あとがき的に
とにかく、このドラマ、徹底して真意を隠す事を徹底しています。この安藤の外鍵の隠蔽がトリックである事さえ事前・事後の刷り込みを使って隠蔽しました。
このトリック破りで一番の勘所は、講座のその3で開設した時間軸を区切って考えることと、意図を明確に意識する事です。これに気付く事自体が本来はトリック破りの醍醐味です。
杉下は誰を何から護るのか?
杉下が偽証を受入れたタイミングは?
偽証の主従構造は?
偽証をひっくり返すことが出来るのは誰?
これらを冷静に分析すれば、杉下のN=安藤とはならないのです。
皆さんに気付いてほしい。製作者に完全に負けたままで、なおかつそれに気付かないなんて悔しいじゃないですか。製作者に一太刀浴びせましょう!
このトリックを破ったからと言って、この物語の謎解きは終わりません。その先にやっと見えてくる謎が幾つもあるのです。ぜひその世界を皆さんも楽しんでください。
なお、杉下のN=安藤説に対して明確な最初の異を唱えたのは、ここでもコメントを頂いている桃さんです。安藤の外鍵のトリック破りは桃さんのものです。
最後に
安藤派が一つの論拠にしている、公式での原作者のコメントについて。
『主人公と相手が紆余曲折を経て両思いになり、めでたし、めでたし、といった話ではありません。それなら、私が書く意味がない』
私は原作者のコメントはあくまで原作について述べたもの、と割り切っています。ミステリー作家が自らの作品について、本当の事を言うわけがない。それを詮索するのは無意味です。原作の描写からドラマを理解しようとする行為自体が間違いです。
実は安藤派、若しくは中間派と呼ばれる方の多くが原作を読んでいる方たちです。この方たちが陥ったのが、原作の最終版に記述されている十年後の杉下のモノローグ、『安藤望のために』の記述です。この記述を物語全体と取っているんです。ですが、この記述は野口に対する僻地赴任阻止行動の事しか書かれていない。杉下の種明かし的に『安藤望のために』と書くことで原作者は読者に対して物語り全体が安藤の為に、という事後刷り込みをしているんですね。
参照
安藤のNは杉下と言っていいのか? 1~2
成瀬は安藤が外鍵をかけた事を捜査機関に喋らない事が判っていた
杉下の立ち位置のくせ 1~2
成瀬が安藤にいった 『杉下があの時考えていたのは… 』の意図 1~4
成瀬は杉下のN=安藤と誤解した? 1~3
『杉下のN=安藤』を採用しない理由
安藤の僻地赴任阻止行動の杉下の源泉
杉下の安藤の外鍵隠蔽行動
安藤の指輪に杉下が涙する理由
杉下が安藤に事件の真相を語らないのは愛されていたから?
安藤の名前が『のぞみ』である事の必要性 1~2
2015年9月6日日曜日
2015年9月5日土曜日
『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座 その10
トリックその7
『〜のために』という言葉の多義性による原因、意図、効果のすり替え誘導
これは端的に言えば、タイトル「Nのために」そのものが、ある種の心理的誘導効果がある、という事を言っています。
「~のために」という言葉でみなさんはどのように感じるでしょうか?特別の前提を置かなければ基本的に行為者の意図を表現しているととると思います。「~」の部分が行為者の意図の向け先となります。
「~を…する意図で何がしかの行動をする」
しかし、よくよく考えてみてください。この言葉、私は最低3つの、明確に区分すべき用法があると理解しています。
一つはすでに述べました。行為者の意図です。
二つめは、「~が原因で」という使用方法。
三つめは、「~まで効果が及ぶ」という使用方法
これらを、明確に使い分けないといけない。これらを明確に使い分けないで「~のために」を使うと、発言側が原因を言っているのに、受け側が意図をと受け取る、はたまた使用者自身が無意識に取り違える、という事さえ起こるのです。
例えば
「成瀬は安藤のために外鍵の隠蔽の偽証をした」
これは表現として間違っていません。安藤が外鍵を掛けたから(=原因)成瀬が偽証をする必要が発生したのです。ですが、成瀬の意図は杉下の保護です。
また、上記の表現はこうともとれます。外鍵の隠蔽の偽証により、成瀬の意図ではないものの、その効果が安藤にも及ぶという表現でも成立するのです。
この罠に陥った例が西崎の評価です。
西崎が犯人になる動機をあれだけ明確に語っているにも関わらず、その評価として“全員を護る意図”で西崎が犯人になった、という評価がある。これなどは完全にこの誘導効果に陥った例です。
ぜひ自分で「~のために」という言葉で理解されているシナリオが、上記の「意図」であるのか、「原因」であるのか、「効果」であるのか、検証してみてください。より事件の真相がクリアーに見えるはずです。それぞれの「~のために」を明確に区分することで、「~のために」の間で不整合が生じる可能性が大です。
『〜のために』という言葉の多義性による原因、意図、効果のすり替え誘導
これは端的に言えば、タイトル「Nのために」そのものが、ある種の心理的誘導効果がある、という事を言っています。
「~のために」という言葉でみなさんはどのように感じるでしょうか?特別の前提を置かなければ基本的に行為者の意図を表現しているととると思います。「~」の部分が行為者の意図の向け先となります。
「~を…する意図で何がしかの行動をする」
しかし、よくよく考えてみてください。この言葉、私は最低3つの、明確に区分すべき用法があると理解しています。
一つはすでに述べました。行為者の意図です。
二つめは、「~が原因で」という使用方法。
三つめは、「~まで効果が及ぶ」という使用方法
これらを、明確に使い分けないといけない。これらを明確に使い分けないで「~のために」を使うと、発言側が原因を言っているのに、受け側が意図をと受け取る、はたまた使用者自身が無意識に取り違える、という事さえ起こるのです。
例えば
「成瀬は安藤のために外鍵の隠蔽の偽証をした」
これは表現として間違っていません。安藤が外鍵を掛けたから(=原因)成瀬が偽証をする必要が発生したのです。ですが、成瀬の意図は杉下の保護です。
また、上記の表現はこうともとれます。外鍵の隠蔽の偽証により、成瀬の意図ではないものの、その効果が安藤にも及ぶという表現でも成立するのです。
この罠に陥った例が西崎の評価です。
西崎が犯人になる動機をあれだけ明確に語っているにも関わらず、その評価として“全員を護る意図”で西崎が犯人になった、という評価がある。これなどは完全にこの誘導効果に陥った例です。
ぜひ自分で「~のために」という言葉で理解されているシナリオが、上記の「意図」であるのか、「原因」であるのか、「効果」であるのか、検証してみてください。より事件の真相がクリアーに見えるはずです。それぞれの「~のために」を明確に区分することで、「~のために」の間で不整合が生じる可能性が大です。
2015年9月4日金曜日
『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座 その9
トリックその5
高野の安藤への発言『誰かを守るために無心に嘘をつく人間もいる』
これは視聴者への事後刷り込みです。
