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2015年9月27日日曜日

ミステリーネタ その2 Nチケットの有効期限日

再びミステリーと称して、どうでもいいネタの話をしてみたいと思います。
成瀬と杉下が、島を出るために相互に送りあったNチケット。

成瀬から杉下へのチケットの発行日が11月17日。
杉下から成瀬へのチケットの発行日が3月9日。

でも、この2つのチケット、いずれも有効期限が3月31日!
瀬戸内で運行されている連絡船などのチケットの発行のルールを知らないので、これ以上突っ込めないのですが…

例えば4月1日からの料金改定が決まっていて、いつ発行しても期限が年度末まで、とか?

2015年6月7日日曜日

なぜ多くの人が杉下が守ろうとしたは安藤と取り違えたのか


スカイローズガーデンでの杉下のNは、成瀬です。

しかし視聴者のほとんどはスカイローズガーデンで杉下が護ったのは安藤、と取っていました。
これは巧妙に仕掛けられたトリックの為です。

概要は先の投稿『トリックの場所』を参照いただくとして、ここではどのような手で製作者はミスリードを誘ったのか、を詳述します。

事前の刷り込みとして、安藤が鍵をかけたカットに杉下の『一番大切な人のことだけ考えた』のモノローグを被せる演出
追い込まれた杉下が野口に僻地赴任を取消して貰うよう懇願する、という演出。
野口に〝ついて行くか〟と聴かれ、杉下に〝安藤が付いてこいと言えば〟と言わせた。
安藤の僻地行き阻止のために警察沙汰にしようと、計画をばらし、野口を挑発。
成瀬と杉下には会話をさせず、安藤が部屋を出て行くタイミングで杉下に成瀬へ外鍵の隠蔽を依頼。
夏江がただ一心に成瀬親子を庇う為に声を失った現実を見た高野に、安藤に〝守ろうとするが故に何も教えない〟と言わせる。
成瀬に、〝杉下が守ろうとしていた〟と言わせる。

これだけふんだんに安藤の為、的な演出を繰り返しました。ここまでやれば大抵の人は杉下のN=安藤、と思いますよね。

大事なポイントがあります。〝何から安藤を守るのか〟という部分です。
大概の方は、これを切り分けていないのです。
事件が起こる前、確かに杉下は〝野口から〟安藤を守ろうとした。それは間違いありません。
しかし事件以後、杉下が〝捜査機関から〟安藤を守ろうとしたと言えるのか?

これは必ずしも真とは言えないのです。何からまもるのか?という対象が変わっているのですから、守ろうとする側の行動原理も変化している、と考えるべきなのです。

更に複雑なのは、その変化した行動原理の結果として、安藤の外鍵の隠蔽が行われたのですが、これが隠蔽を行おうとした三人(杉下、西崎、成瀬)の真の目的ではなく、それぞれがそれぞれに実現したい利益の、共通の手段として外鍵の隠蔽が行われた、という部分です。
ここで視聴者の目くらましに効果を発揮したのがタイトルです。『〜ために』という言葉の持つ多義性を利用した、原因、意図、効果のすり替え誘導です。三人の意図は別のところにある、そのための行動の効果として安藤の外鍵が隠蔽された、というのが真理なのですが、これがさも意図と視聴者がとってしまった。

もう一つ絶大な効果を発揮したのが、『大事な人のことだけ考えた』です。
これはレトリック操作が行われました。
大事な人=守るべき人=愛する人、というステレオタイプによる誘導です。
視聴者はこの言葉に被せられた安藤の鍵をかけるカットから以下の類推をした。

守られた人=安藤→大事な人=愛された人=安藤

このように見事に制作側に引っ掛けられたんです。

では、大事な人という表現は嘘なのか?
製作者は嘘を劇中に挿入したのか?というと、必ずしもそうではないんです。
真の目的を達成するための必須条件、中間目標も大事、と言い得るレトリック操作です。

