2015年8月31日月曜日

『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座 その5

つまりどういう事かと言えば、安藤に一切触れずに済む偽証を杉下が成瀬の指示で受け入れたという事は、杉下は安藤の保護が目的で偽証を受け入れたのではない、安藤以外の誰かを保護対象として偽証を受け入れた、という意味なんです。

そしてそれはだれか?と言えば、それは成瀬です。
杉下のN=成瀬、その人です。

なぜ成瀬と言えるのか?これには直接的証拠があります。
成瀬の入室前、西崎は杉下に対して『罪の共有』という名の偽証要求をしていますが杉下は拒否しています。
しかし成瀬の、西崎との共謀による『それでいいね』という偽証指示は受け入れた。
どちらの要求・指示によっても、偽証内容に差はない。
つまり、西崎を保護する(奈央子を庇って西崎自身が犯人になるという西崎の意思の実現)目的では杉下は偽証を受け入れる事は出来無いが、後に状況に加わった成瀬を保護する(杉下との関係性からさざなみ放火事件を蒸し返される事を防ぐ)目的であれば偽証を受け入れる事が出来たんです。

ですから杉下のN=成瀬なのです。

それではなぜ安藤の外鍵の隠蔽が行われたのでしょう?
これは中の三人(西崎、杉下、成瀬)と安藤との間で暗黙のゲームが成立したからです。

中の三人に取って、安藤が鍵をかけた事が捜査機関に対して知られるのは致命的です。西崎に会った事、西崎が成瀬について言及した事、三人が杉下の部屋で会っていたことが全て明らかとなり、偽証の根幹がくつがえってしまうのです。
ですので、三人には安藤に喋って欲しくない、だから『こっちは黙っててやるから、そっちも黙っていろ』。それが西崎の安藤への『逃げられなかった』の発言の意図です。

安藤は安藤で、自身の行為が野口夫妻の死亡のきっかけとなった自覚がある。出来る事なら自らの行為は捜査機関に知られたくない。だから自分からは鍵について触れない。

こうして安藤の外鍵が隠蔽されたのです。ですから中の三人にとっては、安藤の外鍵の隠蔽はあくまで偽証を通す為の手段であり、安藤の保護が目的ではない。杉下のN=安藤とはなり得ないのです。

続く…

追記
実は成瀬と安藤については、正確にはもう少し別の意味が加わるのですが、議論が複雑になるので省略します。すでに投稿した記事がありますので、そちらをご参照ください。

2015年8月30日日曜日

『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座 その4

それでは具体的に見ていきましょう。

奈央子の自殺以降の経過を記します。
1.奈央子自殺
2.西崎の杉下に対する『罪の共有』の要求と杉下の拒否
3.成瀬入室
4.西崎、成瀬の共謀→杉下の偽証受け入れ
5.成瀬、警察へ通報
5.安藤入室
6.安藤の『おれのせいだ』
7.警察着
8.杉下の成瀬への外鍵隠蔽要求、安藤退出、成瀬、杉下の手繋ぎ

杉下のNを判断するには、偽証の構造と杉下が偽証を受け入れたタイミング、そしてその偽証を受け入れた杉下の動機を読み解く必要があります。

まず偽証の構造の分析から始めます。
・西崎単独犯
・西崎の単独犯とするには、作戦の存在を隠蔽する
・作戦の存在を隠蔽する目的で、三人の関係性は希薄であり、偶然現場に居合わせた事にする
・その偶然性を担保するには、外鍵の隠蔽が必要

上の三つ(西崎単独犯、作戦の隠蔽、偶然の主張)は、成瀬と西崎が合意し、杉下がそれを受け入れました。
最後の外鍵の隠蔽は3人の間での合意は無く、杉下が成瀬へ依頼しています。

実は偽証の構造のうち、核心は上の三つ(西崎単独犯、作戦の隠蔽、偶然の主張)であり、仮に安藤が外鍵を掛けていなくても、同じ事を主張したはずの事項なのです。
つまり、最後の外鍵の隠蔽は、安藤が外鍵を掛けた為に、偽証の核心部分を担保する必要から追加的に生じた偽証です。

それではなぜ安藤の外鍵の隠蔽が必要になったかと言えば、安藤が偽証の核心部分をひっくり返す事が可能な存在であるからなんです。

続く…

2015年8月29日土曜日

『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座 その3

先ず一つ言葉の定義について明確にさせて頂きたいと思います。ここで論じる『杉下のN』とは、スカイローズガーデン事件の処理の際、杉下が誰の事を大事として行動したか、とします。より具体的には奈央子の自殺以降、杉下がその人物を護るために行動、選択をした対象者とします。つまり杉下が『一番大切な人の事だけ考えた』相手です。

なぜこのような形で時間軸上のある点以降に限定するか、については実はそれ自体がトリックに関係するからです。ですので本来であれば、このようなテクニックを用いる事自体がトリック破りのための方法論なので、謎解きの一部に含まれるのですが、これを予め提示した上で先を進めないと、話が正確に伝わらない可能性が高いため、便宜上先に提示させて頂きました。

もう一点はここで分析、解説させていただく事項に関しては、『杉下の意図』がその対象である、という事も併せて先に断っておきます。
この点についても、上記の時間軸に関する説明と同じです。これから進める論中、『〜のために』という表現が頻出する事になりますが、その意味を取り違えるとこれも話が正確に伝わらない、あまつさえ、全く意味が逆になる事が起こるので、先に明確にさせて頂きます。

実を言うと、上記二点を明確に意識する、使い分ける事に気付く事がこの『杉下のN』分析上の方法論として必要不可欠で、これを取り違えるとあらぬ方向に論が進んでしまいます。その意味で製作側のミスリードのテクニックのネタばらしであり、これに気付く事自体がここの謎解きの楽しみの一つではあるのですが、それでは解説にならないので、皆さんの楽しみを幾つか減じますが、その点は了承願います。

