『Nのために 論考』
今日はラストシーンにも大きく影響するエピソードとして、西崎は何故杉下の病気を安藤で無く成瀬に伝えたのか?について触れておきます。
西崎の『崩れ落ちる橋』の質問に対する二人の回答。
安藤の"なんでもする!"と成瀬の"呼ばれれば、渡る"の選択。
西崎の判断基準は何だったのでしょう?
成瀬の方が弱い、と一見思える。
西崎の質問には"他の選択肢が無い中で"という暗黙の前提が置かれていて、それでも渡るか?ジャンプ出来るか?という事を問うたのだと思うのです。"奇跡を信じられるか?"と。
これについては、やはりキルケゴールの実在主義哲学で読み解く必要があると思うのです。
これについては、やはりキルケゴールの実在主義哲学で読み解く必要があると思うのです。
キルケゴールの哲学ではこの"理屈を超えた何かを信じられるか?"というのが、真理概念、自由概念の重要なキーとなってます。
また実在哲学では自由には必ず責任が伴うものとされています。
安藤の回答は、その暗黙の前提を了解していない回答。他の選択肢を探す、という含みがある。
また実在哲学では自由には必ず責任が伴うものとされています。
安藤の回答は、その暗黙の前提を了解していない回答。他の選択肢を探す、という含みがある。
更にはこの「他の選択肢」には、スカイローズガーデンでの外鍵のような利己的なギャンブル行為も含まれ得る、という匂いが漂うんですね。
一方成瀬の回答は、その暗黙の前提を了解した上での回答で、"それでも渡る"という宣言になる。
つまり、西崎はあえて前提を隠した上で、その前提を踏まえた回答が出来るかをテストしたんだと思う。
成瀬は奇跡を信じて飛び込める、杉下に対する責任を自ら引き受ける男、というふうに西崎は判断したのだと思います。
一方成瀬の回答は、その暗黙の前提を了解した上での回答で、"それでも渡る"という宣言になる。
つまり、西崎はあえて前提を隠した上で、その前提を踏まえた回答が出来るかをテストしたんだと思う。
成瀬は奇跡を信じて飛び込める、杉下に対する責任を自ら引き受ける男、というふうに西崎は判断したのだと思います。
16/01/18 追記
結局西崎は何判断基準にしたのか?という事なんです。
この時西崎は杉下がキルケゴールのいう『悪魔的絶望』にあると観たのです。
キルケゴールのいう『悪魔的絶望』とは神による救済さえ拒絶する心理状態です。
これを救うためには、杉下が自分が『救われうる存在』であると、『救われていい存在』であるときづく、気付かせる事ですが、これを『救済を拒絶する者』に起こす事はある意味奇蹟なのです。
奇蹟を起こす方法はたった一つしか有りません。『今にも崩れそうな吊り橋を渡る』意外に方法が無い。
答えは渡る、か渡らないか、それ以外の答えは存在しない。しかし安藤の答えは『なんだってする』。
つまり、存在しない他の可能性を模索するというもの。それはつまり目の前にある唯一の可能性である吊り橋を『渡れ無い』という意味です。つまり安藤は奇蹟を信じる事が出来ないのです。
奇蹟を起こすべく、働きかける対象(杉下)に対して奇蹟を信じない者(安藤)がいくら働きかけても、奇蹟など起きるはずが無い。だから安藤は失格、と西崎は判断した事になります。
4 件のコメント:
ずっとモヤモヤしていた、なぜ西崎さんは成瀬くんにだけ杉下が病気だということを告げたのか?という問いがこの言葉たちではっきり分かりました。色々なサイトでたくさんの人が考察、推論していましたが私はここに書いてある言葉たちに1番納得がいき、腑に落ちました。また、西崎が言った崩れ落ちる橋の問いにここまでの深い解釈ができるのかと感動しました。今まで出会った解釈、考察の中で1番好きですし、何度でも読み返したいです。
匿名様。
ブログの管理者です。すでに8年も経つブログの投稿にコメントをいただきまして、ありがとうございます。
既に投稿を停止してから随分日時がたつものですから、普段全く管理しておらず、コメントいただいたのが8か月も経過した後である事、ご容赦ください。
このレスが、もはや目に触れることもないかもしれませんが、もう放映から10年になろうかというのに、未だに 「Nのために」を愛し、自分なりの解を得ようとされる方がいらっしゃる事に感動いたしました。
私も時折、”あれはどういった意味だろう”といった事を考えることがあります。そのような方がまだ自分以外にいらっしゃる事が嬉しくてたまりません。
このブログの投稿が、匿名様の自分なりの "Nのために" の理解に資するなら、これ以上のものはありません。ありがとうございました。
匿名様
あなた様の『Nのために』の理解の一助となればと思い、本編更新終了後密かに気づきなどを続いていたページを公開いたします。
よろしければ、ご覧ください
https://ronkouforn.blogspot.com/p/blog-page_6.html(シークレットつぶやき専用)
管理者様
お返事いただきましてありがとうございます。私自身、お恥ずかしながら「Nのために」のドラマを観たのが放映から随分経ったあとでしたので、とても時差のあるコメントとなってしまいました。普段はこのようなコメントを誰かのブログに残すことはないのですが、あまりにも私が求めていた解釈、答えを導き出してくださった文章でしたので、どうかこの思いと感謝を投稿者様に伝えたいという一心で指を走らせました。まさか数ヶ月越しにこうしてお返事いただけるとは思わず、大変光栄です。きっとこれから先、私が「Nのために」を思い出す度、読む度、観る度、何度もこの投稿を見にきては胸を打たれるのかと思います。ですので、どうかどんな形でも良いので、この文章を残しておいてくださると嬉しいです。シークレット投稿も見てみます、ありがとうございます。
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