三人が居合わせたのは偶然、という偽証を成立させるためには安藤の外鍵の隠蔽が必須条件、だから大切なのは安藤。

こうして安藤の外鍵の隠蔽にトリックが仕込まれたわけです。

参照
『トリックの場所』
『ミステリーとしての仕掛け』
『結局杉下は誰のために偽証したのか』

2015年3月30日月曜日

安藤の外鍵を掛けた行為の隠蔽工作 4人の行動原理・利益

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『Nのために 論考』

安藤の外鍵の隠蔽行動の4人の行動原理及び利益を下記に解説します。
ここで大事なのは、安藤を保護する意図は無くとも、西崎、杉下、成瀬が安藤の外鍵を隠蔽する事により、それぞれの利益が達成される、という部分です。
これがトリックである、というという事の証左となります。つまり安藤の外鍵を掛けた行為を隠蔽する事がそれぞれの利益を守る上で共通の手段であり、その一点において暗黙の取引が成立したのです。

安藤の行動原理・利益
自分が行った外鍵を掛ける行為により、事件の凄惨化に繋がった事から、その責が自分に及ぶ事を恐れた為。

西崎の行動原理・利益
奈央子を独占する事。
西崎には奈央子を独占するために自分が野口をやった事にしたい。
外鍵の隠蔽に失敗すると、安藤が鍵を掛けた理由を語ることになる。
西崎は安藤に会っている。計画も感づかれた。杉下の究極の愛の相手が計画に入っている事も喋った。安藤にこれらを喋られると、計画が存在した事が白日となりその状況では犯行への杉下・成瀬の関与も疑われ、奈央子の独占が出来なくなる。

成瀬の行動原理・利益
杉下を嫌疑から除外する事。
外鍵の隠蔽に失敗すると、安藤が鍵を掛けた理由を語ることになる。
安藤が杉下へプロポーズしようとしている事を知っており、西崎が安藤へ”逃げられなかった”と告げた段階で成瀬は西崎が安藤に会った事を理解している。
安藤が鍵を掛けた理由を語られると計画が存在した事が白日となりその状況では犯行への杉下の関与も当然疑われる。その状況では進展によってどのように転ぶか判らない。成瀬自身は事実を見ていないので、杉下を護れない。であるなら西崎が罪を被る覚悟である以上、西崎の利益に乗る=西崎を切り捨てることが杉下を護ることになる。よって安藤の外鍵を隠蔽する。

杉下の行動原理・利益
成瀬のさざなみ放火事件の蒸し返しを防ぐ事。
安藤が西崎も含め三人で会っていた事を知っている。(ケーキを見られた)
成瀬が部屋にいる際電話もぶち切りした。
そして西崎が安藤と事件前に会っている事もわかった。
安藤に鍵を掛けた理由を語られると、偶然であったとの偽証が通らなくなる。
偶然でない=計画があった=自分と成瀬の関係を詮索される=成瀬のさざなみ放火事件が蒸し返される。
これは杉下にとっては避けなければならない事態。そのために杉下は成瀬をかばったのだから。だから安藤の外鍵を隠蔽する。

16/01/18 追記
安藤の隠蔽意図を修正します。
安藤が口を噤んだのは杉下を殺害の嫌疑から除外する意図です。その意味で成瀬と同じ、としてよい。これはいかにも自己の保身から、と見える裏に隠された安藤の行動意図ですね。安藤は真相が奈央子による心中であり、自分が喋ると杉下に嫌疑がかかる事に気づいていたんです。

杉下の行動意図は成瀬の保護ですが、その理由はさざなみの蒸し返しだけでは無いですね。作戦の参加者として彼自身が逮捕・起訴の対象にもなります。

トリックの場所

『Nのために 論考』

このドラマで使われたトリックについて書きます。
このドラマをご覧になった方の内、トリックが挿入されているということに気づかれた方はどれだけいらっしゃるでしょうか。殆どの方がトリックが挿入されていたという事自体に気づかれていないのではないでしょうか。

しかしこのドラマがミステリーである以上、トリックは存在しているし、事実挿入されていました。

それは何か。何処に挿入されていたのか。

それは安藤が外鍵を掛けた事の、4人による捜査機関に対する隠蔽行為です。これがトリックです。

この部分、杉下が安藤を庇う為に成瀬にも口止めした、と思われている方が殆どの筈です。
オフィシャルサイトでも安藤派は勿論、中間派、成瀬派もこの部分の杉下の行動は安藤を庇うのが意図、ということで一致していました。

