高野が夏江と供に青景島に出向き、偶然成瀬と再会し、成瀬に杉下の電話番号のメモを渡す際に成瀬に向かって杉下の様子を伝えた言葉です。
高野は青景島に向かう前に杉下自身から彼女が病気で余命宣告を受けている事を聴かされています。それにもかかわらず、高野は杉下の病状には触れず、このように成瀬に言いました。そして「電話してやりぃ」。
恐らくですが、この状況下で高野が優先した事は杉下がそのような状態であるにもかかわらず、あいも変わらず成瀬を庇う為に嘘を付いている、という事を彼に伝える意図があったのではないかと思います。
『病気で余命いくばくもないにも関わらず、あいも変わらずお前を庇っている』
通常であれば、成瀬に杉下の病状を伝えるでしょう。ですが高野はそれをしなかった。なぜ彼は杉下の病状を成瀬に伝える事を憚ったのでしょうか。
それは以下のようなものでしょう。
『二人の関係性に立ち入りたくなかった、アンタッチャブルなものを感じた』
高野は杉下の独白後も、さざなみについて成瀬が放火犯で、杉下が嘘の証言で彼を庇っている、と見ています。その心情を成瀬にも話しています。しかし一方で自身の病状を明かしてまで偽証を続ける杉下(及び彼女の成瀬への強い思い)を見て、もう、事件を追う事を止めようとも考えていたと思われます。つまり、杉下と成瀬の間に踏み入るのはアンタッチャブルな行為である、と高野には思われたと思うのです。自身の後悔の念と、杉下の思いとの間にケリを付けたいとの思いで青景島へのやってきたと考えられます。
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