杉下にとって、早苗は二重の意味を持っていると思います。
一つは父親やゆきと同様、自分を苦しめた原因としての嫌悪感。
しかしもう一方で、他者依存性の強い早苗を成瀬との約束の為に切り捨てざるを得なかった事に対する罪意識です。
この早苗に対する罪意識は明確には語られていないですね。どちらかと言えば隠されていると思います。成瀬のプロポーズシーンで『父親も母親もあの 女も…縛るものは誰もおらん』と上を向けた。と語っており、さも他の二人と同列のように語られています。
また、所謂『ドレッサーのトラウマ』という言われ方でドレッサーに伴うゆきとの確執と早苗のドレッサーとの関連を演出し、さも一連の、杉下にとっ て逃避すべき対象、トラウマという流れで視聴者に刷り込んでいます。
でも、ドラマの描写として早苗は他の二人と同列ではないです。現に東京まで杉下を追わせて、ラストで早苗のみ杉下は再会して和解した。
そうした時、父親やゆきと早苗を隔てているものは何か?と考えるとそれは杉下の早苗に対する罪意識だと思うんです。
杉下の三人に対する対応で、母親のみ異なるのが『杉下自身が母親を捨てた』という行為です。父親とゆきは『自分達を捨てた存在とその原因』で、自 分が捨てられた側。ですが早苗に対しては『自分が捨てた側』に立っているんです。それは成瀬との誓約を実現するため。
さざなみ以降の彼女は本当に窮地に陥り、成瀬との約束だけをよすがに非常手段を取らざるを得ない状況だった。その為に母親さえも切り捨てざるをえ なかったわけですが、基本的に気持ちの優しい杉下には、実母を切り捨てる、という行為は罪の意識を持たざるをえない存在であり、父親とゆきとは扱 いが別なのだと思います。
参照
杉下が一番辛かった時期
0 件のコメント:
コメントを投稿