それでは明日以降、具体的に話を進めていきましょう

続く…

2015年8月28日金曜日

『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座 その2

この二派の主張は真っ向から対立しており、相容れないもののように見える。
また俳優などのインタビュー記事などでも“視聴者に解釈を委ねる”的な情報も流れており、さもその二派両方の解釈はそれはそれで成立するんだ、といった雰囲気が醸成されていた。

しかし、よく両派の論を見比べると、一致点も存在している。
それは『スカイローズガーデンでは杉下は自らの意思で安藤を護った』、つまり『杉下のN=安藤』と安藤派だけでなく、成瀬派もこの点について認めているんです。

これは奇妙な現象です。

杉下のNが明かされていないにも関わらず、その意見を異にする二つの系統双方が、『杉下のN=安藤』との一致を見ている。ドラマの謎とされている部分について見解が一致しているにも関わらず、その他の部分の解釈が真っ向から対立している。

なぜこのような事象が発生するのか?
それは、この『杉下のN=安藤』という、ドラマを見た殆どの方が一致している正にこの見解が間違っているからです。

『杉下のN=安藤』はトリックです。その詳細は次回以降詳述させてもらいます。
そして、この『杉下のN=安藤』説を脱却出来たとき、このドラマの本当の面白さが目の前に広がります。それはこのトリック破りの何倍もの面白さです。皆さんにぜひその世界を知って頂きたい。それがこの講座の本意です。

今は、ここから先の議論で必要な心構えだけ述べさせてもらいます。
一つ、キャラクターへの思い入れは捨てる。
一つ、全ての描写へ懐疑の眼を向ける
一つ、このドラマがミステリーである事を認める
一つ、ミステリーにおいては論理的可能性は必然である事を受入れる

続く…

2015年8月27日木曜日

『杉下のN=成瀬』説普及短期集中講座

このドラマで一番解りやすく且つ一番多くの方が解消できていないギャップがスカイローズガーデンで『杉下のN=安藤』に見えるにも関わらず、ラストシーンで杉下は成瀬の元で幸せを得た描写です。
他のメンバー、成瀬、西崎、安藤がそれぞれ自身のNが誰であったかを高野に明かしているにも関わらず、杉下のNだけは最後まで明かされることなくドラマは終了してしまいました。

このギャップを解消するため、番組終了直後からさまざまな解釈が展開されました。それは成瀬を中心に解釈する系譜(いわゆる成瀬派)と安藤を中心とする系譜(いわゆる安藤派)の2系統に大別されます。

成瀬派の論旨
・島時代を含め、全編で杉下の成瀬への想いが描写されている。だからラストで杉下が成瀬の元に還るのは当然。
・スカイローズガーデンでは杉下は安藤を護った(杉下のN=安藤)
・杉下が安藤を護ったのは、安藤が杉下の上昇志向の象徴的存在であり、彼の将来がつぶされることは何としても避けたかった。また生活能力に若干の問題(のこぎりをろくに使えない)のある安藤を長女気質でまもった。

安藤派の論旨
・東京編での杉下の恋愛感情は安藤にあった。
・だからスカイローズガーデンでは安藤を護った(杉下のN=安藤)
・成瀬の元に還ったのは杉下が病気となり、安藤の将来への邪魔になるのを嫌がったから。安藤を諦め、それでも受入れてくれる幼馴染の元へ行くのは、現実的な女性の選択。
・原作者自身が『紆余曲折を経て主人公が両思いになる物語を自分が書く意味がない』と言っている。成瀬派の論旨は原作者が書かない、と言っている事そのもの

いわゆる中間派、と呼ばれる系統も存在しますが、これは上記二派のハイブリッド論ですので、この講座では特に扱いません。

続く…

2015年8月24日月曜日

なぜ製作者は杉下を不治の病に設定したのか?

これは、naoさんから頂いた宿題です。
ここまで行くと、謎解きというより製作者の意図の推測の問題となり、検証のしようもないのですが、ある種の想像は可能ですので、それをしてみます。

私はこの物語はキルケゴールの実在主義哲学がモチーフとしているととっています。
キルケゴールの思想上の特徴は
1.人の有限な時間性
2.主体的真理の追究及び実践
3.絶望とキリストによる魂の救済
です

簡単にいえば、人は死に向かって生きている存在であり、時間は有限である。その有限な時間をどう使うか、その選択は実在に委ねられている。実在にとって本当に何が大事であるかは、個人的なもの(主体的真理)。人はその為に生きようとするが、不完全な存在である人間は完全にはなり得ず、それゆえ絶望する。しかしその絶望でさえ神の前では罪であり、ひたすらに神の奇跡を希求するとき、神は救済に現れ、至福に至る…

つまり、神の救済に至るには、自らの時間が限られたものであるという主体的な認識が不可欠なのです。

この自らの時間が限られたものであるとという主体的な認識が一番伝わりやすい方法が、病気による余命宣告という形だった。その為に製作者は杉下を不治の病に設定した、そう理解しています。

キルケゴールの実在主義はキリスト教的有神論である為、一般的なドラマでそれをそのまま出すのは問題があるでしょう。ですのでその役割を担ったのが成瀬でした。ドラマの中で成瀬は杉下にとって現人神です。神であり且つ杉下の主体的真理=愛の対象として描かれていましたね。ま、多分に杉下の妄想癖が生み出した面もあるのですが。

ちなみにですが、キルケゴールという人物もレギーネ・オルセンという女性に対して強烈な歪みを抱えた人物です。あまつさえ彼の著作の多くが、実はこの女性を真のキリスト者(キリスト教の実践者)へと教化する意図で書かれたもの、と言われています。
また、自分が早くに死ぬ事になる、という強烈な自覚(思い込み)もあったようです。
とにかくその著作は難解で、真に伝えたい事を隠蔽して読者を騙しこむ、という表現手法を多用したそうです。

参照
作品の思想的バックボーン 再考
作品の思想的バックボーン 再考 その二
エゴと『あれか、これか』
杉下は成瀬の何に〝悪魔的絶望〟を抜け出す光を見たのか
魂の解放
崩れ落ちる橋 への二人の答え
キルケゴールの思想に対する証左
私の『Nのために』の解釈
製作者の意図、目標

