2016年1月17日日曜日

杉下のゴンドラ後の西崎への接近


ゴンドラで杉下は成瀬を諦めた。諦める事で成瀬の呪縛から自由になった。そして彼女の心の中に成瀬以外の人物への感情が芽生える可能性が生じた。
しかし自分は『安藤とは釣り合わない』。この時彼女の感情は誰に向かったのか?
それが西崎だったんです。自分と同類の人物への心理的接近。

彼女は自分と似た境遇にある人物へ心理的接近をする癖がある。成瀬に対しても同じでした。成瀬の場合は『経済的不遇により夢を断念せざるを得ないかもしれない境遇』と『大事な場所(Home)の喪失感』。

では杉下が西崎に接近したものはなんであったのか?それは
『帰るべきHomeを喪失した、火をシンボルとする愛する者に対する強烈な歪み』

西崎の場合は自宅火災による母親のDVからの解放と母親の呪縛。
杉下の場合はさざなみ炎上によるしがらみからの解放と解放者としての成瀬の呪縛

二人は相互に相手が自分と似たモノを抱えている事に早い段階から気づいていました。
杉下は台風の時に西崎のDV跡を知りましたし、『灼熱バード』を読んで彼が母親に対して強烈に歪んでいる事に気づきました。野ばら荘の大家との話で西崎が帰れる場所を既に無くしている事も知っているし、歪んでしまった相手に対する感情を『究極の愛』という共通のキーワードで合理化しようとしている事も。
杉下に取って西崎はゴンドラ以前から相当気になる存在であり続けた。ですから杉下が成瀬を諦めたゴンドラ以降、急速に西崎に心理的接近をした。恋愛感情を持ったと見ていいと思います。

それが安藤が野ばら荘を出て行った後に描写される瞬間記憶です。
瞬間記憶はこのドラマでは変化が起きる、何かが始まる事のシンボルです。
ゴンドラはある意味成瀬及び安藤との終局ですからその描写はなく、西崎との関係の変化が始まる意味でここで描写されているんですね。


参照
ゴンドラで杉下は成瀬を諦めた
ゴンドラで杉下が安藤に感じた事
杉下が希求していたもの
キルケゴールの思想に対する証左

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