私が『杉下のN=安藤』を取らない理由の第二論点です。
杉下の安藤の外鍵の隠蔽行動です。
『杉下のN=安藤』を取られる方は、第一論点である僻地行き阻止行動からの一連として、この隠蔽を理解されています。いえ、物語を見た、ほとんど全ての方はこの一連については、杉下は安藤のために行動した、安藤を守る意図で行われた、と理解されています。
その理解のあらすじはこうです。
安藤が外鍵をかけた事を知った杉下は、安藤の将来を慮って、成瀬に鍵はかかっていなかったとの口裏合わせを依頼した。偽証できたのは成瀬に自分が背負いきれない罪を共有して貰ったから。成瀬は杉下の気持ちが安藤にある事を知り、隠蔽の依頼を受け入れ、事件後杉下から身を引いた…
しかし真相は違います。これはトリックです。
この外鍵の隠蔽は、四人による暗黙の取引なのです。
その全容についてはすでに詳しく述べさせていただいていますので、そちらにゆずります。ここでは『杉下のN=安藤』とした時に説明し得ない事項を二つだけ挙げておきます。
なぜ杉下自身は捜査機関からの聴取に対して自ら鍵に言及しないのか?それほどまで安藤が大事な保護すべき対象であれば、自身でそれを証言しないのか?もし何か別の要因があるとすれば、それは別の誰かに対する配慮、という事になり、『一番大切な人の事だけ考えた』と矛盾する。
三人(杉下、成瀬、西崎)の偽証(非計画性、偶然性の主張)は杉下に取って安藤を保護する意図と言えるのか?仮にそうだとして、西崎の要求は拒否したにもかかわらず、成瀬の指示は受け入れたのはなぜか?どちらであっても偽証の内容は変わらない。安藤を保護する意図であるなら、西崎が要求した時点で受け入れていたはず。杉下のN=安藤であるなら、『一番大切な人の事だけ考えた』のであるから、成瀬の存在が杉下の行動の決定要因とはならない。
参照
『杉下のN=安藤』を採用しない理由
トリックの場所
安藤の外鍵を掛けた行為の隠蔽工作 4人の行動原理・利益
4 件のコメント:
moto様
これまで匿名でコメントさせていただきましたが、今日から名前のnaoでお便りします。よろしくお願いします。
安藤の僻地赴任阻止行動の杉下の源泉、非常に興味深く読ませていただきました。
希美ちゃんのバルコニーでの宣言「どんな手を使ってでも闘う」は、この場面に通じているのですね。人の将来を弄ぶ行為及び人との闘い。共感を持ちました。
そして、杉下の安藤の外鍵隠蔽行動。「杉下自身が捜査機関からの聴取に対して鍵に言及しない」のは、鍵がかけられていたか否かを言えるのは、実際にドアを開けようとした者だけ、そして開いていたのならば何故、凄惨な事件現場から逃げ出し助けを求めなかったのか、という問いに答えられないから、と想像してみました。
でも、これがトリックだとしたらすごく面白い・・・と考えた時、私の中で一つの意見の変化が生まれました。(ここに書くのはテーマがずれていますが、お許しください)安藤が真相を教えてもらえない理由についてです。
私も初めは希美ちゃんが事件の真相を安藤に話さないのは、安藤を事件とは無関係な位置に保護し、その将来を守るためと思っていました。けれども、10年という年月が経ち、西崎さんの服役により事件が終結しても真相は語られない。
何よりも、安藤自身が真実を知りたいと訴え疎外感に苦しんでいるというのに、更にその苦しみを継続させたのは、「安藤のため」の行動ではない証拠のように思います。
安藤は西崎さんが犯人でないことを確信している。ならば、事件の真相を知っても驚かない。
3人が自分に内密に計画を立てていたことは、既成事実。
そして、たとえ真相を聞いたとしても、安藤はその事実を自分の胸に収めるはずなので、将来に悪影響が及ぶことはない。
それなのに、話さない。私はその理由を、安藤に話すことが野口さんに真相をばらした自らの消したい過去を思い起こさせるからと捉えました。つまり、トラウマと考えたのですが、弱いでしょうか?