正確には高野はスカイローズガーデンの事を言っているのではなく、自分が真実にたどり着いたさざなみの事を言っている。それは夏恵の事であり、成瀬を庇い続けた杉下の事を念頭に話している。しかし安藤が誰からも真実を明かされないという会話の中でこれを言わせる事で、さも安藤が真実を知らされないのは愛されていたから、というカモフラージュを製作側が行ったんです。それはつまり安藤の外鍵が隠蔽されたのは安藤への愛故、という刷り込みを行ったんです。こうして安藤の外鍵のトリックそのものが隠蔽されているんですね。
さらに言えば、実は夏恵はこのシーンのために設定されたキャラクターと取っています。つまり、トリックの隠蔽のためのキャラクターという意味です。これに気付いた時に、如何に製作側が入念に安藤の外鍵のトリックを徹底的に隠蔽しようとしたかに思いが至りました。つまり視聴者にトリックがある事さえ気が付かせない、という強い意志です。
トリックその6
成瀬の安藤への発言『あなたを護ろうとしていました』
これも視聴者をへの事後刷り込みです。外鍵の隠蔽偽証を担った成瀬自身に言わせる事で、杉下のN=安藤を視聴者への刷り込み、トリックの存在そのものを隠蔽したんです。
実はこの成瀬の発言の出処として、実際に成瀬が杉下のN=安藤と取った、という説と、杉下の野口に対する安藤の僻地赴任阻止行動の意図を成瀬が知っていてその部分だけを言ったもの、という二説があり、まだ決着がついていませんが、いずれにせよ製作側からすれば成瀬にこう言わせる事でトリックの存在そのものを隠蔽した事に違いは無いんです。
続く…
2015年9月3日木曜日
『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座 その8
トリックその4
8話での杉下の立ち位置の操作
8話における、杉下の成瀬及び安藤とのツーショット時のポジションの対称性の演出に気付かれた方はいらっしゃいます?。
安藤とは野口宅からの帰り、杉下は野ばら荘から駅までの送りで共に橋の上でツーショットの描写があります。
安藤との際には杉下は右に、成瀬との際には杉下は左にポジションしています。
実はこのドラマ全編を通して異性とのツーショット時の杉下のポジションは一定のルールに基づいて演出されていました。それは以前にも『杉下の癖』として紹介したのですが、そのルールの一つに『心を開いている異性の右に立つ』というのがあります。
つまり制作者はずっと一定のルールで視聴者に対して、杉下の異性に対する心象を刷り込んできたんです。
そのため、この8話での二つのシーンの演出により視聴者は杉下の気持ちは安藤にある、と刷り込みされたんですね。
但し、この立ち位置のルールには例外があって、相手に対する蟠りがある場合には杉下は左に立つ、というものがあります。この時杉下は成瀬を西崎の奈央子救出に巻き込む、という蟠りを抱えていたので成瀬の左に立ちました。ですので決して成瀬に対して心を開いていない、という訳ではないのですが、これを意図的に安藤との対比として演出する事で杉下の気持ちは安藤にある、という刷り込みを視聴者に行ったんです。
続く…
8話での杉下の立ち位置の操作
8話における、杉下の成瀬及び安藤とのツーショット時のポジションの対称性の演出に気付かれた方はいらっしゃいます?。
安藤とは野口宅からの帰り、杉下は野ばら荘から駅までの送りで共に橋の上でツーショットの描写があります。
安藤との際には杉下は右に、成瀬との際には杉下は左にポジションしています。
実はこのドラマ全編を通して異性とのツーショット時の杉下のポジションは一定のルールに基づいて演出されていました。それは以前にも『杉下の癖』として紹介したのですが、そのルールの一つに『心を開いている異性の右に立つ』というのがあります。
つまり制作者はずっと一定のルールで視聴者に対して、杉下の異性に対する心象を刷り込んできたんです。
そのため、この8話での二つのシーンの演出により視聴者は杉下の気持ちは安藤にある、と刷り込みされたんですね。
但し、この立ち位置のルールには例外があって、相手に対する蟠りがある場合には杉下は左に立つ、というものがあります。この時杉下は成瀬を西崎の奈央子救出に巻き込む、という蟠りを抱えていたので成瀬の左に立ちました。ですので決して成瀬に対して心を開いていない、という訳ではないのですが、これを意図的に安藤との対比として演出する事で杉下の気持ちは安藤にある、という刷り込みを視聴者に行ったんです。
続く…
2015年9月2日水曜日
『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座 その7
トリックその2
杉下の成瀬への外鍵隠蔽依頼の演出
これは講座その5において、偽証の構造論より杉下のN=安藤とはなり得ないことは解説しました。それではここではどのようなトリックがあるのでしょう。
これはトリックその1の、僻地赴任阻止行動とセットで理解するべき部分です。つまり僻地阻止行動において杉下は安藤の保護を目的に行動した。ここで杉下の大事は安藤、という刷り込みをした上で、具体的安藤の罪(外鍵を掛ける)について、警察に安藤が連れ出されるまさにそのタイミングで成瀬に対して隠蔽を依頼する、という演出をすることで、杉下の行動ルールの事件前後での変化と、偽証の構造上の従属関係性を視聴者に対して目眩ませをしたんです。
トリックその3
『一番大切な人の事だけ考えた』の杉下のモノローグ
これが実は事前の視聴者への刷り込みだとどれほどの人が気付いたでしょうか?
事件の真相が明かされる前の段階で、杉下のモノローグが安藤が鍵をかけて立ち去る描写に被せられているんです。これで視聴者は、無意識下に杉下の大事は安藤、という刷り込みをされたんですね。
では、このシーンにおいて制作者は嘘をついたのか!というと必ずしもそうは言えない。ある種のレトリック操作で、大切な人=安藤、という表現は成立し得るんです。
それがどのようなものであるかというと、『真の目的を達成するための必須条件、中間目標も真の目的同様に大事と表現し得る』というものです。つまり、『成瀬の保護の為には安藤の外鍵の隠蔽が必須条件。だから大切なのは安藤』というロジックです。
続く…
2015年9月1日火曜日
『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座 その6
前回までで杉下のN=成瀬説の立証を行いました。ここからはなぜ視聴者は杉下のN=安藤と取ったのか、製作者が仕込んだトリックを解説します。
使われたトリックをリストします。
直接的なトリック
トリックその1 杉下の安藤の僻地赴任阻止行動
トリックその2 杉下の成瀬への外鍵隠蔽依頼の演出
事前の刷り込み
トリックその3 『一番大切な人の事だけ考えた』の杉下のモノローグ
トリックその4 8話での杉下の立ち位置の操作
事後の刷り込み
トリックその5 高野の安藤への発言『誰かを守るために無心に嘘をつく人間もいる』
トリックその6 成瀬の安藤への発言『あなたを護ろうとしていました』
全般
トリックその7 『〜のために』という言葉の多義性による原因、意図、効果のすり替え誘導
恐らくこのリスト、その4とその7については?で、それ以外は全部杉下のN=安藤の証拠では?と思われる方がほとんどだと思います。
ですが、これらは巧妙に製作者が杉下のN=安藤とのミスリードを誘うためのトリックなのです。
トリックその1
杉下の安藤の僻地赴任阻止行動
これこそ、杉下のN=安藤の証拠なのでは!という方がほとんどだと思います。なぜ、これがトリックであるのか?
