2015年5月6日水曜日

杉下が成瀬の『気持ちはわかる』にどのような理由を観ていたのか

杉下は成瀬のメールにしきりに考え込んでいました。

『大事な人がひどい目にあってて、いてもたってもいられない気持ちはわかる。だから協力する』

これを杉下はどう取っていたのでしょう。

公式サイトのメッセージでも、ここの解釈については定まった見方は出来ていませんでした。

このメールは直接的には以下の意味に成ります。原文に補足します。

『(西崎にとって)大事な人(=奈央子)がひどい目にあってて、(西崎が)いてもたってもいられない気持ちは(成瀬が)わかる。だから(西崎に)協力する』

ここで問題にしたいのは〝なぜ(成瀬が)わかる〟と杉下が取ったか、です。
ここの視聴者側の取り方で、その後の杉下の行動理由の取り方が変わってきてしまうからです。

一つの見方は成瀬が自らの島での経験から、〝わかる〟と言っている、と取るケース。
それはつまり杉下を慮って、杉下が火を付けようとしたのを止めた上に、杉下が火を付けようとした心理さえ理解した上で、代理放火までしようとした成瀬の行動。さらには、勘違いですがさざなみに成瀬が火を付けたのも、この時の延長上にあると杉下は思っている。
この経験を指している、と杉下が取るケース。

二つ目は、成瀬にとって今現在杉下の他に大事な人がいて、もしその人がひどい目にあっているとすれば、成瀬も西崎と同じ気持ちに苛まれるだろう、という予測を成瀬が言っている、と取るケース。つまり成瀬の気持ちの誤解ですね。これは公式サイトのファンメッセージでも一部出ていた見解です。これは野口宅を出た後の橋の上での安藤との会話で、成瀬と『付き合ってない』と否定したり、安藤の気持ちを配慮した上での無人島で『一人は寂しい』という会話、及び杉下が心を開いている男の右側に立つ癖から安藤への気持ちを自ら意識し直した、という見解から出てくる解釈です。実はこの橋のシーンは、最初に成瀬が野ばら荘を訪れた際駅まで送ったシーンと対になってるんですね。この時も橋の上での会話で杉下は成瀬の左に立ってるんです。この立ち位置の対称がこの見解に一定の説得力を与えている。

あと一つ、ごく一般的な例として、という取り方は不可能ではありませんが、成瀬自身が一度断っているのを考え直しての申し入れであるので、これは考えなくともいいと思います。

私の見解は成瀬が自らの島での経験から、〝わかる〟と言っている、と取っている、というものです。
成瀬は杉下にしきりにメッセージを伝えています。
西崎の『崩れ落ちそうな橋』の質問に対する答え、『呼ばれれば渡る』。成瀬はかつて、杉下が追われた家を放火しようとした際、それを止め、代理放火までしようとしました。そして杉下はさざなみの火事も成瀬がその延長で行った放火だと思っている。そこへ改めて『呼ばれれば渡る』という成瀬の自分に対する気持ちを理解した筈です。
その前段が有っての『気持ちはわかる。だから協力する』メールですから、杉下には成瀬が『分かる』理由も上記の放火事件を踏まえている事も理解できますし、その上で成瀬が協力を申し出るのも、表面上は西崎への協力表明ですが、実際は自分が関与しているからであり、杉下への協力である、という事も理解出来るのです。







1 件のコメント:

motoさん さんのコメント...

ここは若干の修正が必要ですね。『大事な人が…』の成瀬のメールに主語を補った部分が、今は解釈が異なります。

いまの解釈はこの通りになります。
『(杉下にとって)大事な人(=西崎)がひどい目にあってて、(杉下が)いてもたってもいられない気持ちは(成瀬が)わかる。だから(杉下に)協力する』

なぜ、現在はこの解釈なのか?というと、杉下が成瀬のメールに考え込んでいる事。そして2回目の作戦会議以降の成瀬への猛アピールを再度整理すると、少なくとも杉下から見たとき、このようにメールが見えたからこその、その後の反応だったのだろう、と思います。

この辺りについて、あまり他では言及されていないのですが変な描写があるんですよ
1)屋根上の西崎に杉下が成瀬が協力する、と連絡をくれた事を告げるシーン。彼女はなぜか気乗りしない感じ。
2)上記のシーンのあと、杉下が成瀬のメールをじっと見つめて考え込んでいるシーン。
3)その後再び杉下の部屋を訪れた成瀬に対する、猛アピール

1)は、彼女が成瀬の『考えてみる』に対してホッとした表情で”ありがとう”と返している事と反しているんですね。普通に考えればかれが協力してくれるという事は、歓迎すべき事項であるにもかかわらず、杉下は腰が引けている。それはもちろん、成瀬のメールを彼女がどう解釈したか、という事にかかわるわけです。

2)は、まさにその成瀬のメールの真意を把握しようと、考えをめくらせている場面、もしくはそのメールの真意を受けて自分はどうふるまわなければならないかを思案している場面です。
もし仮に杉下が本編のように成瀬のメールを受け取ったとしたなら、このシーンで深くこのメールを見つめる事も、西崎に気が進まないような言い方をする必要なない、と思うのです。

確かに2番目の解釈として、成瀬に他にいい人がいて、同じ状況に追い込まれた場合の仮定として彼女がとったとすると、なんとなく3つの行動は一貫しているようには感じられますが、そうすると彼女の成瀬への猛アピールはある種の略奪愛的行動となり、このドラマでの杉下のポジションから考えるとおかしいんですよね。
一方、主語を上記のように置きなおすと、杉下のドラマ上のポジションとは抵触しなくなりますし、杉下の究極の愛の存在を仮定した場合の、彼女の取るであろう行動と整合するようになります。

この部分で主語を上記のように補うと杉下側からは以下の事が判ります。
一つ目は、成瀬に自分の西崎への感情がばれてしまった事
二つ目は、成瀬が自分に思いを持ってくれている事
この二つです。

多分、この成瀬のメールを見つめている時間が、彼女が腹を括った時間なんだろうとおもうんです。
一つは西崎への感情は”究極の愛”での実施でけりをつけ、その後に成瀬との関係を新たな段階へ進める、というものです。

だからこそ、3)で成瀬に自分は成瀬との関係を望んでいるんだ、という事を猛アピールしましたし、決行前、部屋を出るときに自分の部屋を改めて見回したのも、成瀬との関係が進むための最終チェックだったわけです。

このように考えると、この成瀬のメールは、日本語は主語が省略されて話されるという特徴をついたある種のトリックですね。多分日本語以外では成立させることが難しいトリックと言えそうです。