待ち合わせの場所で彼女の顔を見たとき、瞬く間に中学の時のときめきが甦りました。ですがそれも直ぐに打ち砕かれました。想いを寄せてくれる人がいる、と聞かされて。手を伸ばせば届く処に彼女が居るのに、その距離が絶望的に感じました。「その人に気持ちが有るなら、真剣に受け止めるべきだ」多分こんな意味の事を言ったと思います。でも、それは嘘です。単なる格好つけ。動揺している自分を繕いたかっただけ。私の本心は別の処に有りました。
『あの時まともに出来なかった恋愛を、もう一度ここから始めたい』
ですが、その言葉を彼女に伝える事は出来ませんでした。
『彼女はその人のことが好きなんだ』私はそう判断しました。『自分の時と同じだ』と。
このとき、なぜ自分がそう判断したのか不思議です。自分は中学の頃彼女から返事をもらえませんでした。だから彼女の気持ちが本当はどうだったのか知りません。それを知りたかったのですが、何故か彼女の答えを、相手を好きなんだと取った。恐らく、彼女の答えに自分が割り込める、となった場合、中学の時の彼女の自分に対する感情を自ら否定する事になるからでしょう。
いずれにせよ、私ははそう思いました。
あとはせめてもの救いを、とすがるような心境でした。せめてあの時の彼女の気持ちが聴きたい。確かめたい。『あの時、君は好きでいてくれたの?』
ですが、心が折れていた私の口から出た言葉は、その心同様屈折したものでした。
「恋に恋してたんじゃないか」
この言葉を発した瞬間『しまった!』と思いました。『違う、それは本心じゃない!』
ですが彼女の言葉でそれを取消す気も失せました。
「もう、昔のことだから」
そう、周りの時間は四年という歳月と共にそれに相応しいだけ進んでいるのに、自分だけがそれから取り残されていたという事にその時、その言葉で思い知らされたのです。既に全ては過去の事だと。
それ以後は、言葉を搾り出すように話していた記憶があるだけで、会話の内容も情景も何も覚えていません。とにかく彼女の前で泣かないよう、必死に堪えていた。酷い顔をしていたんだと思います。彼女はその顔を見て『怖い』と思ったんだと思います。
続く…
0 件のコメント:
コメントを投稿