2015年12月9日水曜日

【二次作品】西崎の判断 その二

…続き
 
 実家からの帰り道、最寄り駅から野ばら荘への道すがら、親父から言われた言葉を思い出していた。
 
『世話になった人に恩を返せ』
 
 一番世話になったのは杉下だ。彼女の事は事件直後から一番の気がかりだった。俺のエゴに付き合わせ、一生の秘密を背負わせてしまった。彼女には感謝しても仕切れない。いや、感謝などという生易しい言葉では片付けることなど出来ない。俺は彼女の一生をぶち壊したも同然だ。
 本来であれば俺の一生を彼女に差し出すべきなのだ。そして奈央子がもうこの世に居ない限りにおいて俺にもそれ位の事は出来る。だが今の杉下を俺は救い出す事は出来ない。今杉下に必要なのは彼女を絶望の淵から救い出す事が出来る存在。それを彼女に届ける事が俺が杉下に出来る最大限の罪滅ぼしだ。
 ふと、気付くと何処かの家庭の居間で繰り広げられる、楽しそうなパーティの模様を窓越しに見つめていた。
 
『あぁ、そうか今日はあの日か』

 杉下、今お前はどうしている?人生最後になるであろうクリスマスを一人で過ごそうとしているんだよな?お前は一人でこの世からいなくなろうとしているけれど、お前はそれで満足なのか?お前こそその人生の最後に輝ける時を迎えるべきだと思う。
 そう思い至ったとき、俺は携帯を取り出し多少躊躇いつつもあいつに電話をした…

続く…

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