トリック説は、新しい視点を持たせてくれました。感謝です!
nao様
またまたコメント頂き恐縮です。
nao様から頂いた、杉下のN≠安藤は自分の中では自明だったのですが、改めて反論という形でまとめるきっかけを頂いたのはnao様の投稿です。有難うございます。
杉下の『どんな手を使ってでも…』が、安藤の僻地赴任阻止シーンにつながっている、とのご意見、びっくりしました。私はあの宣言は野口夫妻への接近過程、特に奈央子のボンベを閉める部分との繋がりを意識していたので、私もまた考えてみます。
杉下及び西崎が安藤の鍵に言及しないのは、nao様が指摘た通りの理由です。杉下と西崎は非計画性と偶然性を主張する偽証のためには『鍵については知らない』という態度を取る必要があったんです。だから本当は杉下のN=安藤を破るには、安藤の外鍵の隠蔽のトリック、この一点だけ突破すれば良いんです。そしてこのドラマをご覧なった方で、ここがトリックと認識されている方はほとんど居ません。この論考をお読みいただいた方でも、受け入れられる人は限られると思います。でも、ぜひこの作品を愛してやまない人たちに、これがトリックである事に気付いてほしい。制作側に完全に負けたままで、かつ負けたままであるという事にさえ気づかないのは、悔しいじゃないですか。
ここを突破できないので、ラストシーンとのギャップを説明するために、中間派と呼ばれる方たちがいたり、成瀬派では、名前の類推(杉下と安藤の名前の一字を取って希望)から杉下の上昇志向のシンボルだから守った、とか、ノコギリをろくに使えない様から生活力の欠如→洋介のような弟分感覚であったから大事だった、という迂回的な解釈が生み出されたんです(上記もある種の迂回路を先に刷り込んで意識的にこのトリックを製作者が視聴者に隠蔽した、と取った方が良いでしょう)。でもこのトリックさえ破れば、わざわざそのようなどうとでも取れる解釈を経ずともストーリー全体が理解出来るんです。そして、安藤の名前も、ある種の誘導をするための吊りだと理解出来ると思います。
ですから安藤が真相を教えられない理由も仰る通りです。このトリックを破れなければ『大事にされていたから』という理由以外を設定できない。高野の最後の安藤との会話もこのトリックを隠蔽するための刷り込みであり、夏江さんの設定も、高野に安藤との会話をさせるための根拠として、つまりこのトリックを隠蔽するためのキャラクター設定なんですね。
野口にバラした真相、とは作戦の事をおっしゃっていますよね?
私はトラウマというより、安藤が現代で杉下にプロポーズした事で、安藤の僻地行き阻止行動が杉下の勘違いによる、必要の無い行為であった事を理解した強烈な罪の意識だと取っています。
長々と失礼しました。楽しんでいただければ幸いです。
moto様
ご返信ありがとうございました。「制作側に完全に負けたままで、かつ負けたままであるという事にさえ気づかない」のは確かに悔しいですね!私は単純で、何でも観たままに受け取ってしまうので、moto様の視点はとても新鮮です。
さて、「アイデア募集!」読みました(期間限定ということで、こちらにコメントさせていただきますね)。
以前お尋ねいただいたとおり、私は某所でmoto様のブログにコメントさせていただきました。キルケゴール!ハードル高い!(笑)と二の足を踏んでいましたが、私の大切なドラマに真摯に向き合っていらっしゃるmoto様のご意見を伺いたく、コメントにチャレンジした次第です。
某所も私の大好きなトピです。優秀な考察隊の皆様、まったり優しい感想を寄せて下さる皆様、そして楽しいアフレコ隊の皆様、思いやり合って様々な意見が共存出来るすてきなトピです。女子限定ではないので、大丈夫ですよ(例えば、「Nのために好きな人」の2212さんは男性と思われます)。
このトピで問題になっているのが、いわゆる荒らしです。トピの成立そのものに批判的なのでしょう。「このサイトを利用しないで、ファンサイトを立ち上げればいいのに」という意見もありました。
こちらのブログも、何らかのアピールで交流の場となると嬉しいですね。
nao様
某所は6月18日からの突然ページビューが伸びたので、何があったのか調べて見つけました。私はそこの存在を知りませんでした。
確かに雰囲気いいですね。いろんな立場の方の意見に寛容な様子が伺えます。
チョット私のセンスには入ってきませんが、祭りと称したアフレコ大会?が先鋭化しがちな部分を中和しているのかな?
今『Nのために』が大好きでたまらない人たちはどこに徘徊しているんでしょうね。
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