2015年9月6日日曜日

『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座 その11

 あとがき的に

 とにかく、このドラマ、徹底して真意を隠す事を徹底しています。この安藤の外鍵の隠蔽がトリックである事さえ事前・事後の刷り込みを使って隠蔽しました。

 このトリック破りで一番の勘所は、講座のその3で開設した時間軸を区切って考えることと、意図を明確に意識する事です。これに気付く事自体が本来はトリック破りの醍醐味です。

 杉下は誰を何から護るのか?
 杉下が偽証を受入れたタイミングは?
 偽証の主従構造は?
 偽証をひっくり返すことが出来るのは誰?

 これらを冷静に分析すれば、杉下のN=安藤とはならないのです。

 皆さんに気付いてほしい。製作者に完全に負けたままで、なおかつそれに気付かないなんて悔しいじゃないですか。製作者に一太刀浴びせましょう!

 このトリックを破ったからと言って、この物語の謎解きは終わりません。その先にやっと見えてくる謎が幾つもあるのです。ぜひその世界を皆さんも楽しんでください。

 なお、杉下のN=安藤説に対して明確な最初の異を唱えたのは、ここでもコメントを頂いている桃さんです。安藤の外鍵のトリック破りは桃さんのものです。

 最後に
 安藤派が一つの論拠にしている、公式での原作者のコメントについて。

 『主人公と相手が紆余曲折を経て両思いになり、めでたし、めでたし、といった話ではありません。それなら、私が書く意味がない』

 私は原作者のコメントはあくまで原作について述べたもの、と割り切っています。ミステリー作家が自らの作品について、本当の事を言うわけがない。それを詮索するのは無意味です。原作の描写からドラマを理解しようとする行為自体が間違いです。

 実は安藤派、若しくは中間派と呼ばれる方の多くが原作を読んでいる方たちです。この方たちが陥ったのが、原作の最終版に記述されている十年後の杉下のモノローグ、『安藤望のために』の記述です。この記述を物語全体と取っているんです。ですが、この記述は野口に対する僻地赴任阻止行動の事しか書かれていない。杉下の種明かし的に『安藤望のために』と書くことで原作者は読者に対して物語り全体が安藤の為に、という事後刷り込みをしているんですね。

参照
安藤のNは杉下と言っていいのか? 1~2
成瀬は安藤が外鍵をかけた事を捜査機関に喋らない事が判っていた
杉下の立ち位置のくせ 1~2
成瀬が安藤にいった 『杉下があの時考えていたのは… 』の意図 1~4
成瀬は杉下のN=安藤と誤解した? 1~3
『杉下のN=安藤』を採用しない理由
安藤の僻地赴任阻止行動の杉下の源泉
杉下の安藤の外鍵隠蔽行動
安藤の指輪に杉下が涙する理由
杉下が安藤に事件の真相を語らないのは愛されていたから?
安藤の名前が『のぞみ』である事の必要性 1~2

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