実はこの作品のテーマは何だったんだろう?それをずっと考えていたんです。
いろんな処でいろんな意見を見ても、なかなか納得出来るものが無かった。
描かれていたものが何であるかは、わかる。その中で共通に流れるキーワードは何か?
9話及び最終話の現代編の描写を一つ一つ思い出しながら、つらつらと考えていたら、漸く一つのキーワードに辿り着きました。
この作品のテーマは『赦し(ゆるし)』です。
西崎は謝罪に行った実家で父親から『たまには帰ってこい』と赦された。
西崎は安藤を赦す事が出来たから、安藤を『串若丸』へ呼び出した。
自宅に放火した父親を赦す事が出来た成瀬は、杉下にさざなみの真相を話した。
成瀬は父親を護る為に杉下を利用した事に赦しを請うた。
杉下はさざなみで自分を利用した成瀬を赦した
成瀬はスカイローズガーデンで自分を利用した杉下を赦した
杉下は島時代の母親を赦した。
杉下は永く嫌っていた事を母親に赦された。
夏江は嘘をついていた事を高野に赦された。
杉下は赦す事ができた安藤にエールを送った。
杉下は自分自身を赦す事で、魂の解放を得て成瀬の元に還った。
すべてのシーンが、赦しというキーワードで説明できる事に漸く辿り着きました。
『赦し』というキーワードは、杉下の魂の解放過程における母親との再会で重要な事項として認識していたんですが、改めてそれ以外のシーンでも一貫した作品全体を貫くテーマであった事に思い至りました。
よく杉下と母親の再会シーンの評価について、『杉下が自分の気持ちに素直になって』という評価を見るんですが、私はそうは見えないんですね。杉下は相当な覚悟で母親の元に来た。それでも怖くて一度は逃げ出しているんです。
想像になってしまいますが、もしここで母親と相互に赦し合える事が出来なかったら、杉下は成瀬のもとには行けていなかったのでは?と考えています。すべてを赦し、自分を受け入れてくれる成瀬に対し、赦す事が出来ない自分を抱えたまま成瀬のもとには行けない、と考えたからこそ、杉下は母親に会いに来た、と理解しています。
正直、母親とのシーンは長すぎる、と感じていたんですが、作品テーマを代表するシーンとして、やはり重要であったからこそ、その描写に時間を充てたんですね。
参照
杉下が安藤へエールを送る事が出来た心理変化
西崎が安藤に『崩れ落ちそうな橋』の問いをした理由
杉下は成瀬の何に〝悪魔的絶望〟を抜け出す光を見たのか
魂の解放
14 件のコメント:
「Nのために」に関する色々な論考を興味深く読んでいました。初めてコメントをさせて頂きます。
公式HPでの監督のインタビューで、「幸福な結末を目指します」と書かれており、赦しは幸福になるために必要な行為なのだろうと感じております。相手を赦すことで真に幸福になれると監督は思ってドラマを描いていたのではないかと思います。
その観点で考えると、「やっぱり解けない安藤と成瀬の会話の謎」のエントリで書かれている成瀬から安藤に対しての発言も理解することが出来ないでしょうか。
安藤の行為は杉下を危険に晒し、再度近付き始めていた成瀬と杉下をまた離れさせる結果となった。10年という時間の中で、事件に対して未だに執着する安藤と、それを赦すことができた成瀬。幸福な結末を描く上で必要なシーンだったのではないかと捉えています。
ところで、「赦す」という言葉は罪を犯した人間に対してゆるす行為であり、作品のテーマである「罪の共有」という言葉にも関係がしてくる気がします。そう考えると「罪」と「赦し」この二つが作品のテーマであるような気がしています。
Mac様 初めまして。
世間一般からかけ離れた異端の解釈を展開するこの論考へようこそ!
いろいろ突っ込んでください。
また、『杉下希美を愛してやまない人祭』会場の方にも遊びに来てください。
そうですね。成瀬の『あなたがいてくれて良かった』、確かに赦しという単語で繋がりますね。自分で書いといて、気付かんかった。そうすると桃さんが指摘の、『杉下も変わらんよ、今のほうが…』との発言との繋がりも合わさって、なんかすっと入って来そうな雰囲気!
新発見です!感謝!
でも、そうすると最後に残るのが、『あなたを護ろうとしていました』の成瀬の発言意図なんですよね。私は成瀬が杉下のN=安藤と誤解した、という風に思えんのですよ〜。
Macさんは、どうお考えです?
横からすみません。
桃です。私もmoto様の指摘をずっと考えていて、頭の中ではまとまっているのですが、文章にうまくまとめられなくて。
あなたを守ろうとしていた、は、僻地行き阻止の部分にかかる言葉とは考えられないでしょうか?
あの部分だけ見れば、確かに希美は安藤を守ろうとしていた、と取れます。
取り急ぎ、この部分だけ、送信いたします。
如何でしょうか?
