2015年10月10日土曜日

杉下の『究極の愛』の構造 その2

次に起きたのがが汎化・美化作用です。
具体的にはB-4.(出力)が『成瀬に遭わない、遠ざける』→『身を引く』になった。
またA-2.(制御因子)『成瀬に遭うのは成瀬の利益にならない』が、それが形成された具体的行動である、『成瀬の罪を庇う偽証』→『相手の罪を引き受ける』、『成瀬との関係性の否定』→『黙って』というふうに汎化されました。
多少の要素の組み換えを含みつつ、そこに美化(=究極の)が加わり、『相手にも知られず』という修飾が加わった。
その結果として『成瀬の罪を相手にも知られず半分引き受け、黙って身を引く』という『究極の愛』が完成しました。
この汎化・美化により、上記の変換機構は以下のような表現になりました。

A-1.(入力)成瀬が好きで堪らない
A-2.(制御因子)誰にも知られず相手の罪を引き受ける
B-4.(出力)黙って身を引く

これは大学に進み成瀬との関係が長期に渡って途絶えた事に対する反応だと思います。このような形に汎化・美化をさせないと、成瀬に対する気持ちで杉下の心が持たなかったのだろうと推察します。

このように杉下の精神を保護する為に形成された心理機構ですが、それでも杉下を護りきれない時が有ったんですね。早苗さんが野ばら荘を訪れた際の反応です。
成瀬の事を『元気で幸せやったらええな』といいつつ、成瀬に対する思いを変換しきれずに、上記の変換プロセス中の4.のところで杉下の悲しみがあふれ出す光景を見ると、いかに杉下が成瀬を求めているか、があらわされていると思います。

原作で西崎が言っています。「杉下の心の中には、そいつしかいないんじゃないか?ってやつがいる」
原作では具体的には描写されませんでしたが、ここの表現が早苗さんが野ばら荘を訪れたさいの描写になっていると取っています。


参照
杉下の『究極の愛』の本当の意味

0 件のコメント: