2015年9月10日木曜日

独白 その5

彼女を先に電車に乗せ見送った後、ホームで一人始発を待つ間、涙が止まりませんでした。嗚咽が止まりませんでした。もう誰かを好きになるのはやめよう、そうも思いました。
そして、
「もう、昔のことだから」
これが彼女の言葉で記憶に残る唯一の言葉となりました。
大人になっていたであろう彼女からみて、中学の頃の私は幼く見えたと思います。大学に進んでいた私も中学の頃と大差なく見えたのかもしれない。そんな私に本当の事を言ってどうなるのか、という気持ちだったのかもしれません。当時の私にはその言葉を受け止めるのが困難でした。

その後暫くの間は、飲めもしない酒を毎晩かっくらってました。やけ酒です。
あったのは、後悔と八つ当たり、虚しさと悲しさ。後はなんでしょう、それは言葉にならない、だけれども決してポジティブでない何か。

私は結局大学の間、住まいを移しませんでした。それはもしかしたら、彼女から連絡があるかもしれない、そんな奇蹟を期待して、電話番号を変えたくなかったからです。ですが、彼女から電話が掛かってくる事は有りませんでした。

もし、彼女が『想いを寄せてくれる人がいる』でなく、『付き合っている人がいる』と答えていたら、もしかしたら自分の反応はまた違うものだったかもしれません。
自分の時と同じだ。だとしたら自分の時は、自分に気持ちがあったと思いたい。そこに自分が介入するのは自分から彼女をかすめ取る事のように感じたのかもしれません。

私の中の彼女には笑顔が有りません。
戸惑った顔、泣いている顔。苦しそうな顔。
彼女は結局一度も私に笑いかけてはくれませんでした。
だから私は成瀬が羨ましいんです。だって、成瀬には自分に向かって笑ってくれた杉下が居るのですから。

fin

2 件のコメント:

アフロ1 さんのコメント...

こんばんは

motoさんの独白にコメントしていいものか戸惑っての投稿ですm(__)m

motoさんのアイデンティティー…そこに彼女の存在が大きな位置にいる事にmotoさん自身が気付き、そこから前に進めない自分がいた。あの頃の彼女の気持ちを知る事で、一つ一つの真実(理由)も見えてくるかも知れない。4年の歳月で彼女の気持ちがどこにあるのか、もう恋人もしくは他に好きな人がいるかも知れないが、あの頃出来なかったままの恋愛が出来たらいい、そんな期待も多少ありつつ決心して臨んだ再会のはずが・・

「恋に恋してたんじゃないか」 自分の口から滑り出てしまった、全く本心ではない言葉。焦る自分に「もう、昔のことだから」の言葉が返ってくる。
motoさんは『4年間も進めないままもがいてた自分』、そして『これからの自分』の行き場も無くしてしまったのですよね。あの頃の彼女の気持ちも確かめられないまま、未だに昇華できない未解決のもの・・(エピソードを端折ってしまい意味合いも違うようになってたら、ごめんなさい)

…motoさんの過去とは違いますが、やや似た経験をしており、少しだけ彼女の言動の真意が分かる気がしてのコメントです。ただ、あの頃(中学時代)motoさんの事を好きだったかどうか肝心なところは分かりません。(気分を害するコメントでしたらごめんなさい、ただの勝手な憶測です)


「 もう、昔のことだから」

彼女の中学時代が、motoさんに対してLoveだったかLikeかは分かりませんが、高校時代は違う誰かを好きになってたように思います。中学の卒業式で交わした「高校生になっても繋がっていたい」のmotoさんの言葉、付き合ってもないし約束した訳でもないけれど、高校時代の彼女はしっかり覚えていたと思います。そしてそれに応える事が出来ない自分に罪悪感も感じてたと思います。自分の態度が少しでも彼に期待を持たせる事のないよう彼女なりに考えた思いやりが、無視やシカトだったと思います。motoさんがずっと自分の事を好きでいる事、motoさんの元気のない憔悴した姿… それらを時折友達から聞かされたり、見かける度に彼女は胸をいためたと思います。
もし彼女が何かしらのコンプレックスを持っていて自信のない子だったとしたら、尚更。そんな自分が人を振るなんて何様だろう、そんな罪悪感さえ付き纏う。いっそのこと、motoさんの事をLoveでいられたら、こんな苦しみさえなくなるのに・・

「 もう、昔のことだから」
大学1年の冬、motoさんとの再会で発した言葉。motoさんは彼女を呪縛してないのに、彼女は恋愛したらいけないと言う呪縛を自らしてた4年間だったと思います。motoさんが新しい恋を見つけた時、彼女はその呪縛が解けるだろうと思った。どうか過去(の私)にとらわれないで、違う誰かを好きになってほしい。もう昔のことだから・・
そんな願いが込められてたかも。
だから、motoさんが受け止めた解釈(中学のままの幼く見えた)とか、そんなんじゃないと思いますよ!!

曖昧です。
土足で入って、本当にごめんなさい。理解不足の思い込みで、的外れな事を言ってるのかも知れないです。かなり、自分の時と置き換えて解釈してみました。
私はその罪悪感で大学時代には一度もコンパに行けなかったです。もともと、苦手もあるけどね(笑)

motoさん さんのコメント...

アフロ1さん、
彼女に対する感情のもって行き場を失ったのは確かです。
四方八方、高い断崖に囲まれて、逃げ場がないところで立ちすくんでいる。そんな感覚です。

思慕であり、嫌悪であり。
接近欲であり、逃避願望であり。
輝きであり、情けなさでり…

それらが渾然一体となった感情で、その中から何か一つ感情を取り出してお話しする事が出来ないんです。私が桃さんの問いに答えられないのはそういう心理なんです。

この手の事に関して、お互い極度に奥手だったようです。
メッセンジャーとなった彼女の一番の友人さえ、殆ど知りませんでした。
ですので、高校の頃の自分の事を彼女は一切知りません。
私も彼女の4年間を全く知りません。

だからアフロ1さんの言われるようなものであったのか解りません。
私は彼女からは歪みを感じなかった。時の進みに併せて精神的に成長しているように感じました。