杉下は野口との将棋において自分の手で安藤の人事が決まるという状況に追い込まれ、安藤の僻地行きの阻止行動を取ります。野口に懇願し、それがダメだとなったら西崎による奈央子救出作戦を野口にバラし徴発した。野口に自分へ手を挙げさせ、警察沙汰にする為です。そして悲劇が発生し、安藤を庇う為に外鍵の隠蔽を計った。

これが一般的な理解であると思います。確かにこう書くと杉下の行動は一貫して安藤を庇う為の行動と見える。

製作者はトリックを何処に挿入するのか?
殆どの人間が、疑問に思わず、しかし論理的必然性を持ち得ない場所。
状況証拠は一杯ある、でも良く考えると論理的な必然性は成立せず、あまつさえそれを前提とせずとも同じ行動を起こし得る場所。

確かに野口に対する行動は安藤の僻地行き阻止が目的です。
ですが事件以降の行動は安藤の保護ではありません。行動対象が野口から捜査機関に変わっているのですから、杉下の行動原理も変わっていると考えるとべきなのです。

安藤の外鍵の隠蔽行動は杉下、成瀬、西崎、安藤四人による取引が暗黙的に成立したからです。
四人にそれぞれ個別の行動原理が存在し、それぞれ個別の利益が存在していた。そのそれぞれの利益を達成する条件が安藤の外鍵を捜査機関に隠蔽する事だったのです。

それを理解するには四人の行動原理、それぞれの利益がなんであったのか、を理解する必要があります。それは明日以降詳述する事にします。

なお、ここで視聴者は製作者のミスリードの狙いにまんまとはまったわけですが、ここで威力を発揮したのが、昨日ミステリーとしての仕掛けとして書いた『一番大切な人の事だけ考えた』というミスリードの誘導です。

杉下の野口に対する安藤の僻地行き阻止行動も、作品全体としてみると謎解きの一部なんですが、それは後日触れる事にします。

2015年3月29日日曜日

ミステリーとしての仕掛け その二 「一番大切な人のことだけ考えた」(2)

お『Nのために』論考

昨日に引き続き、ドラマのミステリーとしての仕掛けについて言及したいと思います。

昨日は「一番大切な人のことを考えた」の、ステレオタイプを利用したミスリード効果について書きました。

今日はレトリックの操作についてです。

私がここで言っている〝操作〝とは?
『真の目的が別であっても、それを達成する為の必須条件、中間目的も同様に"大切"と表現しうる』

というものです。

私は安藤の外鍵の隠蔽は4人の間での取引が成立したのですが、その際の杉下のN=成瀬と判断しました。杉下にとっての外鍵を隠蔽する理由は自分と成瀬の関係がさざなみまで辿られる事を恐れたのです。つまり成瀬の放火事件の蒸し返しを避けるためです。

成瀬を保護するには安藤の外鍵の隠蔽が条件、だから大切なのは安藤、という論理展開になります。


これは実はドラマではなく原作でのミスリードのテクニックに関連するのですが、原作では最終盤で、守ってあげたのは安藤、と杉下が断言しているんです。
この表現を見たと思われる方に安藤派、中間派が多いと感じました。

言葉通りに取れば作品全体が安藤との恋愛物語、と取れるんですが、もし原作者が条件として大切、という意図で安藤〜を使ったんであれば、これもミスリード を誘う為の表現になるんです。
使用目的は最初のミスリードの誘導と同じですが、最初のものは映像表現としてふんだんに安藤の為的状況を演出して、その裏にある取引をミスリードさせる。キャッチとして打ち出す事で刷り込みをする、という前側でのタネ撒きをした。

原作では事後的な表現で安藤が大事としているから、条件としての表現で事後的な刷り込みを行なった、という事です。

16/01/18 追記
原作に関する記述で一部訂正します。
『野口に作戦をバラしたのは安藤のため』というのが正しい表現ですね。でも大勢には影響は無い。実際上記のように取っている方が多いですから。

後、成瀬に関しては、正確にはさざなみの蒸し返しだけではありません。作戦の存在がバレればその計画の一味として成瀬も逮捕・起訴の対象になります。それにプラスしてさざなみ、というのが正しい表現ですね。

2015年3月27日金曜日

ミステリーとしての仕掛け その二 「一番大切な人のことだけ考えた」(1)