私が奈央子の自殺以降を対象に杉下のNを論じているのには、ここに理由がある。
事件の発生の前と後で、杉下の行動ルールが違うんです。
この時確かに杉下は野口に対して安藤を守る意図で行動した。
しかし事件発生以後は、杉下は何に対して彼女のNを守るのか?
それは捜査機関に対してです。闘う相手が異なるのですから、杉下の行動ルールが変わるのは必然です。杉下は野口から安藤を守る意図で僻地赴任阻止行動を行った。これは真です。しかしそれをもって杉下が捜査機関から安藤を保護する事を意図としてその後の行動をする、とは断定出来ないのです。
ですから、これは人間の因果律を利用した、視聴者を引っ掛けるためのトリックなんです。
2015年8月31日月曜日
『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座 その5
つまりどういう事かと言えば、安藤に一切触れずに済む偽証を杉下が成瀬の指示で受け入れたという事は、杉下は安藤の保護が目的で偽証を受け入れたのではない、安藤以外の誰かを保護対象として偽証を受け入れた、という意味なんです。
そしてそれはだれか?と言えば、それは成瀬です。
杉下のN=成瀬、その人です。
なぜ成瀬と言えるのか?これには直接的証拠があります。
成瀬の入室前、西崎は杉下に対して『罪の共有』という名の偽証要求をしていますが杉下は拒否しています。
しかし成瀬の、西崎との共謀による『それでいいね』という偽証指示は受け入れた。
どちらの要求・指示によっても、偽証内容に差はない。
つまり、西崎を保護する(奈央子を庇って西崎自身が犯人になるという西崎の意思の実現)目的では杉下は偽証を受け入れる事は出来無いが、後に状況に加わった成瀬を保護する(杉下との関係性からさざなみ放火事件を蒸し返される事を防ぐ)目的であれば偽証を受け入れる事が出来たんです。
ですから杉下のN=成瀬なのです。
それではなぜ安藤の外鍵の隠蔽が行われたのでしょう?
これは中の三人(西崎、杉下、成瀬)と安藤との間で暗黙のゲームが成立したからです。
中の三人に取って、安藤が鍵をかけた事が捜査機関に対して知られるのは致命的です。西崎に会った事、西崎が成瀬について言及した事、三人が杉下の部屋で会っていたことが全て明らかとなり、偽証の根幹がくつがえってしまうのです。
ですので、三人には安藤に喋って欲しくない、だから『こっちは黙っててやるから、そっちも黙っていろ』。それが西崎の安藤への『逃げられなかった』の発言の意図です。
安藤は安藤で、自身の行為が野口夫妻の死亡のきっかけとなった自覚がある。出来る事なら自らの行為は捜査機関に知られたくない。だから自分からは鍵について触れない。
こうして安藤の外鍵が隠蔽されたのです。ですから中の三人にとっては、安藤の外鍵の隠蔽はあくまで偽証を通す為の手段であり、安藤の保護が目的ではない。杉下のN=安藤とはなり得ないのです。
続く…
追記
実は成瀬と安藤については、正確にはもう少し別の意味が加わるのですが、議論が複雑になるので省略します。すでに投稿した記事がありますので、そちらをご参照ください。
2015年8月30日日曜日
『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座 その4
それでは具体的に見ていきましょう。
奈央子の自殺以降の経過を記します。
1.奈央子自殺
2.西崎の杉下に対する『罪の共有』の要求と杉下の拒否
3.成瀬入室
4.西崎、成瀬の共謀→杉下の偽証受け入れ
5.成瀬、警察へ通報
5.安藤入室
6.安藤の『おれのせいだ』
7.警察着
8.杉下の成瀬への外鍵隠蔽要求、安藤退出、成瀬、杉下の手繋ぎ
杉下のNを判断するには、偽証の構造と杉下が偽証を受け入れたタイミング、そしてその偽証を受け入れた杉下の動機を読み解く必要があります。
まず偽証の構造の分析から始めます。
・西崎単独犯
・西崎の単独犯とするには、作戦の存在を隠蔽する
・作戦の存在を隠蔽する目的で、三人の関係性は希薄であり、偶然現場に居合わせた事にする
・その偶然性を担保するには、外鍵の隠蔽が必要
上の三つ(西崎単独犯、作戦の隠蔽、偶然の主張)は、成瀬と西崎が合意し、杉下がそれを受け入れました。
最後の外鍵の隠蔽は3人の間での合意は無く、杉下が成瀬へ依頼しています。
実は偽証の構造のうち、核心は上の三つ(西崎単独犯、作戦の隠蔽、偶然の主張)であり、仮に安藤が外鍵を掛けていなくても、同じ事を主張したはずの事項なのです。
つまり、最後の外鍵の隠蔽は、安藤が外鍵を掛けた為に、偽証の核心部分を担保する必要から追加的に生じた偽証です。
それではなぜ安藤の外鍵の隠蔽が必要になったかと言えば、安藤が偽証の核心部分をひっくり返す事が可能な存在であるからなんです。
続く…
奈央子の自殺以降の経過を記します。
1.奈央子自殺
2.西崎の杉下に対する『罪の共有』の要求と杉下の拒否
3.成瀬入室
4.西崎、成瀬の共謀→杉下の偽証受け入れ
5.成瀬、警察へ通報
5.安藤入室
6.安藤の『おれのせいだ』
7.警察着
8.杉下の成瀬への外鍵隠蔽要求、安藤退出、成瀬、杉下の手繋ぎ
杉下のNを判断するには、偽証の構造と杉下が偽証を受け入れたタイミング、そしてその偽証を受け入れた杉下の動機を読み解く必要があります。
まず偽証の構造の分析から始めます。
・西崎単独犯
・西崎の単独犯とするには、作戦の存在を隠蔽する
・作戦の存在を隠蔽する目的で、三人の関係性は希薄であり、偶然現場に居合わせた事にする
・その偶然性を担保するには、外鍵の隠蔽が必要
上の三つ(西崎単独犯、作戦の隠蔽、偶然の主張)は、成瀬と西崎が合意し、杉下がそれを受け入れました。
最後の外鍵の隠蔽は3人の間での合意は無く、杉下が成瀬へ依頼しています。
実は偽証の構造のうち、核心は上の三つ(西崎単独犯、作戦の隠蔽、偶然の主張)であり、仮に安藤が外鍵を掛けていなくても、同じ事を主張したはずの事項なのです。
つまり、最後の外鍵の隠蔽は、安藤が外鍵を掛けた為に、偽証の核心部分を担保する必要から追加的に生じた偽証です。