桃さん
成瀬の『あなたを護ろうとしていました』は、桃さんのご意見の通りです。私も同じ理解です。
成瀬は、問題の焦点が安藤の僻地行き、までは認識できていませんが、とにかく杉下が野口から安藤を守る意図で作戦をバラした事まで認識していましたから。そして且つそれが杉下の勘違いだと言う部分まで含めてです。
ですので、実はこの言葉は杉下のN=安藤、と成瀬が誤解していた、という証拠にはならないんです。まして杉下のN=安藤、の証拠にもならない。
だからドラマの構成的には、この成瀬の言葉は、安藤の外鍵の隠蔽のトリックを隠蔽する描写です。
成瀬の安藤への言葉『あなたがいてくれてよかった』の部分について概略まとめてみました。
桃さん、Macさん、こんな感じで宜しいでしょうか?
成瀬は杉下の部屋を訪れた最初の日、『杉下も変わらんよ、むしろ今のほうが…』と発言。
西崎が乱入し、この後の言葉は不明であるが、『むしろ今のほうが、明るくて綺麗魅力的』といったニュアンスの言葉と推測される。
成瀬としては、なぜ杉下がそのように変化したかと考えると、プロポーズする意向をもっている事をしった安藤の影響と思われた。杉下がそれを受けるかは不明であるが、少なくとも安藤がそのような意向をもつほどの関係性の中での変化と理解した。
しかし事件において安藤は自身のエゴ(杉下が自分と成瀬のどちらを頼るかを知りたい)から外鍵を掛けるという危険な行為を行ってしまい、成瀬も安藤に対して嫌悪感を持った。
10年が経過し、さざなみの真実が明らかとなり、父親を赦す事が出来た事、そして杉下を利用した事を杉下に赦された。これが契機となり成瀬も安藤を赦す事が出来、再開時に杉下の変化を導いた安藤に対して、『あなたがいてくれてよかった』と発言した…
成瀬の『杉下の傍にあなたがいてくれてよかった』がやっと飲み込めました。
これ、本編の稿に立てますね。コメントにとどめておくにはもったいないので。
あと残るは、成瀬がこの言葉を含む、『杉下は…あなたを守ろうとしていました』と言った発言の意図さえクリアできれば、このシーンを完全に理解できますね!
すみません!
motoさんのコメント読んでて、今になって???と気になった点です。(ごめんなさい、どこに投稿されてたかも探せず、確認出来ないまま投稿します…)
さざなみの事件。
成瀬くんは父親が放火したと確信してるのに父親を守る為に希美ちゃんの誤解(放火犯が成瀬くんという誤解)を利用したまま過ごしたと解釈されてたんですよね。その解釈が後々の罪の解放として『杉下を利用した事を杉下に赦された』の解釈に繋げてたような・・
成瀬くんは本当に希美ちゃんを利用したのでしょうか。
さざなみ事件後、希美ちゃんとは「もう話さん」と拒絶され、最後の島を出る日さえ会って話す事が出来ないまま、フェリーのお別れとなった成瀬くん。「…放火は俺やない」そして「なぜ杉下は俺を庇ったのか」等の希美ちゃんの本意を聞けないまま。
希美ちゃん真意が分からないままアリバイ証言で成瀬くんは守られ、その結果成瀬くんは父親を守る事が出来た。高野さん (や島の人)から放火犯が自分と疑われてはいても、それでいいと思って過ごした。
成瀬くんが希美ちゃんのあの時の気持ちを理解出来たのは、スカイローズガーデン事件の時。
motoさん考察の
『成瀬くんは、希美ちゃんの誤解を父親を守る為に利用した』とは、少し違うような気もしてて、そこら辺の考察を読み直したいのに、何処にあるのか探せなくて(x_x;)
頭が混乱してて、変な事言ってるかも知れないです。ごめんなさい。何処を見たらいいですか。
アフロ1さん、今晩は。
成瀬の、さざなみにおける杉下への対応についてはどこにも書いて有りません。
さざなみに謎解きはないので。自明として処理していました。
というか、成瀬と杉下の再開時に相互の相手に対しての赦し、赦されが含まれている、という事に気がついたのが、この投稿を書く直前だったんです。9話から10話の現代編のシーンには、『赦し、赦されが描写されている』と。
確かにさざなみにおいて、成瀬が杉下の勘違いを『積極的に利用した』訳では無いです。
むしろ成瀬とすれば周りが急速に動き、自分の思考が追いつかない状況下で杉下から奨学金を譲られ、杉下からは、『もう会わん』と告げられた。
そして自身の思考が追いついた時には既に落ち着いてしまい、もうひっくり返す事の出来る状況ではない。まして自分の肉親へ疑いが向くような事はおいそれと言えない。まして杉下は自分を庇ったが故に、窮地に陥っている。それに対して掛ける言葉が無かったんですね。成瀬には。
ですから成瀬は例え杉下に対してでも、自分が真実だろうと考える事を言えなかったんです。
ですが成瀬にしてみれば例え積極的な動機で無くとも結果として自身の肉親の利益と、杉下の犠牲による大学進学という利を得た。
動機からではなく、結果として杉下の誤解を利用した事と同じく罪の意識を感じていた、それを長く杉下に伝える事が出来なかった事に申し訳なさを感じていた。
その告白が二人の再開時の『さざなみの事件も〜』から『無いよ』までです。
そして杉下の『ごめんなさい、成瀬君の大事な家が燃えとるのに私、なんてこと考えとったんやろ』の言葉に、杉下から赦された、と理解したんですね。
これで成瀬は心が軽くなり、笑みを浮かべながらの『そんで、上には行けた?』になったんです。
アフロさんへ。
一つ前のコメントの追記です。
成瀬にとって杉下にプロポーズするためには、このさざなみでの自身の対応、および真犯人の暴露は杉下からの赦しが前提ととなります。
この時、成瀬は杉下に赦されたからこそ、その後プロポーズした、ととっています。
もっとも杉下の方は赦した、という感覚は皆無ですが。
杉下にとっては、ひたすら安堵。いえ、それさえ飛び越えて、自身が火を見て感じた事に対する成瀬への申し訳なさとなっています。
motoさん、回答ありがとうございました!
