この論考では『杉下のN=成瀬』としています。それは四人による偽証の構造と杉下の偽証の受け入れタイミングからの推定です。
つまり西崎の偽証要求にはノーといい、成瀬の偽証指示は受け入れた。二人のいう偽証の本質には差は無い。それなのに西崎はノーで成瀬にはイエス。という事は西崎のためには偽証は受け入れ出来ないが、状況の一部となった成瀬のためであれば偽証を受け入れる事が出来た、という事。
基本的にはこの判断は正しいと思っているんです。
ですが、『杉下のN=西崎』説を完全には捨てる事が出来ない自分がいます。
一番の問題はこのドラマの構造です。杉下の西崎に対する感情を徹底的に隠蔽した。杉下の『究極の愛』によるパラドックスに気づかなければ、西崎への感情に気づく事が出来ない作りになっている。原作と比較しても成瀬、安藤はアゲアゲなのに、西崎はサゲサゲです。ですのでミステリーとしての意外性は西崎が一番大きいのです。
ただ、このドラマでのもう一つの価値基準である『イヤミス感』については『杉下のN=成瀬』とした方が上です。なぜなら成瀬は『杉下のN=西崎』だと思っていたからです。ここで『杉下のN=西崎』をとると成瀬の株は上がるけどイヤミス感が減じますよね。
そしてやはり最大の障害は杉下の偽証受け入れのプロセスなんです。
プロセスを追うと、杉下のN=成瀬と結論せざるを得ない。これをひっくり返すにはそれがひっくり返りうる類例をさざなみから見つけなければならない。杉下が安藤の僻地赴任の阻止行動の源泉が実は安藤への恋愛感情ではなく、『大人の身勝手さで若者の未来が潰される事への抵抗と脱出』である、というのと同じように、その隠された行動原理をさざなみから見つけなければならないのですが、そのようなものがいくら考えても出てこないんです。
一方、杉下のN=成瀬の方はさざなみが杉下の勘違いに起因していて、スカイローズガーデンでもその勘違いに引っ張られてさらなる偽証をしてしまう、というドラマの世界観にはドンピシャなんですよね。
杉下のN=西崎説は意外性では一番ですがそれを積極的に支持できる証拠に乏しい事と、ドラマの世界観へのハマり具合で、やはり成瀬、とした方がしっくりいく様ですね。
6 件のコメント:
『行動原理をさざなみから見つけなければならない』、なるほど。成瀬説ではさざなみ事件との関わりが「希美の誤解」になっているんですね。
持論だと、「安藤の罪意識を護る」とした場合、希美はさざなみ放火事件での成瀬の立場になり、安藤が希美の立場にいる。このことに希美自身が気づけるのは、成瀬の偽証提案後になります。それから「西崎のN=希美」とした場合、「成瀬・西崎の二人に希美の罪を共有してもらうことでしか安藤を護る術はない」という部分が「誰にも頼らん」の回収にもなっていて、島時代から複雑に作られてきた希美の特性が、この瞬間のためだったのか~と個人的にはすごく腑に落ちました。成瀬が偽証提案前、「どうしてここにいるか分かった」と感じていたように、希美も成瀬の偽証提案を聞くことで、「どうしてここにいるか分かった」という感じです。
なので、西崎説もいけるんではないかと…いや、まだ何も根拠はないんですけど(笑)さざなみ事件や島時代の希美の行動原理、捉え方ではまた違ったストーリーがあるかも…と思いました。
ひまわりさん、解説希望!
>>「西崎のN=希美」とした場合、「成瀬・西崎の二人に希美の罪を共有してもらうことでしか安藤を護る術はない」という部分が「誰にも頼らん」の回収
ここがわかりません!
すみません、遅くなりました!
まず、希美の罪は野口への暴露です。そして希美の罪は安藤に罪悪感をもたらします。自分の罪は隠滅し、自分が容疑者になることは絶対避けなければならなかった。「希美は作戦の存在は知らない、偶然そこに居合わせた」事実を作るためには、成瀬には偽証してもらい、西崎一人に罪を被ってもらう必要があった。二人が希美の罪を隠滅するということ=罪の共有(共謀?が正しいかな)であり、二人の善意に頼ることになります。
こんな感じですが…うーん、言葉で考えていることを纏めるのは難しいですね
回収の意味判りました。杉下が『誰にも頼らん』を放棄せざるを得なかった事を『回収』という表現をされたんですね。
安藤の罪意識を軽減する為に自分は容疑者になれない、だから二人を頼った…
この理解であってますよね?
>安藤の罪意識を軽減する為に自分は容疑者になれない、だから二人を頼った…
そうですね。そうなると思います。ただ、「軽減するために容疑者になれない」というのは、自分の印象とは違うかな。自分の頭の中ではもう少し複雑で、「軽減するため」と一言では纏められないのです。それまでの希美の半生で培った様々な感情、感性、価値観の総結集のような…この場面に限って言うと、公式で読んだ「母親の子供に対する感情」に近いものも感じますし…。感情としては自分の頭で理解できて纏まっているのですが、言語化するのはなかなか難しい。陣痛の痛みを言葉で伝えるような感覚です(笑)
陣痛はて…男の私には判らん(笑)でも大変なのは理解出来ます!上の子の出産には立ち会いましたのでね。
余談ですが、その時初めて後産というものも知りましたよ。母親は偉大です。
と、傍にそれてしまいましたが、ここはわかってはいるものの、永遠なる平行線の領域やね(笑)
何たって、私は安藤総スカン説ですから!(爆)
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