2024年1月13日土曜日

ドラマ:成瀬が訪ねた際の杉下の驚きの事情

 

9話で成瀬が杉下を訪ねた際の二人の会話です。

杉下:「もしもし」

成瀬:「杉下」

杉下:「…はい」

成瀬:「家におる?今下におるんやけど」

(部屋からベランダへ出る杉下)

杉下:「なんで成瀬君がおるん?」

成瀬:「島に帰っとった。これ、うどん」

杉下:「ありがとう。だけど、なんで成瀬君がここにおるん?」

成瀬:「西崎さんが教えてくれた。何度か府中に差し入れしたけん、出てから連絡くれて」

杉下:「急に来んでよ、私こんな格好やのに」

成瀬:「少し…話さん?」

杉下は電話を掛けてきたのが成瀬である事を、電話に出る前に判っていた

まず、電話が鳴った時の杉下の反応です。手に取った携帯の画面を見つめた後、小さな吐息をついてから電話に出ます。携帯画面には相手に関する情報が表示されているはずです。それが登録されている名前であるのか、単に電話番号だけであるのか、は不明です。最初の携帯が鳴るカットにおいては、画面に何が表示されているかは、ピンボケで判りません。

次に注目したいのは、杉下が驚きの表情を見せたタイミングです。彼女が表情を変えるのは、成瀬の「今下におるんやけど」の発言の後です。その前の「杉下」に対しては表情を変えていません。また、成瀬は自分から名乗っていないという事実があります。そうすると、彼女は電話に出る際に既にこの電話が成瀬からのものである事を判って出ていると考えられます。

成瀬は既に一度杉下に電話を掛けています。その際には杉下は痛みの発作でその電話に出ることは出来ませんでしたが、後に履歴から電話があった事は把握していると考えてよいでしょう。また、杉下はその前に西崎を訪ねています。杉下が西崎を訪ねたシーンにおいては成瀬の話題は描写されてはいませんでしたが、西崎は成瀬の電話番号を知る存在です。西崎は成瀬と杉下が長い間接触を断っている事を知ってはいますが、杉下にとって成瀬は彼女の『究極の愛』の相手である事を知っている存在でもあります。杉下が誰も頼ろうとしていない事は会話から判っている事ではありますが、成瀬を頼るよう西崎が杉下に成瀬の電話番号を教えてた、と考えていいと思います。

そうであれば、既にあった着信履歴と西崎から教えられた番号から、杉下は既に一度成瀬から電話があった事を認識してから電話に出たと考えるべきです。ですから、彼の「杉下」という呼びかけそのものには、さして反応しなかったのだ、と考えられます。

杉下は成瀬の来訪の意図を図りかね、動揺している

彼の来訪に杉下は明らかに動揺しています。成瀬の「家におる?今下におるんやけど」に眼を見開き、「なんで」の声が震えています。

杉下はまた『なんで成瀬君がおるん』と2度問うています。成瀬は最初の問いに訪問の目的が杉下に島の土産(うどん)を渡すため、と返していますが、杉下はなおも同じ問いを彼に投げかけます。彼女の疑問は、もっと深い意図に対するものであったからです。

杉下は成瀬との間に心理的ハードルを抱えている

成瀬の電話に出る前、彼女は小さく吐息を付いています。これは電話に出る前に心を落ち着けている為の動作です。また、先の推論のように、この時成瀬からので電話である事が判っているはずであるのに、彼女の冒頭のやり取りには高揚が見られません。冷静さを保とうとしている、というよりは彼の電話に出る事に心理的な抵抗があるように見えます。

西崎から彼の電話番号を教えられたであろにも関わらず、その後杉下から折り返しの電話もしていない事実からも裏付けられると思います。

また「急に来んでよ、私こんな格好やのに」という言葉に彼に対する心理的なハードルが存在している事が表れています。これは1話で早朝に寝間着のまま成瀬の自転車に乗った時と対照的な反応です。

杉下には成瀬が自分を訪ねてくる事そのものがあり得ない事

杉下は再度の問いの時「なんで成瀬君がここにおるん」と聞いています。「ここに」の部分が初回から増えている部分です。

「ここに」の意味は2通り考えられるでしょう。一つは杉下の住所にどうしてたどり着いたのか?という意味。それともう一つは『ここ』=『自分の前』にという意味。

成瀬は杉下の「ここに」の意味を、情報の伝達経路と捉えました。ですので「西崎さんが教えてくれた」と返したのです。

しかし、杉下の本意は情報経路であったのでしょうか?先に検討した通り、杉下は成瀬の電話番号を西崎から聴かされています。つまり成瀬と西崎には接触が在る事は判る事です。そして西崎は自分の住所を知っている存在です。つまり杉下には成瀬に自分の住所が成瀬に伝わる事も十分予測出来たはずなのです。

そうすると、杉下の「ここに」の意味は、成瀬に自分の住所が伝わるであろう事を十分踏まえた上で、それでも成瀬が『自分の前』に現れると彼女が考えていなかったが故の「なんで成瀬君がここにおるん?」であるのです。つまり成瀬は例え自分の住所を知っていたとしても自分の前には表れない、と杉下が考えていたのです。

これは杉下が西崎を訪ねた際の、西崎の笑みとは対照的です。西崎の笑みには懐かしみが感じられます。西崎は杉下が自分を訪ねてくる事を十分予測しており、笑みで彼女を迎えたのです。

二人の10年の関係はスカイローズガーデンで決定した

10話、成瀬のプロポーズに対して杉下は「甘えられん」と返しています。彼のプロポーズは拒絶はしたものの、彼女の中には成瀬に対して『甘えたい』という感情があるのです。それにも拘らず、彼女は成瀬に対して心理的障壁を持ち、成瀬が自分を訪れる事はないと考えていて、故に来訪に動揺し、来訪意図への勘繰りをする反応を取ってしまう。

4話、安藤とのレストランでのシーンで、杉下は安藤に『あれから誰とも会っていない』と返しています。つまりスカイローズガーデンの事件現場で成瀬と別れた以降、成瀬と接触がない事が語られています。そうすると、杉下の成瀬に対する反応はスカイローズガーデンの出来事により形成された、という事になります。

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