双葉文庫版P123、以下同じ)
- 計画性の否定
- 3人が会ったのは偶然
- 成瀬と杉下は同窓会後会っていない
- 成瀬と西崎は初対面
- 杉下は西崎と奈央子に面識があった事は知らなかった
- 西崎の単独計画
- 西崎による野口殺害(野口が奈央子殺害→西崎の野口殴打)
次に杉下と西崎の謀議の内容を確認します。成瀬に対するものです。(P314)
- 西崎による野口殺害(野口が奈央子殺害→西崎の野口殴打)
- 杉下は奥の書斎にいて殺害を見ていない
- 杉下はチェーンが掛かっている事を知らない(外鍵の隠蔽)
杉下と西崎の謀議の内容は、西崎が発案・指示したものです。彼の意図がどこにあったか別として、彼は自分が野口殺害の犯人となる事を望んだ。そうすると、杉下に対する2つの指示(杉下は殺害現場を見ていない、チェーンが掛かっていた事を知らない)は自分が野口殺害犯となる事を担保するために必要だった事と評価できます。杉下が殺害現場を見ていない事にすれば、その状況について矛盾する証言をせずに自身の証言だけが証拠となるからです。またチェーンの隠蔽も外部要因による事件への影響といった観点を取り除くという意味で、西崎が自身が野口殺害犯として振舞うには都合がいい内容です。
一つ不思議なのが、なぜ成瀬が外鍵の隠蔽を図ったか?その必要性に気付けたか、なんです。3人による謀議では外鍵については話題に上がっていなかったにも関わらず西崎と同じ判断に至った。
成瀬が事件の現場に関して把握している状況としては
・西崎による野口殺害(西崎の説明)
・杉下は殺害を見ていない(杉下の説明)
・外鍵が掛かっていた
このような内容です。しかし実際のところは二人の説明を疑っていた。それどころか、杉下の殺害への関与を否定できずにいた(P126)
西崎が燭台を持てないだろう、という判断は事件後西崎の『灼熱バード』を読んでからの判断ですから、彼が事件直後に杉下の殺害の関与を疑っていたのか?は疑問ですが、杉下・西崎の自分への説明に対して何がしかの違和感を抱いたのは間違いない。
作戦では杉下が野口を書斎に引き留め続け、奈央子を西崎が連れ出すものであったにもかかわらず、それが出来ずに野口が西崎の前に現れた事になるからです。しかも確認した書斎の将棋盤の駒配置がコントロール可能なものであったはずなものであるなら、野口を書斎に留めておくことが出来なかったという状況が彼には理解出来なかった(P127)。
少なくとも、彼には事件時にここまでの状況把握はあっただろうと思うのですね。そのうえで外鍵の隠蔽という彼の独自行動に結びつくのかが、ギャップがあって理解できていない点です。
0 件のコメント:
コメントを投稿