2015年8月23日日曜日

成瀬が安藤にいった 『杉下があの時考えていたのは… 』の意図 その四

続き…

そしてさらには、成瀬にはいずれ杉下は安藤を赦すだろう、という予測が出来たんです。それは杉下が成瀬のプロポーズを留保した言葉『甘えられん』です。この言葉は、留保する理由が自分の中にある時にしか使え無い言葉です。つまり成瀬からの見た時、杉下がスカイローズガーデンについてのわだかまりが杉下自身の中にある感情であり、他との関係性に依存し無いものである事が分かる。だから成瀬には杉下がいずれ安藤を赦すと。

以上より纏めると、成瀬が安藤に『杉下があの時考えていたのは…』と言った意図は以下の通りとなります。

杉下の赦しを得たい安藤を慮って、いずれ杉下が安藤の事を赦す筈であるから、今自ら杉下を吹っ切る必要はない、と安藤に伝える為。

桃さんとMacさん、ありがとうございます。
お二人がいなければ、この成瀬と安藤の会話の意味が迷宮入りしてしまう処だったんですが、これで解決出来ました。貴重なサジェスチョン、感謝です。

参照
やっぱり解けない安藤と成瀬の会話の謎
安藤と成瀬があったシーンの評価
この作品のテーマ
『杉下希美を愛してやまない人祭』開催のお知らせ(桃さんコメント)
事件に対する成瀬の認識の到達度の検証
安藤が真に求めていたもの
成瀬は安藤が外鍵をかけた事を捜査機関に喋らない事が判っていた
安藤のNは杉下と言っていいのか? その二
杉下の『成瀬くん、ごめん』と『甘えられん』

2015年8月22日土曜日

成瀬が安藤にいった 『杉下があの時考えていたのは… 』の意図 その三

続き…

おそらく安藤としては、杉下に何度も会うが、事件の事は一言も語らない。プロポーズをしてまで聞こうとしているのに杉下は一向に心を開かない。それは自分の行いが、杉下とその究極の愛の相手である成瀬との関係までもぶち壊してしまったから。成瀬からの赦しを得られない限り杉下が自分を赦す事は無い、と判断したものと思われます。
ですので、成瀬から何も聴けない=成瀬から赦されない=杉下からも赦されない→杉下を吹っ切ろう、という安藤の成瀬への発言になるんですね。

で、漸く本論に入れる訳ですが、安藤の発言で成瀬には安藤の意図と置かれた状況が理解出来た。つまり安藤は杉下の赦しが得たい、そのためには自分が条件になる、そして自分が赦さなければ安藤は失意の内杉下からの赦しを得る事を諦める、という事です。

ここで成瀬という人物の性根ともいうべき性格が出た。相手にそっと寄り添う優しさです。
成瀬としても杉下を窮地に陥れた安藤は嫌悪の対象であった。しかし事件は既に過去のものであり、いつまでもそれを引きずっていても過去が変わる訳では無い。それに成瀬としても事件処理の際に安藤が独自の判断で杉下を擁護するために、一切の事に口を噤む事がわかっていたし、安藤は実際にそれをやった。成瀬と安藤の間ではある種の共闘関係が出来ていた。そこに想いを巡らせたんです。彼にも救われるべき部分がある、と。

ここで自分が杉下に赦された事が成瀬の心理に効いてきます。
成瀬にしたって、さざなみの際にずいぶんな事を杉下にしたという自覚がある。しかし杉下は自分を許してくれた。そうであるなら、自分も安藤を赦すべきだ、と考えたと思われます。

続く…

2015年8月21日金曜日

成瀬が安藤にいった 『杉下があの時考えていたのは… 』の意図 その二

続き…

そして残るは冒頭の成瀬の安藤に対する、成瀬の発言意図の推理です。

ここで今一度立ち返りたいのが、なぜ安藤が成瀬に会おう、と考えたのか、その意図です。
安藤は成瀬の発言の前にこう言っています。

安藤『十年たって今更だけど、一度会っておきたかった』
成瀬『話せる事は何も』
安藤『君から何も聞けなければ事件の事は吹っ切ろうと思っていた。時間を取らせて悪かったね』

安藤は成瀬に事件の真相を聴こうとやってきたんですね。でもその実真の目的は成瀬に赦しを請う事だった。真相を教えて貰う前提には相手から赦される、という事が必要なんです。だから安藤は自らの事件時の行為を赦して貰うために成瀬を訪れた。

で、実は安藤としてはもう一つ意図があったんです。
『成瀬から何も聞けなければ、事件の事は吹っ切ろう』

これ、事件を吹っ切る、と言っていますが、実は事件=杉下なんです。つまり杉下の事を吹っ切ろう、という意味なんです。

成瀬にとっての杉下がさざなみを抜きに語れないのと同様に安藤にとっては杉下との関係をスカイローズガーデンを抜きには語れない。それなのに事件の事を吹っ切るという事は杉下の事を吹っ切ると同義なんです。

続く…

2015年8月20日木曜日

成瀬が安藤にいった 『杉下があの時考えていたのは… 』の意図

成瀬が安藤にいった『杉下があの時考えていたのは安藤さんの事だと思います。あなたを護ろうとしていました』の発言意図です。
これがこのシーンで最後まで解けていない謎です。

成瀬の上記の発言の出処はわかっています。
成瀬は杉下が安藤の事で野口から追い込まれた結果として、野口に計画をバラした事、そして、それが杉下の勘違いによる事まで認識していました。

そしてその後の『あなたが杉下の傍に居てくれてよかった』の発言が次の課題で、これが解せなかったんですが、桃さんとMacさんのご指摘から、その発言の出処と成瀬の意図が整理出来ました。
これについては以下の通りです。

成瀬は杉下の部屋を訪れた最初の日、『杉下も変わらんよ、むしろ今のほうが…』と発言。
西崎が乱入し、この後の言葉は不明であるが、『むしろ今のほうが、明るくて綺麗、魅力的』といったニュアンスの言葉と推測されます。
成瀬としては、なぜ杉下がそのように変化したかと考えると、プロポーズする意向をもっている事をしった安藤の影響と思われた。杉下がそれを受けるかは不明であるが、少なくとも安藤がそのような意向をもつほどの関係性の中での変化と成瀬は理解していた。

