k
『Nのために 論考』
安藤の外鍵の隠蔽行動の4人の行動原理及び利益を下記に解説します。
ここで大事なのは、安藤を保護する意図は無くとも、西崎、杉下、成瀬が安藤の外鍵を隠蔽する事により、それぞれの利益が達成される、という部分です。
これがトリックである、というという事の証左となります。つまり安藤の外鍵を掛けた行為を隠蔽する事がそれぞれの利益を守る上で共通の手段であり、その一点において暗黙の取引が成立したのです。
安藤の行動原理・利益
自分が行った外鍵を掛ける行為により、事件の凄惨化に繋がった事から、その責が自分に及ぶ事を恐れた為。
西崎の行動原理・利益
奈央子を独占する事。
西崎には奈央子を独占するために自分が野口をやった事にしたい。
外鍵の隠蔽に失敗すると、安藤が鍵を掛けた理由を語ることになる。
西崎は安藤に会っている。計画も感づかれた。杉下の究極の愛の相手が計画に入っている事も喋った。安藤にこれらを喋られると、計画が存在した事が白日となりその状況では犯行への杉下・成瀬の関与も疑われ、奈央子の独占が出来なくなる。
成瀬の行動原理・利益
杉下を嫌疑から除外する事。
外鍵の隠蔽に失敗すると、安藤が鍵を掛けた理由を語ることになる。
安藤が杉下へプロポーズしようとしている事を知っており、西崎が安藤へ”逃げられなかった”と告げた段階で成瀬は西崎が安藤に会った事を理解している。
安藤が鍵を掛けた理由を語られると計画が存在した事が白日となりその状況では犯行への杉下の関与も当然疑われる。その状況では進展によってどのように転ぶか判らない。成瀬自身は事実を見ていないので、杉下を護れない。であるなら西崎が罪を被る覚悟である以上、西崎の利益に乗る=西崎を切り捨てることが杉下を護ることになる。よって安藤の外鍵を隠蔽する。
杉下の行動原理・利益
成瀬のさざなみ放火事件の蒸し返しを防ぐ事。
安藤が西崎も含め三人で会っていた事を知っている。(ケーキを見られた)
成瀬が部屋にいる際電話もぶち切りした。
そして西崎が安藤と事件前に会っている事もわかった。
安藤に鍵を掛けた理由を語られると、偶然であったとの偽証が通らなくなる。
偶然でない=計画があった=自分と成瀬の関係を詮索される=成瀬のさざなみ放火事件が蒸し返される。
これは杉下にとっては避けなければならない事態。そのために杉下は成瀬をかばったのだから。だから安藤の外鍵を隠蔽する。
16/01/18 追記
安藤の隠蔽意図を修正します。
安藤が口を噤んだのは杉下を殺害の嫌疑から除外する意図です。その意味で成瀬と同じ、としてよい。これはいかにも自己の保身から、と見える裏に隠された安藤の行動意図ですね。安藤は真相が奈央子による心中であり、自分が喋ると杉下に嫌疑がかかる事に気づいていたんです。
杉下の行動意図は成瀬の保護ですが、その理由はさざなみの蒸し返しだけでは無いですね。作戦の参加者として彼自身が逮捕・起訴の対象にもなります。