結果としての罪悪感。成瀬くんの中だけに存在する希美ちゃんへの『申し訳なさ』に対しての、『赦された』なんですね。
希美ちゃんには『赦した』の感覚もない事柄だけど、成瀬くんにとっては『赦された』
聞いてみてよかったです。
夜中に質問し、まさかその夜中のうちにレスあると思ってはなくて、就寝の邪魔をしてすみませんでしたm(__)m
丁寧な回答をありがとうございました!
私も追記ですが
昨晩の質問は、(motoさんの事だから)『希美ちゃんが自分の誤解を利用したと知り成瀬くんにわだかまりを持ってしまった』説が何処かにあって私が見逃したかもと不安になり、たずねてみたんです。安心しました(笑)
ところで、Mac さん初めましてー!!Maxさんのコメントで
「赦す」という言葉は罪を犯した人間に対してゆるす行為…
と訳されていたので、「許す」と「赦す」の言葉の違いを少し調べてみました。
以下、私なりに要約すると・・
「ゆるす」という言葉は一般的には「許す」という表記で使われる。使い分けるなら、「許す」 は行為や行動がとられる前の話。何かを始める前に、行って良いかどうかを認めてもらう…許可 。
一方、「赦す」と表記するのは行為や行動が行われた後の話。すでに起こしてしまった出来事や犯してしまった罪に対して、罪を問うのを止める、罪からの解放…恩赦、容赦。(犯した罪ごとその人を受け入れる)
よって、Mac さんの考えをヒントに更にすすめると
『起こった事の全てを私は受け入れる』はイコール『罪を赦す』であり、これは希美ちゃんの『罪の共有』、全てのN達への『究極の愛』だったんかな。
motoさんの《作品のテーマ》でおっしゃてたように希美ちゃんに限らずこの作品はたくさんのシーンが『赦し』と結び付き、『赦し』で溢れていたのですね。だから私達は感覚的に観る中で、心暖かいものを感じ何度も涙をしたのでしょう。
誰もがみな、加害者であり被害者だからこそ、「囚われの自分」からの解放。それが自分への
『赦し』でもあり、それによって幸福の結末に繋がった。そんな風に考えてみたりしました。
アフロ1さん 今晩わ
杉下のモノローグ『起こった事の全てを私は受け入れる』については、私はちょっと違う意見を持っています。
この言葉は、杉下の関係者全員への愛、というより、魂の上昇により成瀬の元で至福を得た杉下が、そこに辿り着くまでの過程として、辛い事悲しい事も含め全ての事が必要な事だったのだ、という振り返りの上での認識と取っています。
つまり、辛い経験も、成瀬の元で至福を得た杉下にはどれもこの至福を得る為の必要事項だった、という杉下の認識です。
しかしこの言葉はもう一つの杉下の精神状況下でも言い得て、二重に掛けられていると取っています。
つまり悪魔的絶望状況下にあった、成瀬に再開する前の杉下にとっては、罪深い自分はもう逃げも隠れもしない、言い訳もしない、というある種の諦めの言葉でも有るんです。
ですのでこの『起こった事の全てを私は受け入れる』は杉下の魂の上昇プロセスの一番最初と一番最後において、杉下の精神状況としては全く逆の二つの状況に掛けた言葉です。
こんばんは
motoさんのモノローグ解釈は格別のランク(←こんな表現ある?)で賛同です~(ヘ。ヘ)
先日私のものは、『赦し』の意味調べをきっかけに、ちょっとした言葉の遊び的感覚で導きだしたコメントです。こういう風にも考えてもいいかなって、披露しました~!
アフロ1さん、了解~!
ちなみにアフロ1さん、Cafeへの書き込みは13日まで待つん?
Cafeの前身 『杉下希美を愛してやまない人祭』会場でお返事します!
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