それではなぜ安藤の外鍵の隠蔽が必要になったかと言えば、安藤が偽証の核心部分をひっくり返す事が可能な存在であるからなんです。
続く…
2015年8月29日土曜日
『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座 その3
先ず一つ言葉の定義について明確にさせて頂きたいと思います。ここで論じる『杉下のN』とは、スカイローズガーデン事件の処理の際、杉下が誰の事を大事として行動したか、とします。より具体的には奈央子の自殺以降、杉下がその人物を護るために行動、選択をした対象者とします。つまり杉下が『一番大切な人の事だけ考えた』相手です。
なぜこのような形で時間軸上のある点以降に限定するか、については実はそれ自体がトリックに関係するからです。ですので本来であれば、このようなテクニックを用いる事自体がトリック破りのための方法論なので、謎解きの一部に含まれるのですが、これを予め提示した上で先を進めないと、話が正確に伝わらない可能性が高いため、便宜上先に提示させて頂きました。
もう一点はここで分析、解説させていただく事項に関しては、『杉下の意図』がその対象である、という事も併せて先に断っておきます。
この点についても、上記の時間軸に関する説明と同じです。これから進める論中、『〜のために』という表現が頻出する事になりますが、その意味を取り違えるとこれも話が正確に伝わらない、あまつさえ、全く意味が逆になる事が起こるので、先に明確にさせて頂きます。
実を言うと、上記二点を明確に意識する、使い分ける事に気付く事がこの『杉下のN』分析上の方法論として必要不可欠で、これを取り違えるとあらぬ方向に論が進んでしまいます。その意味で製作側のミスリードのテクニックのネタばらしであり、これに気付く事自体がここの謎解きの楽しみの一つではあるのですが、それでは解説にならないので、皆さんの楽しみを幾つか減じますが、その点は了承願います。
それでは明日以降、具体的に話を進めていきましょう
続く…
なぜこのような形で時間軸上のある点以降に限定するか、については実はそれ自体がトリックに関係するからです。ですので本来であれば、このようなテクニックを用いる事自体がトリック破りのための方法論なので、謎解きの一部に含まれるのですが、これを予め提示した上で先を進めないと、話が正確に伝わらない可能性が高いため、便宜上先に提示させて頂きました。
もう一点はここで分析、解説させていただく事項に関しては、『杉下の意図』がその対象である、という事も併せて先に断っておきます。
この点についても、上記の時間軸に関する説明と同じです。これから進める論中、『〜のために』という表現が頻出する事になりますが、その意味を取り違えるとこれも話が正確に伝わらない、あまつさえ、全く意味が逆になる事が起こるので、先に明確にさせて頂きます。
実を言うと、上記二点を明確に意識する、使い分ける事に気付く事がこの『杉下のN』分析上の方法論として必要不可欠で、これを取り違えるとあらぬ方向に論が進んでしまいます。その意味で製作側のミスリードのテクニックのネタばらしであり、これに気付く事自体がここの謎解きの楽しみの一つではあるのですが、それでは解説にならないので、皆さんの楽しみを幾つか減じますが、その点は了承願います。
それでは明日以降、具体的に話を進めていきましょう
続く…
2015年8月28日金曜日
『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座 その2
この二派の主張は真っ向から対立しており、相容れないもののように見える。
また俳優などのインタビュー記事などでも“視聴者に解釈を委ねる”的な情報も流れており、さもその二派両方の解釈はそれはそれで成立するんだ、といった雰囲気が醸成されていた。
しかし、よく両派の論を見比べると、一致点も存在している。
それは『スカイローズガーデンでは杉下は自らの意思で安藤を護った』、つまり『杉下のN=安藤』と安藤派だけでなく、成瀬派もこの点について認めているんです。
これは奇妙な現象です。
杉下のNが明かされていないにも関わらず、その意見を異にする二つの系統双方が、『杉下のN=安藤』との一致を見ている。ドラマの謎とされている部分について見解が一致しているにも関わらず、その他の部分の解釈が真っ向から対立している。
なぜこのような事象が発生するのか?
それは、この『杉下のN=安藤』という、ドラマを見た殆どの方が一致している正にこの見解が間違っているからです。
『杉下のN=安藤』はトリックです。その詳細は次回以降詳述させてもらいます。
そして、この『杉下のN=安藤』説を脱却出来たとき、このドラマの本当の面白さが目の前に広がります。それはこのトリック破りの何倍もの面白さです。皆さんにぜひその世界を知って頂きたい。それがこの講座の本意です。
今は、ここから先の議論で必要な心構えだけ述べさせてもらいます。
一つ、キャラクターへの思い入れは捨てる。
一つ、全ての描写へ懐疑の眼を向ける
一つ、このドラマがミステリーである事を認める
一つ、ミステリーにおいては論理的可能性は必然である事を受入れる
続く…
また俳優などのインタビュー記事などでも“視聴者に解釈を委ねる”的な情報も流れており、さもその二派両方の解釈はそれはそれで成立するんだ、といった雰囲気が醸成されていた。
しかし、よく両派の論を見比べると、一致点も存在している。
それは『スカイローズガーデンでは杉下は自らの意思で安藤を護った』、つまり『杉下のN=安藤』と安藤派だけでなく、成瀬派もこの点について認めているんです。
これは奇妙な現象です。
杉下のNが明かされていないにも関わらず、その意見を異にする二つの系統双方が、『杉下のN=安藤』との一致を見ている。ドラマの謎とされている部分について見解が一致しているにも関わらず、その他の部分の解釈が真っ向から対立している。
なぜこのような事象が発生するのか?