『Nのために』論考

昨日に引き続き、ドラマのミステリーとしての仕掛けについて言及したいと思います。

これだけ判りやすさを避けたドラマの中でこの「一番大切な人のことだけ考えた」が非常に印象が強い言葉で、ここだけが明確に表現されているように感じられる言葉です。

この「一番大切な人のことだけ考えた」もタイトル同様、ミステリーとしての仕掛けだったと思います。

これはステレオタイプを利用したミスリード及び真の目的の前提条件も”大切”と表現しうるレトリック操作の為の言葉です。

今日はステレオタイプを利用したミスリードについて書きます。

これはスカイローズガーデンでの安藤に関する杉下の行動描写の部分で効果を発揮します。
公式サイトのファンメッセージで杉下の"N"は成瀬か安藤か、といった成瀬派、安藤派、中間派といったものが存在しました。

ステレオタイプとして

大切な人=守るべき人=愛する人

スカイローズガーデンで守られた人=安藤
そこから三段論法で、安藤が大切な人であり、安藤が愛された人、という構図が形成されていました。

これを素直に受け取った人たちが安藤派です。
一方ラストシーンでは杉下は成瀬と島へ帰りました。この帰結から安藤は杉下の上昇志向のシンボルとして若しくは弟を思うような気持ちで護られた、その意味で大切な人だったと理解したのが成瀬派です。
中間派はスカイローズガーデンでの時点では安藤としていますので、この部分だけとれば安藤派と同じ理解としてよいでしょう。

結局この三派はいずれも「一番大切な人のことだけ考えた」という言葉とラストシーンとのギャップにどう折り合いをつけるか、という処で苦慮していた訳です。

杉下に安藤の僻地行き阻止の為の行動を取らせ、危険を冒して西崎による奈央子救出計画を野口にバラし、安藤の外鍵の隠蔽を成瀬に依頼した。

杉下の行動は一貫して安藤を護る為の行動であり、安藤が大切な人であった、と全ての人に印象付けることに成功したわけです(この部分までは成瀬派も同じです)。

私は”大切な人=安藤”とは取っていません。
これも後ほど詳述することになりますが、安藤の外鍵の隠蔽は4人による取引が成立したからです。その取引には、一般的な意味での”大切な人=安藤”というロジックは存在しません。(一般的でない、レトリック操作によって”大切な人=安藤”という表現が成立するのですが、その部分は次回触れます)

ですので、「一番大切な人のことだけ考えた」はステレオタイプを利用したミスリードであると断言出来ます。

2015年3月26日木曜日

ミステリーとしての仕掛け その一 タイトル

『Nのために 論考』

ドラマがキルケゴールの実在主義哲学がモチーフである、という主張と証左は昨日までに書かせて頂きました。

今日からは物語のミステリーとしての仕掛けについて、いくつか書かせてもらいます。

まずはタイトルから

原作者である湊かなえが意図して使用したかどうかは不明ですが、『Nのために』というタイトルそのものが、トリックというか、ある種のミスリードを誘う道具であった、少なくともそういう効果があった、と見ています。

つまり、”~のために”という言葉の多義性をついたものです。

一般的に、日常使用するなかで”~のために”という表現は行動者の意図と理解されているケースが圧倒的に多いのではないでしょうか。

例えば”子供のために”と表現すれば、行動者の意図は子供を利する意図に基づいた行動と取るのが一般的です。

ですが、よくよくこの”~のために”という言葉の意味を掘り下げると、最低3つの、明確に区分すべき使用方法があると思います。

ひとつが、行動者の行動の原因としての”~のために”
ひとつが、行動者の行動の意図としての”~のために”
ひとつが、行動者の行動の結果・効果としての”~のために”

具体例をひとつ挙げて説明します。
スカイローズガーデンでの安藤のNは杉下です。つまり安藤にとっては”杉下のために”。

安藤は杉下が困った際に誰を頼るのかを確認する事を目的に外鍵を掛けた。それが事件の凄惨化の要因となった。

これを上記の原因・意図・結果を個別に分析すると、
原因=杉下(杉下が誰を頼るか)
意図=安藤自身(自分が知りたい)
結果・効果=事件の凄惨化(自分を含めた誰もを利することになっていない)
というものです。

安藤にとっての”杉下のために”は自身の行動の原因だけを言っていることになります。

タイトル自体がその言葉の多義性を利用した、原因・意図・結果をすり替え誘導することを狙った仕掛けである、というのが私の主張です。