2015年12月3日木曜日

早苗の訪問時の杉下の心理プロセス その二

…続き

このように説明すると、非常にきれいにつながるんです。一見この通りだと思える。
でも、一つ障害があって、この心理プロセスがトラウマ起源とすると、成瀬のさざなみ炎上の暴露に対する『父親も母親もあの女も…縛るものは誰もお らん』の杉下の独白と矛盾する。この独白はさざなみ炎上で杉下はトラウマ(と思われているもの)から解放された、と言っているわけです。つまりト ラウマをトリガーとする心理プロセスとして理解してはいけない、という事になるんですね。

そうすると、この時の杉下の心理プロセスのトリガーとなったのは何か?というと杉下の早苗に対する罪意識だと思います。

先に検討した通り、実は杉下は早苗に対して罪意識を抱えていた。それは成瀬との誓約を守るために早苗を捨てた事です。杉下の中ではさざなみ炎上以 前と以後では明確に区分されるべきものなのです。
ですので、『島に居た頃にひきもどされそうで』の島時代とはさざなみ炎上から島を出るまでの期間という事になる。
そこから心理プロセスを進めると杉下の『罪意識』と『誰にも頼らず生きていきたい』が等価でありそれはつまり『罪意識』と『成瀬を頼れない』が等価。
『成瀬を頼れない』の成立はそもそも杉下自身による『お城放火未遂』を発端とした成瀬に対する罪意識が起源。

そうすると早苗の登場で早苗に対する罪意識の刺激→成瀬に対する罪意識が刺激され『究極の愛』システムが起動した…

こういう風に理解すれば、杉下の独白とも矛盾せず、『究極の愛』システムの起動による成瀬への感情の発露も説明がつくと思います。


参照
早苗に対する杉下の罪意識

fin

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