しかし事件において安藤は自身のエゴ(杉下が自分と成瀬のどちらを頼るかを知りたい)から外鍵を掛けるという危険な行為を行ってしまい、成瀬も安藤に対して嫌悪感を持った。

10年が経過し、さざなみの真実が明らかとなり、父親を赦す事が出来た事、そして杉下を利用した事を杉下に赦された。これが契機となり成瀬も安藤を赦す事が出来、杉下の変化を導いた安藤に対して、『あなたがいてくれてよかった』と発言した…

大分すっきり致しました。この部分はこれでOKだと思います。ここが一番ハードルが高そうだったので難儀していたんですがスッと入ってくる論が成立しました。

続く…

2015年8月19日水曜日

安藤が真に求めていたもの

安藤は高野に情報提供しつつ、事件の真相を知りたいと杉下、西崎、成瀬と接触しました。
しかし、安藤が本当に欲していたのは事件の真相だったのか?と考えると、疑問に思えてきました。

そのきっかけは、この作品のテーマに関する考察です。
この作品の真のテーマが「罪と赦し」である、そして現代編の9、10話で一環して描かれていたのが、その「赦し」の部分である、という事が判ったんです。

そうした時に、実は安藤は”真実を知りたい”と言いつつ、本当に求めていたのは、自分が犯した『外鍵を掛ける』行為=罪に対する、西崎、杉下、成瀬からの赦しだったんだ、という事に思い至りました。

つまり、関係者から安藤が真実を聴くことが出来るのは、安藤がその真実を話してくれる人物から『赦される』事が前提になるからです。
つまりは、安藤は『赦されざる行為』をやったという自覚が有り、みんなから『嫌われた』という自覚を持っており、みんなから『赦されたい』と思っていた。

杉下を事件後訪問したにもかかわらず、会うことを拒絶された。
裁判を支援したにもかかわらず西崎には面会を拒絶され、野ばら荘を訪れた際も、『関わる気は無い』と突き放された

このような自覚があるからこそ、杉下と会うために、高野が訪れた事を伝え、杉下が自分に会わざるを得ない口実としたんです。

そう考えると安藤がプロポーズした杉下から返された指輪を強引に杉下に引き取らせた行為にも、新たな意味が見えてきます。
安藤にとっては杉下のプロポーズへの断り=杉下から赦されない、であり指輪をそのまま受け取るのは杉下から『赦されない』事を自ら受け入れる事になる。それは彼には出来なかったんです。どうしても杉下からの『赦し』を得たい。その為には杉下にプロポーズを受ける意図は無くとも、一先ず指輪を預けて、その次がある形をどうしても取りたかったんだと思います。

ですので、安藤にとって、西崎から串若丸に呼び出されたのは、口でこそ『関わる気は無い、って言ってなかった?』と言っていますが、彼には非常に嬉しかった事なんです。結局は事件の真相は教えては貰っていないけれども、西崎から呼び出された=西崎から赦された、と彼は理解したはずです。

成瀬にあった理由も同じです。なんら接点がなかった成瀬ではあるけれども、事件の真実を知りたい、という事を口実に成瀬からの赦しを得たかった。

だから安藤にとっては、事件の真実を知る、というのは口実で、現代編での彼の行動は三人からの『赦しを得る』為の行動だったんです。

参照
この作品のテーマ
安藤が真相を誰からも教えてもらえない理由
杉下はなぜ事件後、安藤の訪問を拒絶したのか?
事件後の四人の接触関係の整理
杉下が安藤に事件の真相を語らないのは愛されていたから?

2015年8月16日日曜日

成瀬は杉下のN=安藤と誤解した? その3

お前稿から…

その後安藤が入室し、西崎の『逃げられなかった』と安藤自身の『俺のせいだ』で成瀬には安藤が外鍵を掛けた動機と外鍵の捜査機関への隠蔽が必要である事を認識とした。行為およびその動機から、安藤が計画性の否定と偶然性の主張をひっくり返す事が出来る証拠を持っている、という事が判るんです。

この成瀬の認識の状況下で杉下が安藤の外鍵の隠蔽を依頼してきた。成瀬からは杉下が成瀬と同じく偽証を通すためには安藤の外鍵の隠蔽が必要事項である事、そして自分が知り得ない、安藤が偽証をひっくり返し得る証拠を持っている事を具体的に杉下が知っており、かつ外鍵の取り扱いについては三人の間でも一切話題に出ていないから、それを杉下は自分に伝えたんだ、と取った。
そうであるなら、成瀬から見たとき、杉下の行動は一貫して西崎の為の行動であり、そこに不整合はない。
杉下の作戦への協力に関する理由以降、成瀬には杉下の行動、判断は全ての西崎のため、と取った方が合理的に説明がつく。
であるならは、成瀬は杉下のN=安藤、とは取らなかった、とした方が自然な理解に思えます。

もう一つ論点が有ります。
成瀬には、外鍵の隠蔽は西崎と決めた事件処理方針を崩壊させない為の必要事項です。
もし仮に杉下のN=安藤、と成瀬が誤解した、とするなら、事件処理方針に同意した杉下は、成瀬が指示した時点で安藤を保護する目的で事件処理方針を受け入れた事になる。
しかし事件処理方針そのものは外鍵が掛かっていたかどうかに関係の無い事項です。
仮に鍵が掛かっていなかったとしても、同じ方針が取られるはずなんです。
そうであるなら、杉下が成瀬の指示した時点で、安藤を擁護する意図で偽証を受けれた、とは成瀬には取れない。つまり成瀬が杉下のN=安藤と誤解する、という事は起こらない、という事になるなります。

それに、最後に残るのは成瀬と杉下の手繋ぎです。この時成瀬が杉下の手を取りました。
もし、本当に成瀬が杉下のN=安藤と誤解したとした場合、成瀬は杉下の手を取れるでしょうか?

