そうした成瀬の特徴に気がつき、成瀬は杉下のN=安藤と誤解した説を受け入れました。
で、その後が問題なんですね。
私以外の論者(桃さん、アフロ1さん、naoさん)は成瀬が安藤を想う(と誤解した)杉下を慮って自ら身を引いた、と説かれています。手繋ぎは、『自分は身を引く、安藤と幸せになって欲しい』だと。
私はこれを採れないんです。理由は二つ。
一つは安藤が密室を作った行為者である、という事。
もう一つは成瀬にとって杉下が闇堕ちからの復帰の際のよすがだった事です。
密室についてですが、この行為により成瀬は重大な嫌悪を抱いた。もっとはっきり言います。怒り、憎しみです。
成瀬にはなぜ安藤が鍵を掛けたのかが詳細に判っている。計画の参加者たる自分と安藤、杉下がどちらを頼るのかを試した。その方法が密室を造るという、成瀬の大事の杉下を危機に貶める行為です。そこになんら酌量できる要素を見つけられない。そして彼の行為により二人が死亡し、西崎は奈央子を庇うため犯人になり、成瀬は危ない橋を渡って事件処理に当たった。その状況を作った人物に対して、人が感じる感情は?
もう一つは成瀬にとっての杉下の存在です。成瀬にとって杉下はよすがです。そのよすがが自分を振り向いてもらえない現実に直面したとき、どうなるか?
これについては恥ずかしながら自分自身の経験を引っ張りだし、その上での推測をしなければなりません。
私は殊二人の関係性と言う意味で、成瀬がこの時置かれた状況と酷似したプロセスを経験しています。
好きな相手から突き放された(棚田での別れ)
それでも相手がよすがだった(闇堕ちからの復帰)
関係の再開を期待しての再会(結婚式二次会以降)
そして相手の気持ちが別にある事を突きつけられた(杉下のNの誤解)
私はこの状況下で壊れました。ボロボロになりました。でも成瀬は成らなかった。成瀬は非常に辛かったハズです。同様なプロセスを経た自分にはよくわかります。では彼が私と同じ状態に陥らなかったのは何故か?
私が彼同様に、落ち着いている為には何が必要だったかと考えると、それは怒りだったと思うのです。ショックがデカければデカイ程、瓦解しそうな自分を支え得る感情は怒りです。
続く…
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