「本題に入ろう。杉下の事だ」
「逢ったの?」
「逢った」
「俺も何度か逢った。あいつまるで別人みたいに元気がない…大丈夫かな?」
やはり杉下は安藤に何も話していないようだな。先日の杉下の話からあらかた予想は付いていたが。そもそも今日のこの時間に俺とここに居る事自体が間違いだ。まあ、杉下も好き好んでコイツと一緒にいたい訳ではなかろう。俺だってそうだ。
しかし、もしコイツが杉下を孤独の淵から救い出しうる存在であるなら、俺はコイツを杉下のもとへ届けなければならん。そしてその可能性はコイツにはある。それを確かめねば。
「今にも崩れそうな吊橋の向こう側に杉下が居たとしよう。杉下が吊橋の向こうから『助けて』と叫んでいるとしたら、君はどうする?」
「は?なんでそんな処に?」
「もう元の生活には戻れないかもしれない。それでも君はその吊橋を渡るかい?」
「杉下は簡単に『助けて』なんて言わない」
「言ったとしたら?」
「なんだってする」
「…」
続く…
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