自分は杉下の報われる事のない西崎への感情の為に杉下に協力する事にした。
安藤の鍵のせいで野口夫婦は心中に至り、西崎は奈央子を慮って自分が犯人になろうとしている。
自分も杉下を守る為に危ない橋を渡った。その為に西崎も切り捨てた。
それなのに杉下は自らのエゴのみで鍵を掛け、事件を引き寄せてしまった安藤を守ろうとしている。その目的の為杉下は西崎も切った。

成瀬には杉下への評価が上記のものになる。
私には成瀬が杉下の手を取れないと思うんですね。人間的な感情の問題です。

おそらくこの部分の議論で一番の肝は、成瀬が杉下が作戦に協力する理由をどう取っていたか、に対する我々の理解と、成瀬が事件についての全真相への理解度への我々の理解だと思います。

成瀬は杉下の作戦への協力理由を西崎への愛、としかつ事件の全真相(杉下が偽証を受け入れた理由以外)を完全に把握している限りにおいて、成瀬は杉下のN=安藤とは取っていない、としてよいでしょう。

ですので、成瀬が安藤に十年後に語った言葉、『あの日杉下が考えていたのは安藤さんの事だと思います。あなたを護ろうとしていました』は、杉下が野口から安藤の事で追い込まれて計画をバラしてしまった事を理解していた成瀬が、その部分について語ったものであり、杉下のN=安藤、と取っていたという証拠にはならないんです。

桃さんとOAさん。お二人に感謝します。
お二人のご意見とはそぐわない、論考的結論となりました。しかし断片としては考えていたものの、この問題に対する、時間軸を正確に再現しながらの成瀬の認識の経過を精緻に検証していなかったので、ここで改めてその機会を与えていただき、ありがとう御座いました。

参照
N作戦2における杉下の魂胆
成瀬が『N作戦2』に協力することにした理由
成瀬が事件の時唯一認識出来なかった事
成瀬は作戦終了後、杉下との関係をどうしようとしていたのか
事件に対する成瀬の認識の到達度の検証
成瀬は杉下が計画をバラしたのを誤解が原因だと気付いていた

16/01/31 追記
これは今では成瀬は杉下のN=安藤と誤解した、と見解を修正しました。
正確に記すなら、まず西崎という認識があり、その上で安藤?という誤解をした、という見立てです。
成瀬の面白い特徴として、杉下の、成瀬自身に向けられた行動の意図を読み違える、というものがあります。さざなみでの奨学金についての杉下の感情を成瀬が読み違えていた。これと同じ事がスカイローズガーデンでも起きた。
具体的には、杉下の取った安藤入室阻止行動と外鍵の隠蔽依頼です。
入室阻止行動は、杉下が都合の悪い事を彼女の心理上、『外』にいる人物に対して隠す特性の表れで、安藤は『外』成瀬は『内』。
そして外鍵の隠蔽依頼は成瀬からすれば言わずもがなの措置であり、別に打ち合わせも必要のない事項だったにも関わらず、杉下が依頼してきた事から、成瀬としては『杉下はそれほどまで安藤を…』と取ってしまった。杉下からすれば成瀬を守りたい一心で安藤が偽証の根幹をひっくり返しうる存在であるがゆえに、隠蔽の必要がある事を成瀬に伝えたかったのに…

その結果が、成瀬の杉下への『怒りの訣別宣言』(=血染めの手繋ぎ)というのが現在の解釈です。

2015年8月15日土曜日

成瀬は杉下のN=安藤と誤解した? その2

前稿から…

これは杉下のN=安藤説と根拠とするシーンは同じです。しかし問題は視聴者がどうとるか、ではなく成瀬がどうとるか?という視点の違いです。

まづは一つ目。杉下が成瀬に行った外鍵の隠蔽依頼についてです。
この場面だけみれば、確かに成瀬には杉下のN=安藤と誤解した、と取れるのはたしかです。
しかしここに到るまでのプロセスを詳細に検討する必要があります。

まず、成瀬は杉下が西崎に協力するのは、杉下の西崎への恋愛感情の故、という認識がある。
確かに途中、安藤が杉下にプロポーズする意向である、との情報を得る。
成瀬が動揺したのは、自分が安藤と同じ立場(プロポーズする)に立つ必要性が生じた事への動揺であり、杉下が西崎に協力する理由の認識自体には揺らぎはない。なぜなら島時代を知る成瀬にとって『人妻略奪』行為が杉下の中でどれ程の重みを持つものであるかがわかるからです。

そして事件が発生し、成瀬が状況を把握する。事件の様相を完璧に理解した成瀬は、西崎との間で事件の処理方針を『共謀』して建て、杉下に指示。杉下はそれを受け入れた。
事件の処理方針は
1.西崎単独犯の主張
2.計画性の否定
3.偶然性の主張
以下の三点です。この時点では成瀬には安藤に関する情報は一切無い。安藤が既にビル内いる、という事さえ知らないのです。

この段階において、成瀬には杉下は西崎のために偽証を受け入れたように見える。何故なら杉下の愛の相手である西崎が奈央子の罪を引き受けようとしている、それを支援するのが、作戦に協力した杉下の動機とも符合する、と成瀬からは見える。

続く…

2015年8月14日金曜日

成瀬は杉下のN=安藤と誤解した?

成瀬は杉下のN=安藤と誤解した、と取られている方が多いです。
私は成瀬は杉下のN=西崎と理解していた、と判断していました。

なぜスカイローズガーデン事件が起きたのか?という物語の根幹を考えていた過程で、杉下の事件当時における究極の愛の相手が西崎である、と気付きました。
(こんな物語の根幹に関わる部分さえ、謎解きの対象である事さえこの物語は隠蔽してしまいます)
そこから成瀬がなぜ作戦に協力するかを考えた際、西崎の『人妻略奪』作戦に杉下が協力する理由を考えた成瀬は、杉下の西崎への恋愛感情に気付いた、だから事件処理の際にも成瀬は杉下のN=西崎と判断していた、と理解していたんです。

今でもこの基本線は間違っていない、と思っていますが、事件の経過の各状況との対応を緻密に積み上げたわけではない為、“成瀬は杉下のN=安藤と誤解した”説に明確な抗弁が出来ません。

そこで、今日は改めて事件の伸展にそって各段階での成瀬の認識を追ってみたいと思います。
なお、この検討のきっかけを与えてくれたのは、桃さんとOAさんです。お二人に感謝!
どんな結果になるか、お楽しみに!

