2015年11月6日金曜日

杉下の『なんで成瀬くんがここにおるん?』の心理 その二

…続き
 二つ目は、この言葉から杉下は成瀬が自分との接触を断ったのは、事件処理の偽証(成瀬と杉下は事件前にはあっていなかった。会う関係でない。また相互に偽証をするような関係ではない)を成立させる為ではない、という事を理解していた、という事です。
 本来この偽証は西崎の刑さえ確定してしまえば、それ以後も偽装を続ける意味はない。未解決のさざなみとは異なる。ですから西崎の刑が確定後も同じ状態が続いたのは、偽装とは別の意思があったという事であり、それを杉下も判っていた、という事です。
 
 それでは杉下は成瀬の意思をどう取っていたのでしょうか?
 もし杉下が成瀬の意思が西崎に関する事項だととっていた場合、成瀬も西崎の出所に併せて何がしか行動をとるだろう、と予測できるはずです。現に杉下自身も西崎も安藤も西崎の出所に併せておとしまえを付ける行動をとっている。ですが杉下の反応を見る限り、成瀬がそのような行動を取るとは予測していない、という事は成瀬の意思は西崎に関してだとは杉下は取っていなかった、という事になります。
 
 そうすると杉下は成瀬の意思は安藤に関する事だととっていたと推測できます。
 ズバリ書きます。杉下は成瀬が事件の際の自分の行動を安藤の保護と誤解しかつそれが元で自分は成瀬から嫌われた、と思っていたのです。
 なぜ杉下が自分が嫌われた、と思ったのか。それは杉下自身が安藤を嫌ったからです。ですから成瀬が、杉下の行動意思を安藤の保護ととった、と思った杉下は同様に成瀬から嫌われた、と理解していたのです。
 
 では、それはいつ?というと。
 明確な論理的説明は難しいのですが、私は二人の手繋ぎの際だと思います。
 
 ですから、杉下の『なんで成瀬くんがここにおるん?』を繰り返した心理は、自分が嫌われたと思っていた成瀬が自分を訪ねてきた事への驚きと戸惑いです。

 でも、そう思うと杉下の高野に対する証言が非常に切ないんですよね。
 杉下は自分が成瀬から嫌われた、と自覚している。それでもなお、杉下には成瀬が一番の大事で、成瀬のためであれば、どこまでも嘘をつきとうそうとしているんです。
 どれほど成瀬という存在が杉下の中で大きな存在であるのか、これに気付いた時、本当に切なかったです。
 
参照
成瀬の『杉下のN=安藤誤解説』への転向 その1~3
杉下はなぜ事件後、安藤の訪問を拒絶したのか?

fin

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