お『Nのために』論考
昨日に引き続き、ドラマのミステリーとしての仕掛けについて言及したいと思います。
昨日は「一番大切な人のことを考えた」の、ステレオタイプを利用したミスリード効果について書きました。
今日はレトリックの操作についてです。
私がここで言っている〝操作〝とは?
『真の目的が別であっても、それを達成する為の必須条件、中間目的も同様に"大切"と表現しうる』
というものです。
私は安藤の外鍵の隠蔽は4人の間での取引が成立したのですが、その際の杉下のN=成瀬と判断しました。杉下にとっての外鍵を隠蔽する理由は自分と成瀬の関係がさざなみまで辿られる事を恐れたのです。つまり成瀬の放火事件の蒸し返しを避けるためです。
成瀬を保護するには安藤の外鍵の隠蔽が条件、だから大切なのは安藤、という論理展開になります。
これは実はドラマではなく原作でのミスリードのテクニックに関連するのですが、原作では最終盤で、守ってあげたのは安藤、と杉下が断言しているんです。
この表現を見たと思われる方に安藤派、中間派が多いと感じました。
言葉通りに取れば作品全体が安藤との恋愛物語、と取れるんですが、もし原作者が条件として大切、という意図で安藤〜を使ったんであれば、これもミスリード を誘う為の表現になるんです。
使用目的は最初のミスリードの誘導と同じですが、最初のものは映像表現としてふんだんに安藤の為的状況を演出して、その裏にある取引をミスリードさせる。キャッチとして打ち出す事で刷り込みをする、という前側でのタネ撒きをした。
原作では事後的な表現で安藤が大事としているから、条件としての表現で事後的な刷り込みを行なった、という事です。
16/01/18 追記
原作に関する記述で一部訂正します。
『野口に作戦をバラしたのは安藤のため』というのが正しい表現ですね。でも大勢には影響は無い。実際上記のように取っている方が多いですから。
後、成瀬に関しては、正確にはさざなみの蒸し返しだけではありません。作戦の存在がバレればその計画の一味として成瀬も逮捕・起訴の対象になります。それにプラスしてさざなみ、というのが正しい表現ですね。
1 件のコメント:
作戦をばらし、安藤の僻地行きを阻止しようと行動したのは確かとして、それは安藤を杉下が愛していたから、と考えるのは早計です。杉下の島時代を考えると、安藤への愛が無かったとしても、同じ行動を起こす動機はあります。
杉下が島時代に苦しんだのは、『大人の身勝手に若者の未来が潰される』事であり、それへの抵抗でした。彼女にはそのような事態に対して強い反発心があったとみていいのです。ですので、この行動を持って彼女が安藤を愛していた根拠とすることは出来ません。
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