なお、検証のスタートは成瀬が作戦に参加する事を決めた後以降とします。
これより前からスタートすると、それは別の議論になるためです。

参加表明時点での成瀬の杉下の感情の判断
杉下は西崎の奈央子への思いを遂げさせるために『人妻略奪』作戦に協力する。それは杉下に西崎への恋愛感情がある為。そして西崎はその杉下の自分への感情を知らない。

杉下のN=安藤、と成瀬が誤解した、とする根拠としうる描写は以下の2点です。
杉下が成瀬に外鍵の隠蔽を依頼した事
成瀬が安藤に言った言葉。『あの日杉下が考えていたのは安藤さんの事だと思います。あなたを護ろうとしていました』

続く…

2015年8月13日木曜日

西崎が出所後真っ先に成瀬に連絡した理由

西崎は出所後、真っ先に成瀬の携帯に電話をしています。
安藤でも無く、杉下でも無く。
西崎はなぜ事件の関係者の中、自分と一番関係性の薄い成瀬に電話したのか?その会話の内容は何だったのでしょう。

まず西崎の服役期間中、4人の接触関係で一番密であったのが実は成瀬と西崎との間です。成瀬は府中に何度も差し入れをしており、杉下が知らない成瀬の変更後の携帯番号までは知っていました。西崎の服役期間中、相応の情報交換がされている。

この情報交換で西崎は杉下を託した成瀬が、杉下との関係を一切断っている、という事も知っていた筈です。

西崎の関心は杉下です。杉下の自分への感情の可能性についてさえ理解していた可能性がある。そういった杉下に対する申し訳ない気持ちで一杯だった。

西崎は杉下の連絡先を知らない。だから直ぐ西崎は成瀬に連絡をし、やはり成瀬が杉下との接触を絶ち続けている事を確認した。
そして杉下の様子を興信所を使って調べた。

これが西崎が成瀬に真っ先に接触した理由です。

なぜ安藤でないのか?と思われる方もいるでしょうが、安藤は西崎と杉下から嫌われていた。だから接触したくなかったんです。

参照
事件後の四人の接触関係の整理
西崎は成瀬と杉下のその後を知っていた
西崎はひょっとしたら自分に対する杉下の気持ちに気づいていた?
安藤が真相を誰からも教えてもらえない理由

Cafe for.N

Cafe for.N Grand Open


ENTRANCE

2015年8月11日火曜日

Nのために と『コスモスに君と』

つらつらと『Nのために』を考えてここまで来たのですが、ここのところ、心を捉えて離さないあるフレーズがあります。

♫いつくしみ ふと わけあって
♫傷をなめあう 道化芝居

このフレーズ、実はドラマと全く関係ない、あるアニメのものです。

それは『伝説巨人イデオン』(年がバレる〜⁉︎)というサンライズが製作したロボットアニメのエンディングテーマで戸田恵子が歌った『コスモスに君と』という曲の一節です。

話そのものは、星間空間に飛び出した人類が異星人との戦争で、敵味方とも、誰も救われない全滅、という話で、その抗争の中で異星人間の愛が描かれる物語です。
よくもまあ、あの時代にサンライズがターゲットとしては十代前半から半ばを狙ったであろうアニメで、誰も救われない、視聴者の気持ちが落ち込む事確実な物をつくったな、という作品です。

作品についての紹介はこの辺でやめておきますが、上記のフレーズが、非常に『Nのために』の世界観との親和性を感じるんです。

杉下と成瀬の愛
西崎と奈央子の愛
杉下が西崎に惹かれた心情

妙にフレーズに合致するとおもいませんか?
歪んだ愛情感がダダ漏れじゃないですか。

YouTubeで映像が見れます。

何故杉下は「西崎が野口に殴られ、警察沙汰にする」方法を選択したのか? その2

前項からの続き…

『DVバラし』は野口は激昂というより狼狽するでしょう。
彼の歪みは、自身の不安が暴力という形で奈央子に向いてしまう事であり、且つそれを制御出来ない事だという事を自ら自覚している。そんな自分を他者に知られる事は恐怖であり、隠したい事ではあるけれども、それを知った人間が既に目の前に存在する、となった場合に、果たしてその人間に対して暴力が向くか?と考えると、それでもその人物に対してそれを隠そうとするか、『どうすればいい?』とむしろ救いを求めるのではないかと思います。

そうであれば、いずれも杉下への暴力とはならなかった、と想像されます。

その上で、なぜ杉下が、一度西崎が口にした『西崎が殴られて警察沙汰にする』案を取ったか?です。

これは、はっきりと言ってしまうと『それ以外に思い浮かばなかった』からです。

人間、切羽詰ると思考の幅というものが凄く狭められる、という特徴があります。一歩引いて考えれば、直ぐ傍にあるちょっとした事に気付くのに、その瞬間に落ち込むとどんな人間でもそうなります。
あの局面では杉下は切羽詰まっていました。その状況下で局面を打開する方策を考えても、新しいアイデアなど出てこない。出てきたのは既に一度頭にインプットされていた、『西崎が野口に殴られて、警察沙汰にする』というアイデアのみ。だから杉下はこれに飛びついた。そのために野口に計画をバラす、という行動に出たんです。

この心理は、逆に言えばこうとも言える。
もし、作戦検討段階で、『西崎が野口に殴られて、警察沙汰にする』というアイデアが出ていなければ、杉下には何もアイデアは浮かばず、野口に懇願し続けたであろう。もしそうであれば、野口側がその異常さに気付き、杉下をとりなしたと想像されます。そうであれば事件は発生しなかった、という事です。

参照
みんな『安藤の僻地行き』の意味を取り違えている

2015年8月10日月曜日

何故杉下は「西崎が野口に殴られ、警察沙汰にする」方法を選択したのか?