それは、この『杉下のN=安藤』という、ドラマを見た殆どの方が一致している正にこの見解が間違っているからです。
『杉下のN=安藤』はトリックです。その詳細は次回以降詳述させてもらいます。
そして、この『杉下のN=安藤』説を脱却出来たとき、このドラマの本当の面白さが目の前に広がります。それはこのトリック破りの何倍もの面白さです。皆さんにぜひその世界を知って頂きたい。それがこの講座の本意です。
今は、ここから先の議論で必要な心構えだけ述べさせてもらいます。
一つ、キャラクターへの思い入れは捨てる。
一つ、全ての描写へ懐疑の眼を向ける
一つ、このドラマがミステリーである事を認める
一つ、ミステリーにおいては論理的可能性は必然である事を受入れる
続く…
2015年8月27日木曜日
『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座
このドラマで一番解りやすく且つ一番多くの方が解消できていないギャップがスカイローズガーデンで『杉下のN=安藤』に見えるにも関わらず、ラストシーンで杉下は成瀬の元で幸せを得た描写です。
他のメンバー、成瀬、西崎、安藤がそれぞれ自身のNが誰であったかを高野に明かしているにも関わらず、杉下のNだけは最後まで明かされることなくドラマは終了してしまいました。
このギャップを解消するため、番組終了直後からさまざまな解釈が展開されました。それは成瀬を中心に解釈する系譜(いわゆる成瀬派)と安藤を中心とする系譜(いわゆる安藤派)の2系統に大別されます。
成瀬派の論旨
・島時代を含め、全編で杉下の成瀬への想いが描写されている。だからラストで杉下が成瀬の元に還るのは当然。
・スカイローズガーデンでは杉下は安藤を護った(杉下のN=安藤)
・杉下が安藤を護ったのは、安藤が杉下の上昇志向の象徴的存在であり、彼の将来がつぶされることは何としても避けたかった。また生活能力に若干の問題(のこぎりをろくに使えない)のある安藤を長女気質でまもった。
安藤派の論旨
・東京編での杉下の恋愛感情は安藤にあった。
・だからスカイローズガーデンでは安藤を護った(杉下のN=安藤)
・成瀬の元に還ったのは杉下が病気となり、安藤の将来への邪魔になるのを嫌がったから。安藤を諦め、それでも受入れてくれる幼馴染の元へ行くのは、現実的な女性の選択。
・原作者自身が『紆余曲折を経て主人公が両思いになる物語を自分が書く意味がない』と言っている。成瀬派の論旨は原作者が書かない、と言っている事そのもの
いわゆる中間派、と呼ばれる系統も存在しますが、これは上記二派のハイブリッド論ですので、この講座では特に扱いません。
続く…
他のメンバー、成瀬、西崎、安藤がそれぞれ自身のNが誰であったかを高野に明かしているにも関わらず、杉下のNだけは最後まで明かされることなくドラマは終了してしまいました。
このギャップを解消するため、番組終了直後からさまざまな解釈が展開されました。それは成瀬を中心に解釈する系譜(いわゆる成瀬派)と安藤を中心とする系譜(いわゆる安藤派)の2系統に大別されます。
成瀬派の論旨
・島時代を含め、全編で杉下の成瀬への想いが描写されている。だからラストで杉下が成瀬の元に還るのは当然。
・スカイローズガーデンでは杉下は安藤を護った(杉下のN=安藤)
・杉下が安藤を護ったのは、安藤が杉下の上昇志向の象徴的存在であり、彼の将来がつぶされることは何としても避けたかった。また生活能力に若干の問題(のこぎりをろくに使えない)のある安藤を長女気質でまもった。
安藤派の論旨
・東京編での杉下の恋愛感情は安藤にあった。
・だからスカイローズガーデンでは安藤を護った(杉下のN=安藤)
・成瀬の元に還ったのは杉下が病気となり、安藤の将来への邪魔になるのを嫌がったから。安藤を諦め、それでも受入れてくれる幼馴染の元へ行くのは、現実的な女性の選択。
・原作者自身が『紆余曲折を経て主人公が両思いになる物語を自分が書く意味がない』と言っている。成瀬派の論旨は原作者が書かない、と言っている事そのもの
いわゆる中間派、と呼ばれる系統も存在しますが、これは上記二派のハイブリッド論ですので、この講座では特に扱いません。
続く…
2015年7月30日木曜日
安藤の名前が『のぞみ』である事の必要性
私が杉下のN=安藤を取らない理由のシリーズ第五段。これが最後になります。
安藤と杉下の名前、『のぞみ』に関する考察です。
実はこれ、ネタ募集でnao様から頂いたものです。あまりこの論考では、こういった方面からのアプローチをして来なかったのでnao様、有難うございます!
まず名前の同一性からです。本当は原作まで遡るべきかもしれませんが、謎解きという観点から行くと原作を持ち込むと間違えるので、やめておきます。あくまでドラマ内という事で。
これは、成瀬に対しては杉下と同じ『のぞみ』という名前から、女性と誤認させる伏線という理解になります。では成瀬にとってもう一人の『のぞみ』を女性と誤認させる事にドラマとしてどのような意味があるか。
もしもうひとりの『のぞみ』が男だと成瀬が2回目の杉下の部屋での作戦会議に判っていたら?
日時はクリスマスイブ、状況はハイソ夫妻の自宅での食事会へ若い男女がゲストで招かれる。その男女は同じアパートで学生時代を過ごした…
普通のセンスであれば、その男女をカップルと取ります。成瀬は杉下の気持ちが安藤にあるのか西崎にあるのか、疑念を持つでしょう。成瀬が杉下に安藤との関係を問うたら?杉下は親しい友人と答えるでしょう。でも成瀬はもう一つ聞かざるを得ない。では西崎に協力するのはなぜ?と。
これを杉下に成瀬が問うたら?ミステリーの崩壊です。杉下の西崎への感情を問うような描写は厳禁です。
ですが、成瀬が安藤を男と認識したのち、杉下がレストランを訪れています。その際、なんで問わなかったのか?という反論があるでしょう。その時、聞けるじゃないか、と。
この時の問題は、安藤が男とである、という事とその安藤がプロポーズしようとしている、という事を同時に知ったという部分がポイントです。この状況で成瀬としては自身が安藤に習いプロポーズするべきか悩んでいる状況です。その状況で杉下の気持ちが誰にあるのか?を問えないでしょう。またドラマの演出としては成瀬の安藤に対するライバル心をうかがわせる心理描写と、それへの杉下の反応を見せる、という部分に意味があった。だからシャルティエヒロタであった時は、成瀬は問えない。
つまり、ミステリーとしてみた時、成瀬にはもうひとりの『のぞみ』は女である、と誤認していて貰う必要があった。そのために安藤の名前は『のぞみ』である必要性があった、というのがドラマ全体での位置付けになります。
続く…
2015年7月28日火曜日
安藤の名前が『のぞみ』である事の必要性 その二
前項からの続き…
名前に関しては、もう一つの観点が有ります。
安藤の外鍵の隠蔽のトリックを隠蔽する、ある種の誘導を行う、という効果です。
キャラクターの名前にある種のメッセージを込める、というのは従来からよく行われる手です。このドラマではそれを逆手に取った。
安藤と杉下の名前がともに『のぞみ』であり、かつ双方の一字づつをとると『希望』になる。そこに製作者が杉下にとって安藤とは自身の上昇志向のシンボル、もしくは代理として大事であった、という誘導を狙ったのです。一見するとスカイローズガーデンの事件での杉下の行動とラストシーンにはギャップが存在する。視聴者はそのギャップの解消を図ろうとする。その際、このような操作を事前にしておく事で、安藤の外鍵の隠蔽にトリックが仕込まれている事自体を隠蔽する効果があるんですね。
似たような操作は、安藤が鋸をろくに使えない、という描写にも認められます。この描写により安藤の生活力欠如→杉下の弟分(名前の呼び捨て含む)という刷り込みをする事で、家族を守るような無償の愛、という方向に誘導しようとする意図です。
いや、nao様ありがとうございます!
