西崎の罪を、成瀬に半分共有してもらう事で、杉下が共有した。
つまり、西崎の罪を杉下が共有し、杉下が負いきれない分を成瀬が共有した、という解釈です。
必ずしも、これだけでは有りませんでしたが、オフィシャルサイトのコメント欄の開設時における有力な解釈でした。
しかし、私はこの罪の共有の解釈は当時から疑問を持っていました。今日はこれについて考えます。
まず『罪の共有』を再定義したいと思います。
杉下の定義によれば〝相手の罪を半分引き受けること〝。ですが、これでは具体的な行動として何が杉下にとっての罪の共有なのか分かりません。
ですので、この『罪の共有』の概念の出処となったさざなみ放火事件での杉下の行動から、具体的に定義してみたいと思います。
さざなみ放火事件での杉下の具体的な行動は以下の通りです。
自宅に放火した(と杉下が勘違いした)成瀬が、捜査機関から逮捕されないように杉下が嘘のアリバイ証言をした
一般的な表現としては、『罪を犯した人間を捜査機関から匿う意図で行う偽証』が罪の共有の定義です。
この定義にスカイローズガーデンでの三人の行動を照らし合わせてみます。
西崎は罪(=殺人)を犯した人間(=奈央子)を捜査機関から匿う意図で偽証(=野口を殺したのは自分、外鍵については知らない、三人が居合わせたのは偶然)した
成瀬は罪(=?)を犯した人間(=?)を捜査機関から匿う意図で偽証(=外鍵はかかっていなかった、三人合致居合わせたのは偶然)した
杉下は罪(=?)を犯した人間(=?)を捜査機関から匿う意図で偽証(=犯行現場は見ていない、外鍵については知らない、三人が居合わせたのは偶然)した
西崎の行動は罪の共有の定義に合致します。ですので西崎は奈央子の罪を共有しています。
しかし成瀬及び杉下に関しては、罪とそれを犯した人間を規定出来ません。ですから二人は杉下の言う、罪の共有は行っていない事になります。
成瀬に関しては、成瀬のN=杉下ですから、強引に杉下、とする事も可能ですが、成瀬が偽証を決意した時点で成瀬は杉下は殺害に関与していない事は先にの記事(事件に対する成瀬の認識の到達度の検証)で明らかですから、杉下の罪を規定出来ません。また、強引に杉下の罪=西崎を慮った偽証、としてみても、成瀬が隠蔽工作をした時点では、杉下はどの様な行動を取るつもりであるかなど考慮していません。西崎に関しては成瀬は切り捨てています。ですので何れにせよ成瀬の行動を罪の共有で規定する事は出来ないのです。
杉下についても同様にです。西崎はについては、成瀬と同じ。成瀬としても、成瀬は何もしていないので、成瀬の罪など存在しない。
以上寄り、この三人の行動を罪の共有関係で規定する事は出来ません。
ここに安藤は?という意見もあられると思います。
安藤については、考慮する必要性はありません。何故なら三人にとっては安藤の外鍵の隠蔽は〝偶然〝を装うために必要な中間目標、条件であり、偽証の真の目的ではないからです。
この安藤に関する部分については先の投稿『安藤の外鍵を掛けた行為の隠蔽工作 4人の行動原理・利益』をご覧下さい。
5月25日 追記
すみません、間違いを訂正します。
三人の行動を罪の共有で規定出来ない、と書きましたが、ここは成瀬と杉下の二人は罪の共有を規定出来ない、に訂正致します。西崎は奈央子に対して罪の共有関係が成立していますので。
1 件のコメント:
これは、今もこの通りの考えです。
ドラマで西崎が杉下に「愛は無いかもしれないが、罪を共有してくれ!」と懇願したがゆえに、この3人が罪を共有した、と取られているのですが、これは罪の共有などではない。
むしろ、3人の偽証は謀議ととったほうがいいのです。
ここを正確に捉えないと、ミステリーの謎解きはこの先進まないんですよね。
本当の罪の共有は、ここではなくって、作戦そのものにあるのですから。
コメントを投稿