成瀬には怒りを抱いていい状況がありました。
密室を作った安藤。その為死亡者二人と、無実の罪を被る決意の西崎。杉下のために崩れそうなつり橋を渡った自分…
それなのに自分の最愛の、恋い焦がれる人がそれを作り出した張本人を庇うなどという状況。
なぜ君は、あんな奴を庇うんだ!
俺と君との事はウソだったのか!
あの時俺に向けてくれた笑顔は、何だったんだ!
それをよすがにしてきた俺は、俺は!
安藤同様に杉下へ向かう怒り。
そして成瀬は杉下への決別を伝えるため、彼女の手を取った。怒りを込めて…
『君とはもうお終いだ。もう二度と逢わない』
そしてその怒りは偽証の為には必要だったのです。
もし成瀬が怒りで、瓦解しそうな自分を支えられなかったとしたら?私のようにボロボロになっていたら?
偽証は通らず、全ての関係者が誰も利を得られない状況に陥るんです。最後の最後、偽証を通したのは成瀬の怒りです。
参照
成瀬は杉下のN=安藤と誤解した? 1~4
成瀬の誤解癖
杉下の『安藤、待って!』と『助けて、成瀬くん!』
成瀬は杉下が計画をバラしたのを誤解が原因だと気付いていた
杉下はなぜ事件後、安藤の訪問を拒絶したのか?
独白 1〜7
1 件のコメント:
成瀬が杉下が安藤を庇おうとしてる、と理解した、と考える説は、今も変わりがありません。ですがその心理プロセスについては、現在ではこの当時書いたものとは異なるものです。
確かに成瀬が杉下の考えを読み誤る事があったのは確かです。本文でも触れた通りです。
スカイローズガーデンにおいて、成瀬が杉下の真意を読み誤るのはある意味仕方ないというか、やはりこれも島時代の経験から来ている部分があるのです。
それは、1話で二人が東屋にいたとき、高野が杉下の母親の様子を訪ねた際の杉下のに関する経験がスカイローズガーデンでの成瀬の取り違えの直接の原因と言えます。
この時杉下は成瀬に『母親の事は言わんといて』と成瀬に頼みました。成瀬はこの直前に杉下の母親が精神的に振れているのを見ています。この時、杉下は『内』の不都合を『外』には漏らしたくない、という心理から成瀬にこのような依頼をしました。『内』とは家庭内=母親の事であり、『外』とは世間、直接的には高野に対してです。
一方、スカイローズガーデンでは杉下が成瀬に対して、安藤の外鍵を隠蔽するよう頼みました。安藤が偽証の構造を覆しうる存在である(3人が事前に会っていた事を知っている)ことから、彼にそれを喋らせてはならない、そのためには鍵については3人の側からは喋ってはいけない、という判断から、成瀬に鍵に触れないよう依頼した(何故なら、安藤が3人が事前に会っていた事を知る存在である事を知らないから)のですが、この行動が、成瀬には先の島での経験と被り、安藤が杉下にとっての『内』(=守るべき存在)である、と誤解してしまった、というのが現在の理解です。
安藤は成瀬から見て、許されざる行動をした人間です。彼が鍵を掛けなければ野口夫妻が亡くなる事も、西崎が奈央子の罪を被る必要も、杉下も自分も危ない橋を渡る必要もなかったはずです。怒りと軽蔑の対象といっていい。
そのような安藤を庇う(ように成瀬から見えた)杉下も、彼には安藤と同じ感情を抱く対象となった。
それを彼女に伝える目的で行われたのが、彼が杉下の手を取った行為です。
ではなぜ、捜査機関へは、結局当初打ち合わせた通りの偽証を成瀬は行い、安藤の外鍵についても触れなかったのか?
それはその処理方法が自身に火の粉が被る可能性が一番低いからです。彼はある意味冷静に損得計算を行い、勘請に任せて捜査機関に証言し、結果3人が事前に会っていた事が捜査機関が知る事になるリスクを犯すよりも、外鍵を隠蔽する事でより自らが安全であろう方法を選択した、という事です。
コメントを投稿