前項からの続き…
『DVバラし』は野口は激昂というより狼狽するでしょう。
彼の歪みは、自身の不安が暴力という形で奈央子に向いてしまう事であり、且つそれを制御出来ない事だという事を自ら自覚している。そんな自分を他者に知られる事は恐怖であり、隠したい事ではあるけれども、それを知った人間が既に目の前に存在する、となった場合に、果たしてその人間に対して暴力が向くか?と考えると、それでもその人物に対してそれを隠そうとするか、『どうすればいい?』とむしろ救いを求めるのではないかと思います。
そうであれば、いずれも杉下への暴力とはならなかった、と想像されます。
その上で、なぜ杉下が、一度西崎が口にした『西崎が殴られて警察沙汰にする』案を取ったか?です。
これは、はっきりと言ってしまうと『それ以外に思い浮かばなかった』からです。
人間、切羽詰ると思考の幅というものが凄く狭められる、という特徴があります。一歩引いて考えれば、直ぐ傍にあるちょっとした事に気付くのに、その瞬間に落ち込むとどんな人間でもそうなります。
あの局面では杉下は切羽詰まっていました。その状況下で局面を打開する方策を考えても、新しいアイデアなど出てこない。出てきたのは既に一度頭にインプットされていた、『西崎が野口に殴られて、警察沙汰にする』というアイデアのみ。だから杉下はこれに飛びついた。そのために野口に計画をバラす、という行動に出たんです。
この心理は、逆に言えばこうとも言える。
もし、作戦検討段階で、『西崎が野口に殴られて、警察沙汰にする』というアイデアが出ていなければ、杉下には何もアイデアは浮かばず、野口に懇願し続けたであろう。もしそうであれば、野口側がその異常さに気付き、杉下をとりなしたと想像されます。そうであれば事件は発生しなかった、という事です。
参照
みんな『安藤の僻地行き』の意味を取り違えている