2015年4月13日月曜日

安藤の指輪に対する杉下の涙の本当の訳

安藤のプロポーズに渡された指輪を見て、一人涙する杉下。

この時の杉下の認識を掘り下げて考えてみます。

この時、杉下は安藤の気持ちに応えられない自分に涙した、というのが表面上の解釈。
しかし本当の意味は、このことにより、事件の真相の一端を理解したからだと思うのです。

杉下は野口に対して安藤の僻地行き阻止の行動を取ります。それは安藤と野口の間の賭け。
安藤が野口に負けたら、安藤を大規模プロジェクトの要員として送り込む、と言うもの。
これを杉下は僻地行き、という表現から左遷、と理解した。
それを阻止しようと西崎の奈央子救出を野口にバラし、挑発する事で警察沙汰としようとした。

これが事件のトリガーとなった訳です。

しかし十年後、安藤が事件当日にプロポーズするつもりでいた、と知った。
つまり安藤は将棋に負けてもいい、その際には杉下に結婚を申し込むつもりでいた、という事に思い至ったということです。つまり安藤にとっては僻地行きは左遷でもなんでもない、むしろチャンスと取っていた。
その気づきのヒントは野口が面白がって、杉下に安藤についていくかどうかを尋ねた部分。安藤は自分が野口に負けた際には杉下へプロポーズする意思を伝えてあった訳です。それは成瀬にも伝わっている。

ですからこの時の杉下の涙は、自分が安藤の僻地行きを安藤の考えとは全く逆に、自身の狭い了見で左遷と勘違いしてしまったが故に事件のトリガーを引いてしまった事への後悔と自己嫌悪、および野口夫妻と西崎、成瀬への謝罪と理解したほうがいいのです。

2 件のコメント:

motoさん さんのコメント...

この時の杉下の心境には、さらに他のモノガ加わる事に最近気づきました。
安藤が何故あの時鍵を掛けてしまったハッキリとした理解と、それに伴う自らの罪。
そして安藤が自らの行為を警察に語らなかった理由。

安藤に関する、必ずしもハッキリと見えていなかった部分が杉下に明かされて、何故あの悲劇が起きてしまったのか、と言う全ての事情が彼女の中で一つに繋がったんです。そしてその全てが彼女という存在を結節点として結びついたが故に発生した事件であった事に彼女が気づいてしまった。

この時の彼女の心は想像することさえ困難です。無限とも思える罪意識では無いでしょうか?
自分さえ存在しなければ事件は起きなかった、という強烈な自己否定的感情。『自分は救われてはならない』という自己認識

巷でいう『病気故に安藤のプロポーズを受けられない』なんて、生っちょろい状態じゃない。

この後、杉下は西崎のもとを訪れた際、彼の申し出を拒んでいます。
それは彼だけでは無い、全ての援助、協力を拒むが如く西崎には見えた。それが西崎に成瀬に対して『杉下は誰の助けも得ようとしない』と言わしめているんです。

彼女は安藤を許してはいない。それは彼女が最後まで安藤に自らの住所を明かさなかった事からハッキリしています。
ですかそんな安藤に対してさえ、自身の罪の大きさの自覚故にある種の罪滅ぼしの必要性を感じた。実はそれが二人で参加したディキャンプだった、というのが現在の認識です。

何故あのエピソードがあの場に設定されたのか?その必然性がイマイチハッキリとしていなかったんですが、あれが彼女なりの安藤に対する落とし前だったんだと、理解出来ました。

motoさん さんのコメント...

最近の判断では、杉下は最後の最後で安藤を許した、という解釈です。
その許しの根拠は、彼女が島へ帰る前に安藤と交わした会話です。
この時、状況的には杉下が東京を去る際に安藤をコールした、とみるのが自然でしょう。少なくとも現代編において、安藤側から杉下をコールした描写はありません。これは安藤と杉下の関係性を物語っています。ですからこれは杉下がコールしたと理解したほうが自然です。
その杉下も安藤をコールした描写はこれ以外にはありません。ではなぜ彼女は安藤をコールしたのか?
これはその直前に挿入された母とのシーンとの関係で理解すべき事項のようです。
杉下が母を訪れたのは、彼女が自分を苦しめた人間を『許せるのか?』という試金石とし、それを克服した過程であったという解釈です。
そうすると、その後の安藤との会話のシーンも、杉下側からアプローチし、その対象を許した、と解釈したほうが筋が通るんですね。

そう考えると、最後成瀬の元に戻るのも、”戻る”という形で彼女からアプローチしていることも含めると、成瀬に対する許し、という側面も見えてくるんです。