2024年1月22日月曜日

ドラマ:なぜ安藤は自身のNを杉下と言えるのか?

2話で安藤は高野に対して『自分のNは杉下希美』であったと答えています。しかしスカイローズガーデンのあらましを見る限り、彼のNは自分ではないのか?と見えます。警察に対する証言で自身が鍵を掛けた事に口を噤んているからです。

安藤の警察への証言

出典:https://www.tbs.co.jp/

6話での安藤の警察への証言全文を示します。

「安藤望。三羽商事営業部に勤務しています。」
「6時に伺いう約束でしたが、早めに到着したので野口さんに電話しました。」
「少し仕事の話がしたいと言われて、最上階のラウンジで待っていました。」
「6時になっても野口さんは現れませんでした。」
「自宅のインターフォンを押すと答えたのは杉下でした。」
「中に入らないでくれと強く言われましたが、様子がおかしかったので、中に入りました。」
「野口さんと奈央子さんが倒れていて、その場には西崎さんと杉下の同級生が居ました。」
「その後すぐに警察や救急の人が入ってきたので、何があったのか、僕は誰からも何も聴いていません。」

安藤が警察に隠したこと

安藤は警察に対して、自身が見聞きした事の内、いくつかの事を隠しています。

  • エレベーターで西崎と鉢合わせしたと
  • 自身がドアチェーンを掛けた事
  • 室内で西崎から「逃げられなかった」と事件の一端を告げられた事
  • 西崎・杉下・成瀬が事前に会っていた事

安藤には事件の真相はどう見えていたのか

確かに安藤は事件の内容についてほぼ何も聴かされてはいませんが、安藤にもいくつか解っている事があります。

ドアチェーンを開けたのは成瀬

安藤は杉下と西崎が室内にいる段階でドアチェーンを掛けました。再度彼が野口宅にやってきた時は既にドアチェーンは空いていました。ドアチェーンを掛ける前には部屋にいなかったはずの成瀬が室内にいたことから、成瀬がドアチェーンを開けて部屋に入った事が解ります。

成瀬は殺害に関与していない

西崎は入室した安藤に「逃げられなかった」と伝えています。殺害となったのはドアチェーンが閉まっていた事で逃げる事が出来なかったから、という意味です。つなり事はドアチェーンが掛かっている間に起きた事が解ります。そうするとドアチェーンを開けて後から入室した成瀬は殺害には関与していない事が解ります。

西崎・杉下は奈央子を殺害しない

安藤と西崎が事件前エレベータで鉢合わせしました(10話)。その際安藤は3人による何がしかの計画の存在に気付いています。一方で安藤は奈央子に不倫の噂がある事、奈央子が監禁状態であり精神的にも不安定である事を知っています。何がしかの計画があるとしたらそれは奈央子の状況を改善する為のものである事が推測されます。実際、6話現代編において杉下にプロポーズする前に、彼は杉下に『奈央子さんを連れ出そうとしていたんじゃないの?』と事件の真相を聴こうとしていました。そうすると、西崎と杉下は奈央子を殺害する事はないであろう事が解ります。

西崎は野口を殺せない

安藤が見たのは、腹部を刺された奈央子。頭部から血を流し、包丁を持つ野口。血の付いた燭台です。状況的には野口は燭台で頭部を殴打された事が解ります。
併せて彼は部屋に入る際にテーブル上にローソクが灯された燭台が存在する事も見ています。西崎は炎を極度に恐れていました。彼はここから西崎が燭台で野口を殴打出来ないと見ました。この見解を5話で彼は野口に話しています。また9話で西崎本人にも話をしています。

杉下は野口を殺していない

では安藤は杉下による野口殺害を疑っていたのでしょうか。実は彼は杉下は野口殺害には関与していない事が解っているのです。

野口夫妻が共に亡くなる順として、可能性は以下の通りとなります。

  • 野口が奈央子殺傷⇒杉下が野口殴打
  • 奈央子が野口殴打⇒奈央子自殺

出典:https://www.tbs.co.jp/

ここで判断材料となるのは、杉下のカーディガンに付着していた多量の血痕です。安藤が入下した際に成瀬が地に染まったブランケットを持ってはいましたが、成瀬の着衣には血痕は見られません。そうすると状況的にそのブランケットは杉下から預かったモノと見る事が出来ます。つまり杉下はブランケットで介抱しようとしたことが解ります。

野口は後頭部を殴打されています。もし杉下が野口を殴打するなら、野口が奈央子を殺傷した直後でなければ彼の背後を取る事は困難だと思われます。そうすると彼女は野口殴打の後に介抱を行った事になるのですが、人が亡くなる程の殴打の後、その実行者が介抱を行えるか?と考えるとこれも困難と思われます。

そうすると杉下も野口を殴打していない事にます。安藤にはこの事件が野口夫妻の心中である事が解っていたのです。

安藤が口を噤んているのは杉下が彼のNであるから

彼が杉下の犯行を疑っていないのであれば、なぜ彼は警察に全てを話さないのでしょうか。杉下が無実であるなら、彼女が咎に問われる事は無いように見えます。これには安藤の杉下に対する感情、及び彼の性格と、状況に対して警察がどう反応するのかの両方を考える必要があります。

安藤は杉下にプロポーズをするつもりでいた

出典:https://www.tbs.co.jp/

これは6話現代編で杉下を呼び出した安藤が、杉下にスカイローズガーデン当日にプロポーズするつもりであった事を明かしています。その意味で安藤にとって杉下は自身のNど言いうるものでした。

杉下が犯人だと考えていたら安藤は全てを証言していた

安藤は6話で西崎による杉下の究極の愛/罪の共有に関する説明を『自己満足』と断じ、以下のように答えます。

安藤:「俺だったら黙ってないで一緒に警察に行ってやるよ。」
西崎:「刑務所に入る事になったら?」
安藤:「待つ。それで出来る限りのことをしてやる」

この安藤の発言から、安藤が杉下を野口夫妻殺害の犯人と判断していたら、彼は警察に全てを証言していたでしょう。彼は杉下が犯人でない、と判断しているからこそ口を噤む選択肢が発生するのです。

警察は計画故の心中事件とは考えない

この事件の本質は野口夫妻の心中です。しかし安藤を含む4人が野口宅に集まった状況の発生は安藤・杉下・成瀬の3人による計画です。

仮に全てを正直に警察に証言したとして、それが奈央子救出のための作戦故の野口夫妻の心中と主張したとしても警察は心中ではなく、作戦参加者による殺害を疑うでしょう。そうすると事件時宅内にいた杉下が犯人とされる可能性が発生します。安藤には杉下が殺害に関与していない事が明白であっても、彼が宅内にいない状況下での事であり、安藤には杉下を護れないのです。

この点において、安藤のN=杉下において、彼が事件について口を噤む事の理由が生じるのです。

ドアチェーンの証言は計画の開示に繋がる

彼が警察に対して口を噤んだ事項は何れも計画の存在・その可能性に繋がる事項です。自身がドアチェーンを掛けた事も、それが明るみになった場合、その動機を語る必要が出てきます。その動機には成瀬の存在が関わっています。そうすると何れにせよ3人の計画の存在の開示に繋がる為、安藤は自身がドアチェーンを掛けた事を隠蔽したのです。

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