西崎、安藤がまず個別に事情の聞き取りを受けている。並んで立つ俺と杉下はひとまず後回しだ。杉下へ指示しないと。
「外からドアチェーンかかっとった事、警察には言わんで」
俺より先に杉下がそれを口にした。
安藤が連れられて部屋を出て行く。安藤は杉下へ視線を送り続けている。杉下は視線を安藤と交わさない。安藤が部屋を出る間際に、その背中を一瞥した。
俺は杉下の手を取った。ブランケットの血で、お互い赤く染めた手を握った。俺は心の中で杉下へ呼びかけた。
〝判っているよ。君が偽証を受け入れる理由も。君にとっては西崎の気持ちを護る事なんだ。判っている。君と、君の気持ちを護る。何としても護る。それが俺の君への恩返しであり、罪滅ぼしであり、愛だ。元気で幸せになって欲しい。君とはもう合わない。これでお別れだ〟
杉下に声が掛かった。杉下は離そうとしなかったが、少し強めに手を引き、振り切った。杉下を見送る。杉下が部屋を出る間際に視線を交わした。心の中でもう一言呟いた。さようなら、と。
Fin
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