今日はnaoさんより頂いた疑問について考えます。
naoさんありがとう!

杉下は、安藤の僻地行き阻止行動として、野口を挑発しました。
その方法は奈央子を愛する西崎が奈央子を救出するべく、彼女を迎えに来た、と野口にバラし、野口を挑発。野口に西崎と揉めさせ、警察沙汰とする、というアイデアです。なぜ杉下はこのアイデアを採用してしまったのか?

これは与件として考えた事がありませんでした。

naoさんの指摘です(原文まま)

野口さんを追い詰め、激高させるためには、「奈央子さんをDVしていますよね。ばらしてもいいんですか?」でも「私が野口さんのブレーンをしていたからこそ、安藤に勝ち続けられたんですよね。安藤、気付いていますよ」でも有効だったと思います。
理性を失った野口さんは、恐らく希美ちゃんに危害を加えるか、取引を提示したことでしょう。
「自分が犠牲になって警察沙汰にし、それを誰にも言わずにいる」としたら、それこそ希美ちゃんらしいと思うのですがいかがでしょうか?

まずはnaoさんのお説の有効性を検討してみます。

『将棋のブレーン』については、恐らくこう進展した筈です。
安藤が杉下がブレーンをしていたのを既に知っている、とバラして時、野口は安藤に対する上司としての対面から動揺はするでしょうが、こう応えたと想像されます。

野口『それでも賭けを受けたのは安藤君だよ。彼は負けず嫌いだがこの勝負には必ずしも勝たねばならないとは考えていない。彼はこのプロジェクトの参加を自身のキャリアにおけるチャンスと取っているし、赴任が決まれば君を一緒に連れて行く積りだ』
杉下『どういう意味ですか?』
野口『つまり彼は仕事上のチャンスと人生の伴侶を同時に得ようとしている、と言う事さ』

と進展して、野口が激昂する展開にはなりません。
此処で大事なのは、野口も安藤も『僻地行き』を左遷と思っていない、抜擢人事だという事です。

続く…

2015年8月8日土曜日

成瀬は杉下の救世主

謎解きではないんですが、スカイローズガーデンの際、成瀬が部屋に入って来た時、杉下に成瀬がどう見えていたのか、ちょっと想像しました。

私、ちょっと前にスカイローズガーデンでの密室と島で母親から自室に閉じ込められたシーンは、セットだと気付いたんです。

自室に閉じ込められた際、杉下は泣き腫らした後、進学を諦めかけたその時成瀬のNチケットで、未来への光明を見出し、成瀬が永遠になったんだと思っています。

スカイローズガーデンでは、人が二人も無くなり且つ密室状況へ成瀬が飛び込んできた。杉下は成瀬に『ごめん』と言ってはいますが、その実成瀬が部屋に飛び込み、血に染まったブランケットを自分から引き取った際、杉下には成瀬が救世主に見えたんでは無いでしょうか?

実はずっと杉下は成瀬にある種の神性を感じていたんでは無いか?と思っていたんですが、その自分の感覚の出処が掴めていなかったんです。このシーンだったんだな、と漸く理解出来ました。

みなさんはどうお考えですか?

参照
魂の解放

2015年8月7日金曜日

皆さんからいただいたテーマのまとめ

コメント頂けるようになってから、幾つかテーマ、未解決の問題が浮かび上がってきました。
今日はそれらをリストアップしておきます。個別にはまた後日検討します。

8月3日 naoさん「『杉下希美を愛してやまない人祭』開催のお知らせ」より
『何故杉下は「西崎さんが野口さんに殴られ、警察沙汰にする」方法を選択したのか?』

8月3日 桃さん 、OAさん「『杉下希美を愛してやまない人祭』開催のお知らせ」より
『事件後、成瀬が10年もの間希美の前から姿を消したのは、事件当時の希美のN=安藤、だと誤解していたからではないか』

8月3日 桃さん 「『杉下希美を愛してやまない人祭』開催のお知らせ」より
『成瀬が安藤へ言った、あなたが杉下のそばに… は安藤と杉下の関係性を誤解したからではないか?』

8月3日 OAさん「『杉下希美を愛してやまない人祭』開催のお知らせ」より
1.杉下の西崎への感情は恋愛では無い
2.杉下は成瀬が、杉下が守ろうとしたのは安藤だと誤解している、と思っていた。
3.杉下が事件後安藤との接触を拒絶したのは事件から離れたいため
4.杉下が安藤に真実を話さないのは安藤を傷付けないため

8月7日追記
naoさんから追加の依頼テーマ 本稿コメントより
『製作者はなぜ杉下を不治の病いにしたのか?』

最早謎解きの領域を逸脱している…が、論考的考察を!



この作品のテーマ


実はこの作品のテーマは何だったんだろう?それをずっと考えていたんです。
いろんな処でいろんな意見を見ても、なかなか納得出来るものが無かった。

描かれていたものが何であるかは、わかる。その中で共通に流れるキーワードは何か?

9話及び最終話の現代編の描写を一つ一つ思い出しながら、つらつらと考えていたら、漸く一つのキーワードに辿り着きました。

この作品のテーマは『赦し(ゆるし)』です。

西崎は謝罪に行った実家で父親から『たまには帰ってこい』と赦された。
西崎は安藤を赦す事が出来たから、安藤を『串若丸』へ呼び出した。
自宅に放火した父親を赦す事が出来た成瀬は、杉下にさざなみの真相を話した。
成瀬は父親を護る為に杉下を利用した事に赦しを請うた。
杉下はさざなみで自分を利用した成瀬を赦した
成瀬はスカイローズガーデンで自分を利用した杉下を赦した
杉下は島時代の母親を赦した。
杉下は永く嫌っていた事を母親に赦された。
夏江は嘘をついていた事を高野に赦された。
杉下は赦す事ができた安藤にエールを送った。
杉下は自分自身を赦す事で、魂の解放を得て成瀬の元に還った。

