2015年4月2日木曜日

杉下の『N』


『Nのために 論考』


前回までで、オフィシャルサイトの投稿締め切り時点での私の認識の到達点までを説明させて頂きました。

このドラマで最後まで明かされる事の無かったスカイローズガーデンでの杉下の『N』=成瀬と結論しました。

それはただ単にラストシーンからの類推でなく、キャラクターへの思い入れでもなく、冷静にミステリーとしてのトリックの挿入可能性を検証して、四人の行動原理を分析した結果の論理的帰結としての結論であり自信を持って主張出来るものでした。その結果としての杉下の魂の上昇プロセスについてもキルケゴールの実在主義哲学のエッセンスを織り込んで表現出来たと思っていました。

しかし、「3月16日の衝撃」でも書きましたが、とんでもない可能性に気が付き、今ではそれは確信となりました。
まだ全ては解明出来ていません が、間違いありません。

私は自説のスカイローズガーデンでの杉下の『N』=成瀬、の見解を撤回します。

杉下の『N』=西崎、です。

オフィシャルサイトで私の意見、解釈、見解に賛同頂いた方々、本当に申し訳有りません。
また同じくオフィシャルサイトで私が意見差し上げた方々、生意気言ってすみませんでした。

安藤の外鍵の隠蔽取引説の奥に、もう一つのバックドアの存在の可能性に気付いてしまったのです。

それは杉下自身が定義する「究極の愛」と関係します。

〝罪の共有…共犯じゃなくて共有。誰にも知られずに相手の罪を自分が半分引き受けること…誰にもってのはもちろん相手にも…罪を引き受け、黙って身を引く〝

確かに杉下の『N』=西崎説は一部のネタバレサイトで展開されていた論であるのは自分も承知していました。でもその何れもが罪の共有関係に着目していて、結局は成瀬も安藤も罪の共有者、みたいな自分の頭で考えてないだろ、といったものばかりだったので無視していたんです。

私が重視したのは罪の共有よりも、後段。〝相手にも気がつかれずに、黙って身を引く〝という部分です。

想像してみてください。
もし杉下が、彼女自身が定義した究極の愛をスカイローズガーデンの事件の前から遂行しつつあったとしたら?
その対象は状況証拠として一番相応しいのは三人のうち誰か?

安藤、成瀬では、〝相手にも気づかれずに、黙って身を引く〝という定義にそぐわないでしょう。
そうするとこの定義に一番似つかわしい相手は西崎という事になる。

自分でかつて偉そうに言い切りました。『ミステリーにおいて論理的可能性は必然』と。

ですが、ここで困った事が発生する事になるんです。杉下が本当に『究極の愛』を完璧に実施していたとしたら、ドラマで描写されない。つまり、論理的可能性としての必然がその定義の故に描写し得ず、それゆえその存在を証明できない、というパラドックスを生み出すんです。

単に西崎というだけでなく、論理的必然としてパラドックスが発生した事に愕然しました。
そんなオチがあったんかい、としばらく体の震えが治りませんでした。










2 件のコメント:

motoさん さんのコメント...

ここはのちにやはり否定されるんですね。結局事件の際の杉下の行動原理は成瀬なんです。
これは偽証の構造、および杉下が偽証を受け入れたプロセスを冷静に組み立てるならば、やはり揺るがないのです。

ですが、このパラドックスは間違いなく製作者が意図して組み込んだものですね。
このパラドックスに気づくと、ドラマの世界がそれまでの10倍くらい広がるんですよ。
具体的にはこれ以降に詳述させて貰っているので、そちらに任せますが、このパラドックスの存在そのものが、何故事件が成立してしまったのか?杉下は安藤をどう評価したのか、成瀬が何故作戦に協力したのか、何故島編が原作以上に厚く作られたのか?杉下にとっての成瀬の存在、そしてタイトルの意味。

本当にいろんな事を考える、ドラマの世界観を大きく広げる隠し扉なんです。

ぜひこの作品が好きな人は、このパラドックスに気づいて欲しいですね。

motoさん さんのコメント...

最終的には、私は杉下のNと、究極の愛の対象者は別であるとの結論に達しました。
これを切り離して考える事が出来ないと、このミステリーの面白さに気づけないですね。
世間では、このパラドックスそのものが認識されていません。そうであるがゆえに、この物語で面白い所にほとんどの人がたどり着けていないのです。
また、冒頭に書いた、杉下のNと、究極の愛の対象者は別、というのもポイントですね。これを分離できないと、物語全体をミスリードする事になる。

まだ後者についてはまだしも、最初のパラドックスの存在に気づいた論を見たことは全くの皆無です。ただ、このパラドックスに気づいた時からが、本当にこのドラマの面白さが始まるし、杉下というキャラクターを深く知ることができるのですが、ほとんどの方がこのパラドックスの存在に気づいていない事が本当に残念です。