杉下の心理が西崎に接近していった過程はまた別途考えるとして…
杉下自身は自分の感情をどう理解していたか考えてみます。
ポイントは西崎のこの言葉に対する反応だと思います。
『歪んだ場所に居ると、歪んでいる事にさえ気づかない』
この言葉に杉下はピクって反応するんですよね。これは自分の感情が歪んでいる事に自覚があるからこその反応です。
では、杉下は誰に対する感情に歪みを自覚したんでしょうか?候補は三つあると思うんです。
1.ゴンドラ以前の成瀬に対する感情
2.現在の西崎に対する感情
3.スカイローズガーデン前の成瀬に対する感情
ここで安藤に対する感情は入ってきません。それは杉下には安藤に対する恋愛感情はない、という判断も有りますが、仮に安藤に対する恋愛感情が杉下にあったとして、それを『歪み』と言えるのか?と考えると、それは違うだろう、と思います。安藤はこのドラマで歪みとして描かれていません。その安藤への感情を歪みと表現するのは修飾矛盾なんです。(ですから逆説的に杉下には安藤に対する感情はない、とも言えるのです。)
で、上記候補のうち、3.現在の成瀬に対する感情、はまづ除外される。
その根拠は杉下が島で再開した成瀬に感じた『そのままでいる存在』感への安堵
杉下が成瀬に対して歪んでしまったのはお城放火未遂以降、ゴンドラまでです。ゴンドラで成瀬を手放した結果、成瀬という呪縛=歪みから逃れる事ができた。だからこそ『そのままでいる存在』への安堵感をえる事ができた訳です。成瀬に対する感情に、お城放火未遂以降は安堵感を得る事はありませんから、スカイローズガーデン前の成瀬に対する感情に歪みは無い、と理解していいと思います。
3.は歪みではありませんから、その対比として自分を観察すれば、1.成瀬に対するゴンドラ以前の感情が自身で歪んでいた事には容易に気づけるはず。問題は2.の西崎に対する感情なんですね。で、これについて杉下は自分の感情が歪んでいる、という事を理解していたと判断しています。何故なら西崎への感情が自分の歪んだ成瀬に対する感情(1.)へのシンパシーから来ている事が彼女にも判っているからです。だから杉下は西崎への感情が歪んでいる事に自覚ががある。
そうすると、冒頭の西崎の発言への反応はどちらについてなんだろう、となる。
で、私の判断について言うと、この時の杉下が反応したのは西崎に対する感情についてだと取っています。
杉下はかつて成瀬に対して歪んでいました。それが歪んでいるという事に気づいてはいなかった。しかし一度成瀬から離れる事でそれが歪みであった事に気付く機会をえた。そして今歪みのない成瀬への感情と歪んでいると思う西崎への感情が並立している現状で、彼女自身が歪みからの脱出の必要性を意識していたのだと思います。その歪んだ感情の相手である西崎から『歪みからの脱出』の必要性を説く発言が出る。さも自らに対して言われていると感じたから、反応したんだと思います。
参照
成瀬に再接近した杉下の心理
ゴンドラで杉下は成瀬を諦めた