安藤の名前が『のぞみ』である必要性が、ドラマ全体の中で位置付けできました。名前については全く謎解きに関係しないだろう、答えが出ようのない推測のネタ程度と思っていたんですが、しっかりその必然性が存在したんですね。う〜ん、自分では謎解きはほぼ終わったと思っていたんですが、まだ出てくるんですね!
追記
推測ネタという単語を出したついでに、安藤のイニシャル=A.N について感じていた事を。
これは英語の否定の接頭辞のANではないか?と思っているんです。
つまり、杉下、成瀬、西崎の存在をテーゼとした時の、アンチテーゼとしての存在。
歪みを持つ存在に対する、アンチテーゼとしての歪みを持たない存在。これが安藤の名前に関して、真に製作者が込めた意味ではないかと私は詮索しています。
ま、これについてはティーブレイクネタ、という事で。
参照
成瀬が『N作戦2』に協力することにした理由
杉下の安藤の外鍵隠蔽行動
2015年7月23日木曜日
杉下の安藤の外鍵隠蔽行動
私が『杉下のN=安藤』を取らない理由の第二論点です。
杉下の安藤の外鍵の隠蔽行動です。
『杉下のN=安藤』を取られる方は、第一論点である僻地行き阻止行動からの一連として、この隠蔽を理解されています。いえ、物語を見た、ほとんど全ての方はこの一連については、杉下は安藤のために行動した、安藤を守る意図で行われた、と理解されています。
その理解のあらすじはこうです。
安藤が外鍵をかけた事を知った杉下は、安藤の将来を慮って、成瀬に鍵はかかっていなかったとの口裏合わせを依頼した。偽証できたのは成瀬に自分が背負いきれない罪を共有して貰ったから。成瀬は杉下の気持ちが安藤にある事を知り、隠蔽の依頼を受け入れ、事件後杉下から身を引いた…
しかし真相は違います。これはトリックです。
この外鍵の隠蔽は、四人による暗黙の取引なのです。
その全容についてはすでに詳しく述べさせていただいていますので、そちらにゆずります。ここでは『杉下のN=安藤』とした時に説明し得ない事項を二つだけ挙げておきます。
なぜ杉下自身は捜査機関からの聴取に対して自ら鍵に言及しないのか?それほどまで安藤が大事な保護すべき対象であれば、自身でそれを証言しないのか?もし何か別の要因があるとすれば、それは別の誰かに対する配慮、という事になり、『一番大切な人の事だけ考えた』と矛盾する。
三人(杉下、成瀬、西崎)の偽証(非計画性、偶然性の主張)は杉下に取って安藤を保護する意図と言えるのか?仮にそうだとして、西崎の要求は拒否したにもかかわらず、成瀬の指示は受け入れたのはなぜか?どちらであっても偽証の内容は変わらない。安藤を保護する意図であるなら、西崎が要求した時点で受け入れていたはず。杉下のN=安藤であるなら、『一番大切な人の事だけ考えた』のであるから、成瀬の存在が杉下の行動の決定要因とはならない。
参照
『杉下のN=安藤』を採用しない理由
トリックの場所
安藤の外鍵を掛けた行為の隠蔽工作 4人の行動原理・利益
2015年6月7日日曜日
なぜ多くの人が杉下が守ろうとしたは安藤と取り違えたのか
スカイローズガーデンでの杉下のNは、成瀬です。
しかし視聴者のほとんどはスカイローズガーデンで杉下が護ったのは安藤、と取っていました。
これは巧妙に仕掛けられたトリックの為です。
概要は先の投稿『トリックの場所』を参照いただくとして、ここではどのような手で製作者はミスリードを誘ったのか、を詳述します。
事前の刷り込みとして、安藤が鍵をかけたカットに杉下の『一番大切な人のことだけ考えた』のモノローグを被せる演出
追い込まれた杉下が野口に僻地赴任を取消して貰うよう懇願する、という演出。
野口に〝ついて行くか〟と聴かれ、杉下に〝安藤が付いてこいと言えば〟と言わせた。
安藤の僻地行き阻止のために警察沙汰にしようと、計画をばらし、野口を挑発。
成瀬と杉下には会話をさせず、安藤が部屋を出て行くタイミングで杉下に成瀬へ外鍵の隠蔽を依頼。
夏江がただ一心に成瀬親子を庇う為に声を失った現実を見た高野に、安藤に〝守ろうとするが故に何も教えない〟と言わせる。
成瀬に、〝杉下が守ろうとしていた〟と言わせる。
これだけふんだんに安藤の為、的な演出を繰り返しました。ここまでやれば大抵の人は杉下のN=安藤、と思いますよね。
大事なポイントがあります。〝何から安藤を守るのか〟という部分です。
大概の方は、これを切り分けていないのです。
事件が起こる前、確かに杉下は〝野口から〟安藤を守ろうとした。それは間違いありません。
しかし事件以後、杉下が〝捜査機関から〟安藤を守ろうとしたと言えるのか?
これは必ずしも真とは言えないのです。何からまもるのか?という対象が変わっているのですから、守ろうとする側の行動原理も変化している、と考えるべきなのです。
更に複雑なのは、その変化した行動原理の結果として、安藤の外鍵の隠蔽が行われたのですが、これが隠蔽を行おうとした三人(杉下、西崎、成瀬)の真の目的ではなく、それぞれがそれぞれに実現したい利益の、共通の手段として外鍵の隠蔽が行われた、という部分です。
ここで視聴者の目くらましに効果を発揮したのがタイトルです。『〜ために』という言葉の持つ多義性を利用した、原因、意図、効果のすり替え誘導です。三人の意図は別のところにある、そのための行動の効果として安藤の外鍵が隠蔽された、というのが真理なのですが、これがさも意図と視聴者がとってしまった。
もう一つ絶大な効果を発揮したのが、『大事な人のことだけ考えた』です。
これはレトリック操作が行われました。
大事な人=守るべき人=愛する人、というステレオタイプによる誘導です。
視聴者はこの言葉に被せられた安藤の鍵をかけるカットから以下の類推をした。
守られた人=安藤→大事な人=愛された人=安藤
このように見事に制作側に引っ掛けられたんです。
では、大事な人という表現は嘘なのか?
