2015年6月3日水曜日

成瀬が事件の時唯一認識出来なかった事

成瀬はスカイローズガーデンでの事件の真実についてほぼ完全に理解していました。

しかし一つだけ成瀬が認識し得なかった事があります。それは杉下のN=成瀬、自分である、という事です。この時、成瀬は杉下のN=西崎だと思っていたのです。

成瀬は作戦に協力を申し出た時点で、杉下の西崎に対する感情を知っていました。しかし杉下が作戦終了後に、成瀬との関係を再開させようとしていた事は認識していません。
増して杉下が西崎の『罪の共有』の要求に対しても〝出来ない〟と返している事を知りません。これは成瀬が入室する前のやり取りです。

ですので、成瀬が〝いいね〟と杉下に偽証を促して杉下が泣き崩れる事で偽証を受け入れた事を見た時、成瀬は杉下が偽証を受け入れたのは西崎のため、と理解していたのです。

実はこれが杉下と成瀬の10年にも及ぶ空白期間の理由です。
勿論成瀬としても自分と杉下の関係を偽装する必要があったわけですから、杉下と距離を置く必要性はあった。さざなみにおける杉下のように。しかし成瀬側からすれば、西崎の刑が確定してしまえば、杉下と接触を取れない理由は無くなります。杉下とは異なり、さざなみの事件が未解決である事が接触を絶ち続ける理由にはなりません。この時点では成瀬自身が疑っていた父親は他界している。だからこそ結婚式後に成瀬は杉下と接触していたのです。

しかし成瀬は杉下への接触を絶った。自ら電話番号を変えてまで。
それは何故かというと、杉下の西崎への気持ちを(誤解ですが)優先させ、西崎が服役している間、自分は杉下の感情ヘ一切介入しない、そして杉下に西崎への想いを遂げさせる、という意図であったのです。 

しかし実際には杉下のNは成瀬です。
これがこの物語で、二人の間で数多く発生したすれ違いの中で最大のものだったんです。

1 件のコメント:

motoさん さんのコメント...

これは大いに修正が必要ですね。
確かに成瀬が事件の際に認識できなかった事は、杉下が偽証を受け入れた理由です。
杉下が偽証を受け入れたのは、成瀬の為。彼のさざなみに関する嫌疑が蒸し返される事を恐れて、です。
しかし成瀬は杉下が偽証を受けれたのは、西崎への愛だと取っていた。成瀬からは杉下が作戦に参加する動機は西崎を愛しているから、という風に見えたし、また杉下が偽証を受けれいたのも、西崎の”奈央子を犯人にしたくない”という思いを、杉下が受け入れたから、と見えていた。
この辺りについては後の本編に出てくるはずですが、杉下が安藤の外鍵を隠蔽する事を成瀬に依頼する前までは、成瀬には杉下の偽証受け入れをこう理解していたのです。
その意味で、この本編で成瀬が認識できなかった杉下の偽証意図、つまり杉下のN=成瀬を彼が認識できていなかった、という点は変更はないです。

ただ、その後成瀬が杉下と接触を断った下り、10年のの空白期間の理由は間違いですね。

成瀬は杉下の安藤の外鍵隠蔽依頼で、杉下のN=安藤と誤解した。これには仕方ない面があって、1話で杉下の母親の錯乱ぶりを目の当たりにした成瀬が、東屋で高野が杉下に母親の様子を尋ねられた時に、”母親の事は言わんで”と頼まれた経験がある。この経験から成瀬は杉下は安藤を庇おうとしている、と誤解した。
この誤解がその後の成瀬の行動を決定づけたわけで、成瀬はこの事件が悲劇に陥る状況を作った安藤を許せない。そしてその安藤を庇った(ように成瀬には見えた)杉下も同様に許せない。だから彼は杉下との接触を拒否する事を選択した。

実際、事件後成瀬は西崎とは差し入れという形で接点は持ち続けているのに対して、安藤そして成瀬とは一切接触していない。
電話番号を変えた事は高野に対して話していますが、恐らく彼は杉下が自分を追えないよう、事件後すぐに仕事(シャルティヒロタ)を辞め、住居も移したと考えられます。何故なら、事件前に成瀬は杉下の野ばら莊を訪れており、そうであるなら成瀬も杉下に自分の住所を教えていたはずだからです。

さざなみ後、杉下も成瀬も互いに相手と連絡をとろうとはしませんでした。しかし二人とも電話番号は変更していません。二人とも連絡を取りうる状態は維持し続けたのです。
しかしスカイローズガーデンでは、成瀬は杉下が自分と連絡を取りたくとも取れない状況を作りました。

成瀬は杉下の隠蔽依頼の後、退出する安藤を目で追う杉下を驚いたように凝視し、その後、小さく冷笑を浮かべています。明らかに驚き、唖然とし、軽蔑を込めた行動です。

この後成瀬は杉下の手を取りますが、これは成瀬が杉下に自分の感情と決断(軽蔑と絶縁)を伝える為の手段です。

多分杉下は成瀬の手つなぎの意味を理解したと思うんです。それが成瀬の誤解である事も。でもあの状況ではそれを成瀬に弁明出来ないのです。なぜならそれを説明する事は、彼女が成瀬を庇う目的で受け入れた偽証構造を破る事になるから。

だから、この時の杉下の気持ちを思うと、本当に切ないですね。彼女は成瀬との関係の再開を望んでいた。偽証を受け入れたのも、さざなみの嫌疑から彼を遠ざける為。安藤の外鍵の隠蔽も、安藤が偽証構造を破りうる存在(3人が事前に会っていた事を知っている)であるからこその口封じがその目的であるのに、それを成瀬が誤解して、自分を軽蔑し関係を断絶させる事を選択した。その状況に際して、彼の誤解を解く行動そのものが彼を窮地に陥れる事になってしまうがゆえに、その状況を受け入れざるを得ない彼女の心情を思うと、本当に切ないですね。

警察に連れられ、部屋を出る際に、何かを訴えるような視線を成瀬に送る杉下を、冷たく一瞥する成瀬。

これ以上はうまく言葉にできないんですが、こうだったんだ、という事をこのドラマを好きな人みんなに理解してもらい。