…続き
外のチェーンが掛かっていた。西崎が入室後何者かがチェーンを掛け、脱出出来ない状況になったということだ。
玄関が荒れていた。そしてダイニングも。争ったのは奈央子を救出に来た西崎と野口だ。二人の取っ組み合いは玄関から始まり、ダイニング、そしてリビングへ場所が移った。
どのように取っ組み合いは、はじまった?
西崎が入室後、直ぐ野口との取っ組み合いが始まったのなら西崎は脱出可能だ。チェーンが掛けられるまで若干の時間差があるはずだから。奈央子が既に野口に捕まっている場合は西崎は奥まで立ち入る事になる。取っ組み合いは玄関からは始まらない。
だから奈央子は西崎が入室した段階で玄関にいた。取っ組み合いまで若干の時間もあった。
玄関に一人でいた奈央子をなぜ西崎はすぐ連れ出さなかった?
奈央子が渋ったからだ!西崎はそれを説得していた。その間に鍵がかけられた!
そのうち野口がやってきた。野口が現れたのが偶然なら花屋の配達で済ます事ができる。野口は奈央子の不倫相手としての西崎を認識して現れた。なぜ野口に判った?
野口に漏らしたのが奈央子なら、野口は最初から玄関にいる。漏らしたのは奈央子ではない。書斎で野口を引き留めていた杉下が野口に作戦を漏らしたんだ!
杉下は何を狙った?野口と西崎を揉めさせて、警察沙汰にしようとした?西崎が口にしたアイデアだ。あえて警察沙汰にしようとしたということは、想定外に何かを野口から守る必要が生じたという事だ。
杉下は何を野口から守ろうとした?西崎ではないし、当然俺でもない。奈央子なら当初の計画でいい。残るは安藤だ。安藤に関して、杉下は野口から追いこまれ、安藤を守ろうとした!
どのように二人は亡くなった?
計画は奈央子を救出するためのものだ。西崎と杉下は奈央子を殺害しない。西崎がやったのなら野口だ。その場合野口が奈央子を殺害した事になる。本当にそうか?
野口と西崎が揉めていた。野口が奈央子を刺すには一度西崎から離れて奈央子に向かわなければならないが、それには西崎が延びている必要がある。西崎が延びていたとする。野口が奈央子を刺した直後に西崎は燭台で野口の後頭部を殴打しないといけない。それは延びた人間には無理だ。西崎には野口を殴打出来ない。杉下が野口を殴打した?
杉下は血に汚れたブランケットを持ち、服も汚していた。介抱したという事だ。殴打した相手をその直後に介抱するなど無理だ。奈央子を刺した野口を西崎も杉下も殴打していない。
そうすると、野口が先に殴打されたのちに奈央子は刺された。 もみ合っている相手の後頭部を西崎が殴打するのは不可能だから、西崎では無い。野口を殴打したのは杉下?でも殴打直後に杉下が介抱など出来ない。
野口を殴打したのは奈央子だ。そして奈央子は自殺を図った。心中だ。杉下は介抱した。西崎は奈央子の罪を被ろうとしている!
奈央子は野口から離れる気など無かった。でも奈央子は自ら西崎に来ることを求めた。なんの為に?あの時部屋にいたのは杉下だ。野口が西崎と奈央子を疑っていたと同様、奈央子は杉下と野口の関係を疑っていた?奈央子は西崎に杉下を野口から引き離したいが故に、西崎を呼んだんだ!だから奈央子は部屋を出なかった!
西崎を救う方法はないか?西崎が罪をかぶる必要はない。
正直に証言したら?奈央子はDVを受けていた。だから3人で協力して奈央子を助けようとしたが外鍵が掛けられていて脱出できず、心中となった…
ダメだ。作戦の結果が心中など警察が信じない。杉下が殺害の関与の嫌疑にさらされる。展開によっては杉下が犯人にされかねない。杉下を守る為には西崎を切るしかない。作戦は無しだ。
警察は三人の関係も調べる。俺と杉下はさざなみで繋がっている。当然作戦を一緒に練る関係性を疑う。偶然、それを装う。それで突っ切る。
西崎、あなたの気持ちは痛いほど分かる。俺も杉下を犯罪者にしたくない一心で、彼女を苦しめる、追われた実家に代わりに火を付けようとした事がある。あなたは本来背負う必要のない罪を被ろうとしている。あなたをなんとかして救いたい。でも、あなたを救おうとすれば、杉下が殺人犯にされかねない。それは俺には出来ない選択だ。だから申し訳ないが西崎、あなたを切る…
杉下、すまん。西崎を切る。そうでなければ君を守れない。君の気持ちが西崎にあるのは判っている。人妻強奪のような作戦に、父親から追い出された君が協力するのは君に西崎への気持ちがあるからだ。俺が協力する、なんて言わなければ、こんな事にはならなかった。本当にすまない。
続く…