成瀬は西崎の協力要請を、「料理を楽しんでもらう為であって、人助けには協力出来ない」と断りを入れています。この時、成瀬は「人妻略奪ですよね」と西崎に言っている。此処がポイントです。
その後帰り道で成瀬は杉下へ「もう少し考えてみる」と告げています。
で、成瀬は何を考えたのか?
以下は成瀬のモノローグとして
杉下は西崎の意向を知っている。出来れば協力したいと考えているようだ。そうでなければ自分が野口の贔屓先であるレストランでケータリングを行っていることを杉下が西崎に話す事はない。
杉下自身は自分を巻き込みたくないようだが。
何故杉下は西崎に協力する?西崎がやろうとしているのは、人妻略奪だぞ。杉下は父親が愛人を連れ込んだ事で島で随分と苦労したんだ。こんな事、杉下の貞操感に触れる行為だ。ただの友人関係では杉下はこんなことに協力出来ないはずだ。
西崎は奈央子を愛している。杉下もそれを了解している。二人は恋人関係ではない。なら何故?
杉下の片思いか!杉下は西崎を愛してるんだ!でもそれを西崎は知らない。
俺はどうする?
西崎の気持ちはよく分かる。
俺は杉下がギリギリで、かつての自宅に火をつけようとした時、杉下を助けたいと思った。
俺は西崎に義理はない。だがその西崎のために杉下は行動しようとしている。なんの見返りもないのに。俺は杉下のお陰で今こうやっている。ならその杉下を助けるのが、俺の役割なんじゃないか?
1 件のコメント:
ここは、今読んでも修正点は無いですね。そのままです。
成瀬が作戦に参加した理由を、読み取れている人が全くいないんですよ。
もっとも、それに気づくには杉氏の『究極の愛』が西崎に対して行われようとしている、という事に気づかないといけないのですが。
これに気づいた人でないと、この成瀬が作戦に協力する事にした正しい理由にたどりつけないのですが…。
仮に成瀬と西崎の関係性にのみに着目するのであれば、成瀬が西崎に協力する事は有りません。実際に彼は最初の段階で拒絶しています。
ですので、彼が作戦に参加を決めたのは、杉下がそこに噛んでいるから、と考えなければなりません。
ですが、成瀬から見たとき杉下が西崎に手を貸そうとしているのも普通の感覚であればありえないものに見えたはずです。なぜなら西崎がやろうとしているのは、杉下が困窮する事となった他人の夫婦関係への介入行為でであるからです。
成瀬が駅に向かう途中、杉下に『考えてみる』と語ったのは、まさになぜ杉下が西崎に協力しようとするのか、という点だったといえます。
そして成瀬は、結論に達します。杉下は西崎を愛しているから彼に協力しようとしている、と。
このように、自分の規範・価値基準に反する行動をとる理由は、”愛”という形で合理化する以外にない事に成瀬は気づいたわけですね。
そこで今度は彼に戻るわけですね。彼はどうするべきか、と。彼は彼で最終的には彼自身の信念・価値基準・規範に反する事をしている。そこはやはり杉下の存在が影響している。彼は杉下に対してさざなみ炎上の彼女の誤解を利用し続けているというひけ目、そのお陰で現在こうして至れる、という感情もありつつ、やはり彼女への愛情を抱いてる。だから彼も”愛”という形での合理化を行うことによって、作戦への参加を決めた、と考えるべきなのです。
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