お前稿から…
その後安藤が入室し、西崎の『逃げられなかった』と安藤自身の『俺のせいだ』で成瀬には安藤が外鍵を掛けた動機と外鍵の捜査機関への隠蔽が必要である事を認識とした。行為およびその動機から、安藤が計画性の否定と偶然性の主張をひっくり返す事が出来る証拠を持っている、という事が判るんです。
この成瀬の認識の状況下で杉下が安藤の外鍵の隠蔽を依頼してきた。成瀬からは杉下が成瀬と同じく偽証を通すためには安藤の外鍵の隠蔽が必要事項である事、そして自分が知り得ない、安藤が偽証をひっくり返し得る証拠を持っている事を具体的に杉下が知っており、かつ外鍵の取り扱いについては三人の間でも一切話題に出ていないから、それを杉下は自分に伝えたんだ、と取った。
そうであるなら、成瀬から見たとき、杉下の行動は一貫して西崎の為の行動であり、そこに不整合はない。
杉下の作戦への協力に関する理由以降、成瀬には杉下の行動、判断は全ての西崎のため、と取った方が合理的に説明がつく。
であるならは、成瀬は杉下のN=安藤、とは取らなかった、とした方が自然な理解に思えます。
もう一つ論点が有ります。
成瀬には、外鍵の隠蔽は西崎と決めた事件処理方針を崩壊させない為の必要事項です。
もし仮に杉下のN=安藤、と成瀬が誤解した、とするなら、事件処理方針に同意した杉下は、成瀬が指示した時点で安藤を保護する目的で事件処理方針を受け入れた事になる。
しかし事件処理方針そのものは外鍵が掛かっていたかどうかに関係の無い事項です。
仮に鍵が掛かっていなかったとしても、同じ方針が取られるはずなんです。
そうであるなら、杉下が成瀬の指示した時点で、安藤を擁護する意図で偽証を受けれた、とは成瀬には取れない。つまり成瀬が杉下のN=安藤と誤解する、という事は起こらない、という事になるなります。
それに、最後に残るのは成瀬と杉下の手繋ぎです。この時成瀬が杉下の手を取りました。
もし、本当に成瀬が杉下のN=安藤と誤解したとした場合、成瀬は杉下の手を取れるでしょうか?
自分は杉下の報われる事のない西崎への感情の為に杉下に協力する事にした。
安藤の鍵のせいで野口夫婦は心中に至り、西崎は奈央子を慮って自分が犯人になろうとしている。
自分も杉下を守る為に危ない橋を渡った。その為に西崎も切り捨てた。
それなのに杉下は自らのエゴのみで鍵を掛け、事件を引き寄せてしまった安藤を守ろうとしている。その目的の為杉下は西崎も切った。
成瀬には杉下への評価が上記のものになる。
私には成瀬が杉下の手を取れないと思うんですね。人間的な感情の問題です。
おそらくこの部分の議論で一番の肝は、成瀬が杉下が作戦に協力する理由をどう取っていたか、に対する我々の理解と、成瀬が事件についての全真相への理解度への我々の理解だと思います。
成瀬は杉下の作戦への協力理由を西崎への愛、としかつ事件の全真相(杉下が偽証を受け入れた理由以外)を完全に把握している限りにおいて、成瀬は杉下のN=安藤とは取っていない、としてよいでしょう。
ですので、成瀬が安藤に十年後に語った言葉、『あの日杉下が考えていたのは安藤さんの事だと思います。あなたを護ろうとしていました』は、杉下が野口から安藤の事で追い込まれて計画をバラしてしまった事を理解していた成瀬が、その部分について語ったものであり、杉下のN=安藤、と取っていたという証拠にはならないんです。
桃さんとOAさん。お二人に感謝します。
お二人のご意見とはそぐわない、論考的結論となりました。しかし断片としては考えていたものの、この問題に対する、時間軸を正確に再現しながらの成瀬の認識の経過を精緻に検証していなかったので、ここで改めてその機会を与えていただき、ありがとう御座いました。
参照
N作戦2における杉下の魂胆
成瀬が『N作戦2』に協力することにした理由
成瀬が事件の時唯一認識出来なかった事
成瀬は作戦終了後、杉下との関係をどうしようとしていたのか
事件に対する成瀬の認識の到達度の検証
成瀬は杉下が計画をバラしたのを誤解が原因だと気付いていた
16/01/31 追記
これは今では成瀬は杉下のN=安藤と誤解した、と見解を修正しました。
正確に記すなら、まず西崎という認識があり、その上で安藤?という誤解をした、という見立てです。
成瀬の面白い特徴として、杉下の、成瀬自身に向けられた行動の意図を読み違える、というものがあります。さざなみでの奨学金についての杉下の感情を成瀬が読み違えていた。これと同じ事がスカイローズガーデンでも起きた。
具体的には、杉下の取った安藤入室阻止行動と外鍵の隠蔽依頼です。
入室阻止行動は、杉下が都合の悪い事を彼女の心理上、『外』にいる人物に対して隠す特性の表れで、安藤は『外』成瀬は『内』。
そして外鍵の隠蔽依頼は成瀬からすれば言わずもがなの措置であり、別に打ち合わせも必要のない事項だったにも関わらず、杉下が依頼してきた事から、成瀬としては『杉下はそれほどまで安藤を…』と取ってしまった。杉下からすれば成瀬を守りたい一心で安藤が偽証の根幹をひっくり返しうる存在であるがゆえに、隠蔽の必要がある事を成瀬に伝えたかったのに…
その結果が、成瀬の杉下への『怒りの訣別宣言』(=血染めの手繋ぎ)というのが現在の解釈です。