偽証の効果考えれば、西崎は自分が犯人になる、という自らの希望が達成され、安藤の将来を傷つけづに、成瀬と自分は事件への関与からエスケープする事が出来た。こう考えると、杉下は三人全員のために偽証した、という結論になる。
しかしこれはとってはいけない結論です。
何故なら、
3月26日の投稿『ミステリーとしての仕掛け その一 タイトル』で指摘したとおり、〝〜のために〝という言葉自体が持つ多義性による原因、意図、効果のすり替えの罠にはまってしまうからです。
タイトルはこのミステリーの仕掛けとしての効果を意識してつけられています。
実際オフィシャルサイトでのコメントでも、このすり替え誘導にハマり、謎解きの方向性を見失ってしまった議論が展開されていました。
その際たる例が西崎に対する評価です。
あれだけ西崎が自分が犯人になる理由を明確に語っており、そのための偽証を杉下へ強要し、西崎自身のエゴを押し通そうとした行為が、その副次的効果=三人は殺害へ関与していない、となった事を、西崎が全員を守る意図で犯人になった、する解釈が一般的なものになっていました。
かなり鋭い部分まで分析をされている方でも、このすり替え誘導に引っ掛かっているケースが随所に見えます。
ここで私が明確に意識しているのは、〝〜のために〝という言葉の意味のうち、意図に関することです。杉下は誰を守る意図で偽証したのか、です。
これ、問いの形を変形してみれば意外とすんなり理解出来ます。
杉下は誰を守る意図であるなら、偽証を受け入れることができたのか
杉下が偽証を受け入れたタイミングは成瀬が『今日遇ったのも偶然、それでいいね』と言った瞬間。この時点では安藤は入っていない。だから安藤ではない。
西崎に『罪の共有』を要求された時も、『そんな嘘突き通す自信ない』と不可を吐露している。
そして最後に成瀬が西崎案に乗り、その補強をして杉下に指示した事で、杉下は偽証を受け入れることが出来た。
西崎でも成瀬でも、杉下がする偽証には差はない。しかし西崎では受け入れできない事が、成瀬であるなら出来る。
つまり杉下は成瀬を守る意図であるなら偽証を受け入れる事が出来たんです。よって杉下は成瀬のために偽証した、とするのが正しい到達点です。
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