製作者は嘘を劇中に挿入したのか?というと、必ずしもそうではないんです。
真の目的を達成するための必須条件、中間目標も大事、と言い得るレトリック操作です。
三人が居合わせたのは偶然、という偽証を成立させるためには安藤の外鍵の隠蔽が必須条件、だから大切なのは安藤。
こうして安藤の外鍵の隠蔽にトリックが仕込まれたわけです。
参照
『トリックの場所』
『ミステリーとしての仕掛け』
『結局杉下は誰のために偽証したのか』
2015年5月29日金曜日
『愛はないかもしれないが、罪を共有してくれ』はトリックか?
西崎が杉下に偽証を要求した言葉
『お前の究極の愛は罪の共有なんだろう。愛は無いかもしれないが罪を共有してくれ。』
この言葉はトリックなのではないか、と今疑っています。
この言葉をトリック、ミスリードを誘うための道具とした場合、隠蔽されたものはなんなのか?
一つは、西崎がこの事件における杉下の究極の愛の相手である、という事。
もう一つが西崎、杉下、成瀬三人の偽証が罪の共有などでは無く、それぞれのエゴによる共謀であったという事です。
これを視聴者に対して隠蔽した。
エゴの隠蔽はそれの少し前に西崎自身が発した「殺人の動機が愛などという美名であってはならない。自分が犯人であれば復讐になる。」と対応していると思うんです。
西崎の美意識を偽装・偽証に当てはめると『殺人犯偽装の理由が罪の共有などという美名であってはならない』
この表現、西崎の美意識にピッタリ来るんですね。そして実際に三者三様のエゴを通すための共通方法としての偽証という共謀が成立した。
このエゴによる共謀を罪の共有にすり替えた結果、視聴者に誤った罪の共有関係を刷り込み、その結果として杉下の成瀬を護る意図を隠蔽、杉下の意図は安藤を守る、というミスリードを誘ったんだと思われます。
もうひとつの杉下の究極の愛の相手=西崎、の隠蔽は一つには予防線だったと思います。
杉下のモノローグ「大切な人が一番傷付かない方法を考えた」には、西崎が自分が殺人犯となる事を希望している=それが西崎が一番傷付かない方法、という論理が成立し、かつステレオタイプとして大切な人=愛する人=西崎という論の展開は十分あり得た。それをこの発言で隠蔽した。その意図は、何故スカイローズガーデンの事件が起きてしまったのか?という物語の根源的な理由そのものを視聴者に隠蔽する事だったのではないでしょうか?
ではそれが何であるかというと、『究極の愛』という、杉下の心に巣食うモンスターとそれが生み出したN作戦2に挑む際の杉下の魂胆だったのだと思います。
※5月13日 杉下の『究極の愛』の本当の意味 参照
※5月16日 N作戦2における杉下の魂胆 参照
2015年5月28日木曜日
偽証を匿うための偽証は罪の共有?
先の二つの投稿で、スカイローズガーデンでの杉下には、成瀬、西崎にそれぞれ罪の共有関係が成立しうる事を説明しました。
すなわち
杉下は罪(成瀬が行おうととしている隠蔽工作)を犯した人間(=成瀬)を捜査機関から匿う意図で偽証(=犯行現場は見ていない、外鍵については知らない、三人が居合わせたのは偶然)した
杉下は罪(=自分が野口を殺害した、という偽証)を犯した人間(=西崎)が一番傷つかないよう、捜査機関に偽証(=犯行現場は見ていない、外鍵については知らない、三人が居合わせたのは偶然)する
共に、偽証を犯した人間のために自らも偽証をする。
しかし、これは罪の共有と言えるのか?
さざなみにおける杉下の偽証は、成瀬との事前の会話は有りません。それに杉下が成瀬がやったと思っていたのは放火であり、罪の性質が異なる。それ故に共有と呼びうる。
スカイローズガーデンでは三人の間で意志のやり取りが行われていた。
処理の方向性についての会話が成立していた。
それにそもそも偽証の罪を匿うための偽証、であるなら、それは自ら同じ罪を犯している事になる。
ですので、これは罪の共有ではなく共謀です。三人の行為は正確には共謀なのです。
そうすると、西崎が杉下に向かって発した『愛はないかもしれないが、罪を共有してくれ』
これもトリックである可能性が大です。
2015年4月2日木曜日
杉下の『N』
『Nのために 論考』
前回までで、オフィシャルサイトの投稿締め切り時点での私の認識の到達点までを説明させて頂きました。
このドラマで最後まで明かされる事の無かったスカイローズガーデンでの杉下の『N』=成瀬と結論しました。
それはただ単にラストシーンからの類推でなく、キャラクターへの思い入れでもなく、冷静にミステリーとしてのトリックの挿入可能性を検証して、四人の行動原理を分析した結果の論理的帰結としての結論であり自信を持って主張出来るものでした。その結果としての杉下の魂の上昇プロセスについてもキルケゴールの実在主義哲学のエッセンスを織り込んで表現出来たと思っていました。
しかし、「3月16日の衝撃」でも書きましたが、とんでもない可能性に気が付き、今ではそれは確信となりました。
まだ全ては解明出来ていません が、間違いありません。
私は自説のスカイローズガーデンでの杉下の『N』=成瀬、の見解を撤回します。
杉下の『N』=西崎、です。
オフィシャルサイトで私の意見、解釈、見解に賛同頂いた方々、本当に申し訳有りません。
また同じくオフィシャルサイトで私が意見差し上げた方々、生意気言ってすみませんでした。
安藤の外鍵の隠蔽取引説の奥に、もう一つのバックドアの存在の可能性に気付いてしまったのです。
それは杉下自身が定義する「究極の愛」と関係します。
〝罪の共有…共犯じゃなくて共有。誰にも知られずに相手の罪を自分が半分引き受けること…誰にもってのはもちろん相手にも…罪を引き受け、黙って身を引く〝
確かに杉下の『N』=西崎説は一部のネタバレサイトで展開されていた論であるのは自分も承知していました。でもその何れもが罪の共有関係に着目していて、結局は成瀬も安藤も罪の共有者、みたいな自分の頭で考えてないだろ、といったものばかりだったので無視していたんです。
私が重視したのは罪の共有よりも、後段。〝相手にも気がつかれずに、黙って身を引く〝という部分です。
想像してみてください。
もし杉下が、彼女自身が定義した究極の愛をスカイローズガーデンの事件の前から遂行しつつあったとしたら?
その対象は状況証拠として一番相応しいのは三人のうち誰か?
