安藤は高野の問いに答えています。
『自分にとってのNは杉下希美』
でもこれ、納得出来ないんですよね。
『一番大切な人の事だけ考えた』に対して、安藤だけ解を与えられない。
一番大切な人は、自分以外の誰かです。そしてそれは事件の直後、何を自分の利益としてどう事件を処理するか、と言う究極の選択をする際の事なんです。
この時のそれぞれのNは、
西崎=奈央子
奈央子の罪を自分が引っ被って、奈央子を自分だけのものにする。
成瀬=杉下
計画性が認められた際に、殺害の関与を疑われる、ひいては殺人犯にされかねない杉下を嫌疑から除外する。
杉下=成瀬
計画性が認められる=成瀬と計画を練る間柄=さざなみに於ける偽証の発覚=成瀬を放火犯として捜査機関に差し出す、と言う展開を阻止する。
この時、
安藤=杉下?とすると安藤は杉下を護るための選択をしたの?と言う問題が残ってしまう。
安藤はこの時、杉下を護るために何をしたんでしょう?
どうもここの部分を考えると、安藤のN=自分?に思えるんです。 安藤が行った究極の選択は、自分が行った外鍵を掛ける行為を捜査機関に口を噤んだ、と言うものです。
それは誰のため?と考えると、それは自分のため、と見えるんですよね。安藤と言う、中の三人とは異なり、歪みのない真っ当な人間として描かれているキャラクターの行動として、この自分可愛さ故の行動は、十分説得力があるんですよ。私は、安藤の外鍵の隠蔽がある種の取引として実現した、と取っているのも、これが根拠になっています。
すごく曲解すると、安藤にも成瀬の利益と同じく、自分が鍵を掛けた事を話すと杉下が捜査機関の嫌疑対象になる、とは理解出来るのですが、これで杉下のために安藤が積極的に自らの鍵をかける行為に口を噤んだ、と言っていいのかは疑問です。
でもそうすると、全員が自分以外の大切な人の事だけ考えた、と言う杉下のモノローグと矛盾する。
このドラマでは、幾つかの場所で言葉のレトリック操作が行われていますが、それはそれで嘘はついていないのです。だからここの部分も嘘がない、という前提に立つならば矛盾が生じる。
もう少し考える必要のある部分のようです。
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