私はスカイローズガーデン当時の杉下の心に二人の男性が居た、という立場を取っています(以後、二股説とします)。
その二人とは西崎と成瀬です。
そして杉下の作戦に挑む際の魂胆は
『西崎の奈央子救出(=人妻略奪という罪)に協力(=罪の共有)し、且つ自身の西崎に対する感情は、西崎が〝杉下の究極の愛の相手〟と思っている成瀬と自分の共同作業でカモフラージュ(相手にも知られず)した上で、作戦終了後には本気で成瀬と関係を再開させる(=西崎から黙って身を引く)』
です。
ずっと杉下の心に、成瀬以外の人物が滑り込んでくるプロセスを考えていました。『究極の愛』という精神保護システムを形成しなければいけないほど、成瀬に歪んだ杉下。街中で見掛け脊髄反射で後を追ってしまう。西崎の『そいつとか、罪の共有』に感情をダダ漏れさせ、洋介の『成瀬さんの悪いウワサ』に心配でチケットを見詰める…
それなのに?
彼女の様子が変わるのはやはりゴンドラの前後なんですよ。ゴンドラ以降、Nチケットを見ない。ドレッサー事件の際にも『下は見ない』と何度も唱えるけれど、チケットは出番なし。まして『上を向く』『上に行く』は出ない。
やはりゴンドラの一件で彼女の価値観、そしてそしてそれは成瀬との関係に影響を及ぼす何かに変化があったのは間違いが無い。
このゴンドラで彼女の野望が叶った、と理解していました。それは決して間違いでは無いけれど、必ずしもポジティブなものばかりでは無かったのでは?という事に気付いたんです。
杉下はゴンドラで『こんな処、一人じゃ来れなかった』と言います。でも成瀬に対する宣言は『誰にも頼らず、上目指す』。つまり成瀬への宣言に違反した形での野望実現なんです。
野望実現が彼女の成瀬との関係再開の為の資格条件です。『さざなみの熱りが冷めるまで』だった彼女の『究極の愛』の時間条件が長期化の中でいつしか『野望が実現するまで』にすりかわった。だから彼女は野望の実現に邁進した。沖縄で奈央子のボンベを締めた行為も、成瀬との約束に起因しているんです。それゆえゴンドラに乗る事にも拘った。
それが、自らの宣言に違反した形での野望実現ですから、彼女は成瀬との関係再開の資格を喪失したとように感じたんです。それはつまり成瀬を諦める、気持ちにケリをつけるという心理になった。
こう理解すれば、野望が実現したにもかかわらず彼女が成瀬に積極的接触しようとしない事も、奈央子のドレッサーにチケットを見ない事もスッと入ってきます。
ストレス源であった成瀬を諦める事で冷蔵庫は満杯にする必要は無くなり、そして、成瀬以外の男性が杉下の中に入って来るのに、支障が無くなるんです。
参照
N作戦2における杉下の魂胆
杉下の『究極の愛』の構造
ゴンドラで杉下が解放されたもの
野望と『成瀬を頼れん』の関係
冷蔵庫のトラウマは存在しない
杉下の『究極の愛』の時間条件
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