安藤、成瀬では、〝相手にも気づかれずに、黙って身を引く〝という定義にそぐわないでしょう。
そうするとこの定義に一番似つかわしい相手は西崎という事になる。
自分でかつて偉そうに言い切りました。『ミステリーにおいて論理的可能性は必然』と。
ですが、ここで困った事が発生する事になるんです。杉下が本当に『究極の愛』を完璧に実施していたとしたら、ドラマで描写されない。つまり、論理的可能性としての必然がその定義の故に描写し得ず、それゆえその存在を証明できない、というパラドックスを生み出すんです。
単に西崎というだけでなく、論理的必然としてパラドックスが発生した事に愕然しました。
そんなオチがあったんかい、としばらく体の震えが治りませんでした。
2015年3月30日月曜日
安藤の外鍵を掛けた行為の隠蔽工作 4人の行動原理・利益
k
『Nのために 論考』
安藤の外鍵の隠蔽行動の4人の行動原理及び利益を下記に解説します。
ここで大事なのは、安藤を保護する意図は無くとも、西崎、杉下、成瀬が安藤の外鍵を隠蔽する事により、それぞれの利益が達成される、という部分です。
これがトリックである、というという事の証左となります。つまり安藤の外鍵を掛けた行為を隠蔽する事がそれぞれの利益を守る上で共通の手段であり、その一点において暗黙の取引が成立したのです。
安藤の行動原理・利益
自分が行った外鍵を掛ける行為により、事件の凄惨化に繋がった事から、その責が自分に及ぶ事を恐れた為。
西崎の行動原理・利益
奈央子を独占する事。
西崎には奈央子を独占するために自分が野口をやった事にしたい。
外鍵の隠蔽に失敗すると、安藤が鍵を掛けた理由を語ることになる。
西崎は安藤に会っている。計画も感づかれた。杉下の究極の愛の相手が計画に入っている事も喋った。安藤にこれらを喋られると、計画が存在した事が白日となりその状況では犯行への杉下・成瀬の関与も疑われ、奈央子の独占が出来なくなる。
成瀬の行動原理・利益
杉下を嫌疑から除外する事。
外鍵の隠蔽に失敗すると、安藤が鍵を掛けた理由を語ることになる。
安藤が杉下へプロポーズしようとしている事を知っており、西崎が安藤へ”逃げられなかった”と告げた段階で成瀬は西崎が安藤に会った事を理解している。
安藤が鍵を掛けた理由を語られると計画が存在した事が白日となりその状況では犯行への杉下の関与も当然疑われる。その状況では進展によってどのように転ぶか判らない。成瀬自身は事実を見ていないので、杉下を護れない。であるなら西崎が罪を被る覚悟である以上、西崎の利益に乗る=西崎を切り捨てることが杉下を護ることになる。よって安藤の外鍵を隠蔽する。
杉下の行動原理・利益
成瀬のさざなみ放火事件の蒸し返しを防ぐ事。
安藤が西崎も含め三人で会っていた事を知っている。(ケーキを見られた)
成瀬が部屋にいる際電話もぶち切りした。
そして西崎が安藤と事件前に会っている事もわかった。
安藤に鍵を掛けた理由を語られると、偶然であったとの偽証が通らなくなる。
偶然でない=計画があった=自分と成瀬の関係を詮索される=成瀬のさざなみ放火事件が蒸し返される。
これは杉下にとっては避けなければならない事態。そのために杉下は成瀬をかばったのだから。だから安藤の外鍵を隠蔽する。
16/01/18 追記
安藤の隠蔽意図を修正します。
安藤が口を噤んだのは杉下を殺害の嫌疑から除外する意図です。その意味で成瀬と同じ、としてよい。これはいかにも自己の保身から、と見える裏に隠された安藤の行動意図ですね。安藤は真相が奈央子による心中であり、自分が喋ると杉下に嫌疑がかかる事に気づいていたんです。
杉下の行動意図は成瀬の保護ですが、その理由はさざなみの蒸し返しだけでは無いですね。作戦の参加者として彼自身が逮捕・起訴の対象にもなります。
トリックの場所
『Nのために 論考』
安藤の外鍵の隠蔽行動は杉下、成瀬、西崎、安藤四人による取引が暗黙的に成立したからです。
このドラマで使われたトリックについて書きます。
このドラマをご覧になった方の内、トリックが挿入されているということに気づかれた方はどれだけいらっしゃるでしょうか。殆どの方がトリックが挿入されていたという事自体に気づかれていないのではないでしょうか。
しかしこのドラマがミステリーである以上、トリックは存在しているし、事実挿入されていました。
それは何か。何処に挿入されていたのか。
それは安藤が外鍵を掛けた事の、4人による捜査機関に対する隠蔽行為です。これがトリックです。
この部分、杉下が安藤を庇う為に成瀬にも口止めした、と思われている方が殆どの筈です。
オフィシャルサイトでも安藤派は勿論、中間派、成瀬派もこの部分の杉下の行動は安藤を庇うのが意図、ということで一致していました。
杉下は野口との将棋において自分の手で安藤の人事が決まるという状況に追い込まれ、安藤の僻地行きの阻止行動を取ります。野口に懇願し、それがダメだとなったら西崎による奈央子救出作戦を野口にバラし徴発した。野口に自分へ手を挙げさせ、警察沙汰にする為です。そして悲劇が発生し、安藤を庇う為に外鍵の隠蔽を計った。
これが一般的な理解であると思います。確かにこう書くと杉下の行動は一貫して安藤を庇う為の行動と見える。
製作者はトリックを何処に挿入するのか?
殆どの人間が、疑問に思わず、しかし論理的必然性を持ち得ない場所。
状況証拠は一杯ある、でも良く考えると論理的な必然性は成立せず、あまつさえそれを前提とせずとも同じ行動を起こし得る場所。
状況証拠は一杯ある、でも良く考えると論理的な必然性は成立せず、あまつさえそれを前提とせずとも同じ行動を起こし得る場所。
確かに野口に対する行動は安藤の僻地行き阻止が目的です。
ですが事件以降の行動は安藤の保護ではありません。行動対象が野口から捜査機関に変わっているのですから、杉下の行動原理も変わっていると考えるとべきなのです。
四人にそれぞれ個別の行動原理が存在し、それぞれ個別の利益が存在していた。そのそれぞれの利益を達成する条件が安藤の外鍵を捜査機関に隠蔽する事だったのです。
それを理解するには四人の行動原理、それぞれの利益がなんであったのか、を理解する必要があります。それは明日以降詳述する事にします。
なお、ここで視聴者は製作者のミスリードの狙いにまんまとはまったわけですが、ここで威力を発揮したのが、昨日ミステリーとしての仕掛けとして書いた『一番大切な人の事だけ考えた』というミスリードの誘導です。
杉下の野口に対する安藤の僻地行き阻止行動も、作品全体としてみると謎解きの一部なんですが、それは後日触れる事にします。
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