すべてのシーンが、赦しというキーワードで説明できる事に漸く辿り着きました。

『赦し』というキーワードは、杉下の魂の解放過程における母親との再会で重要な事項として認識していたんですが、改めてそれ以外のシーンでも一貫した作品全体を貫くテーマであった事に思い至りました。

よく杉下と母親の再会シーンの評価について、『杉下が自分の気持ちに素直になって』という評価を見るんですが、私はそうは見えないんですね。杉下は相当な覚悟で母親の元に来た。それでも怖くて一度は逃げ出しているんです。
想像になってしまいますが、もしここで母親と相互に赦し合える事が出来なかったら、杉下は成瀬のもとには行けていなかったのでは?と考えています。すべてを赦し、自分を受け入れてくれる成瀬に対し、赦す事が出来ない自分を抱えたまま成瀬のもとには行けない、と考えたからこそ、杉下は母親に会いに来た、と理解しています。

正直、母親とのシーンは長すぎる、と感じていたんですが、作品テーマを代表するシーンとして、やはり重要であったからこそ、その描写に時間を充てたんですね。

参照
杉下が安藤へエールを送る事が出来た心理変化
西崎が安藤に『崩れ落ちそうな橋』の問いをした理由
杉下は成瀬の何に〝悪魔的絶望〟を抜け出す光を見たのか
魂の解放

2015年8月6日木曜日

独白 その二

前項からの続き…

その後、程なくして私は高校で自分が周囲に馴染めない事に気付きました。人間関係が打算と力関係で形成される、という事が観えて、それがどうしようも無く嫌だった。授業も殆ど出なくなった。辞めるすんでのところまで行った。孤独でした。
でも、なんとか持ちこたえる事が出来たのは、自分がその方に抱いていた感情は純粋だったという確信を、『打算と力関係で形成される人間関係』に対するアンチテーゼに建てる事が出来たからです。
そうしてなんとかやり過ごし、進学して狭い田舎とつらい時代から脱出する事が出来た。
その方自身が何かをしてくれたわけでは無い。でもこの時その方は私の中でマリア様になってしまいました。そして歪んでしまったんです。
この経験を私は島時代、成瀬をよすがとしてなんとか島を出た杉下に重ねています。

大学一回生の冬、中学を卒業して四年弱の頃、その方に会いました。その方との関係を再開させたかった。ですがダメでした。四年前には戻れませんでした。既にその方には別の方がいたんです。私は自分の気持ちを伝える事さえ出来ませんでした。
私は苦悶しました。その方の前では泣くまい、と必死に耐えていました。ですが余程酷い顔をしていたんでしょう。その方にとっては怖い経験だったようです。それは最近になってから人を通じて知りました。その方は歪んでしまった私そのものに怖さを観たのかもしれません。
私はその方を見送ってから人目も憚らず泣き崩れました。
その一年半後、地元の成人式で再度その方と顔を合わせましたが、話しかける事さえ出来ませんでした。その前に会った時と同じでした。その方の前では必至に耐え、その後やはり同じように泣き崩れました。それがその方との最後でした。ちなみにキルケゴールの著作と出会ったのもこの時期です。
再開までの期間がほぼ杉下が成瀬と関係を再開させようとした期間と同じでした。
そしてもはやかつての様には戻れない、という現実を目の当たりにした安藤と同じものを感じました。
それは若しかしたら、歪んだ者と、歪んでいない者との断絶だったのかもしれません。

私は伴侶と子供がいます。その方も同じようです。どこにお住まいか知りません。ですが私は未だに奇蹟を信じる、信じたい気持ちを持ち続けています。未だにその方が自分をどう思っていてくれていたのかを知りたい。その方は自分にとっては輝いていた青春の象徴であり、また意気地の無いダメな自分の象徴でもあります。怒りの対象でもあれば、慈しみの対象でもある。未だに昇華でき無い。その方が突然目の前に現れたら、今でもまともで居られる自信も無い。時間では癒される事の無い永遠になってしまいました。
私は成瀬が杉下との永遠を信じていたのと同じものをその方に感じています。そんな奇跡は起き無いと頭では判っているのですが。

このドラマの各キャラクターの経験が、何がしか自分と重なるものを感じた事が、このドラマにハマった理由です。そしてそれは自らが歪んでいる、と自覚しているが故です。

おそらくドラマの謎解きにはまったのは、その方が自分をどう思っていたのかを知りたい、という欲求の代理行為だったのではないかと感じています。

このドラマにはまったのは、おそらく三十代から四十代の方でしょう。そして自分の若かりし日の経験をなにがしかドラマの出来事に重ねている。そして心のどこかで奇蹟を信じたい、そんな願望を持っている人達なのではないでしょうか?

だから、このドラマにハマった人は程度の差はあれ、やはりなにがしか歪んだ人なのだろうと思います。

暴論です。スルーして下さい。

2015年8月4日火曜日

『杉下希美を愛してやまない人祭』会場

本日8月4日は杉下希美の33歳の誕生日です。

杉下希美への溢れる思いを語って頂く場所として、本稿を設けました。

テーマは自由。とにかく杉下希美を愛してやまない人はその思いをコメント下さい。

連投、多投、妄想、短文、考察なんでもOK!です。

相互のやり取りが出来るよう、最低限バンドルネームだけは先頭に付す事をルールとします。
後は仲良く、をモットーに。みんな杉下希美が大好きなんですから。

特に終了は設定しません。8月5日以降もOKです。

多くの方のコメントをお待ちしております!!

追記
もしバンドルネームを書く事に抵抗あるなら、無しでもいいですよ‼️
名前より、気持ちを語っていただくのが大事なので!

追記2
若しかして、携帯端末からだと、コメント欄の入力動作おかしいですかね?
もしそうであれば、他のアプリ(メーラーなど)で文を書いておいてから、コメント欄にコピペで回避出来るかもしれません。

iPad+iOS8.3+chrome40.0で上記になります。私は『iテキスト』というAPPで本文を書いてコピペしています。

追記3
上記の環境でchromeをsafariに変えてやってみたら、safariでは問題なく動作するみたいです。
chromeをお使いの場合safariに替えてやってみるのも手です。