トリックその7
『〜のために』という言葉の多義性による原因、意図、効果のすり替え誘導
これは端的に言えば、タイトル「Nのために」そのものが、ある種の心理的誘導効果がある、という事を言っています。
「~のために」という言葉でみなさんはどのように感じるでしょうか?特別の前提を置かなければ基本的に行為者の意図を表現しているととると思います。「~」の部分が行為者の意図の向け先となります。
「~を…する意図で何がしかの行動をする」
しかし、よくよく考えてみてください。この言葉、私は最低3つの、明確に区分すべき用法があると理解しています。
一つはすでに述べました。行為者の意図です。
二つめは、「~が原因で」という使用方法。
三つめは、「~まで効果が及ぶ」という使用方法
これらを、明確に使い分けないといけない。これらを明確に使い分けないで「~のために」を使うと、発言側が原因を言っているのに、受け側が意図をと受け取る、はたまた使用者自身が無意識に取り違える、という事さえ起こるのです。
例えば
「成瀬は安藤のために外鍵の隠蔽の偽証をした」
これは表現として間違っていません。安藤が外鍵を掛けたから(=原因)成瀬が偽証をする必要が発生したのです。ですが、成瀬の意図は杉下の保護です。
また、上記の表現はこうともとれます。外鍵の隠蔽の偽証により、成瀬の意図ではないものの、その効果が安藤にも及ぶという表現でも成立するのです。
この罠に陥った例が西崎の評価です。
西崎が犯人になる動機をあれだけ明確に語っているにも関わらず、その評価として“全員を護る意図”で西崎が犯人になった、という評価がある。これなどは完全にこの誘導効果に陥った例です。
ぜひ自分で「~のために」という言葉で理解されているシナリオが、上記の「意図」であるのか、「原因」であるのか、「効果」であるのか、検証してみてください。より事件の真相がクリアーに見えるはずです。それぞれの「~のために」を明確に区分することで、「~のために」の間で不整合が生じる可能性が大です。
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