謎解きの入り口の3つ(スカイローズガーデン、成瀬と西崎の会話、成瀬が電話した時の杉下の反応)からスカイローズガーデンの真相の一端を前項で示しました。そこでは深くは解説しなかった以下の諸点について、もう少し解説したいと思います。
- 杉下のN=安藤のミスリードをさそう演出
- 安藤が杉下の心に入り込めていない証拠
- 安藤は許されざる者
- 成瀬のN=杉下ではない
杉下のN=安藤のミスリードをさそう演出
ここではスカイローズガーデンに関する描写に絞って製作者がミスリードを誘う為の演出を解説したいと思います。
- エンディングでの杉下のモノローグ(6話)
- 杉下の安藤の僻地赴任に関する野口への懇願行動~エンディングでの杉下のモノローグ(9話)
- 杉下の安藤入室阻止行動~成瀬へのドアチェーン隠蔽依頼(10話)
エンディングでの杉下のモノローグ(6話)
「残された時間をあなたを護るために使いたい。あなたがこれから幸せであるように。それが人生最後の私の願いだった」
「それが人生最後の私の願いだった」の部分で野口宅のドアチェーンを掛ける安藤が描かれます。この見せ方で、さも彼女の『人生最後の願い』の対象である「あなた」が安藤であるかのように視聴者に見えます。
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杉下の安藤の僻地赴任に関する野口への懇願~エンディングでの杉下のモノローグ(9話)
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安藤の僻地行きを杉下は土下座して翻意を促しますが、それが効果がないとわかると、「どうすればいい、どうすれば護れる」と思案します。その時作戦会議の際西崎が発案した『西崎が殴られることで警察沙汰にする』というアイデアを思い出します。
この時の「どうすればいい、どうすれば護れる」の対象はどう考えても安藤です。
その後にエンディングのモノローグとなります。
「その時考えていたのは、大切な人の事だけだった。その人の未来が明るく幸せであるように。みんな一番大切な人の事だけを考えた」
直前に安藤の僻地行きを翻意してもらうよう、野口に土下座して頼み込んでいた杉下が床から立ち上がりかけた部分から「その時考えていたのは…」が入ります。
「大切な人の事だけだった」の部分で玄関での西崎と奈央子のシーンが入ります。
「その人の未来が明るく」の部分でラウンジでの安藤の背中と顔が入ります。
「幸せであるように」は車中の成瀬を捉えます。
「みんな一番大切な人の事だけを考えた」は再び杉下に戻り、野口に奈央子救出作戦を暴露する杉下の口の動きとそれに驚き部屋を掛けだす野口、という流れです。
安藤の僻地赴任を阻止しようとする行動の対象は安藤です。その為の作戦暴露の様子に被せたモノローグにおける『大切な人=その人』は安藤のようにみえます。
杉下の安藤入室阻止行動~成瀬へのドアチェーン隠蔽依頼(10話)
成瀬入室後、3人による謀議が成立した後に安藤が野口宅を訪ねます。この時入室しようとする安藤を杉下が「待って」と身を挺して止めようとします。その後に先に解説したように、成瀬にドアチェーンを隠蔽するよう依頼しています。
この流れを一連で見ると、彼女の行動はやはり安藤を護るための行動であるように見えるのです。
杉下には「内」の不都合を「外」に対して咄嗟に隠す癖がある
高野に対して母親の様子を隠した(1話):
東屋で成瀬と会話していた際に高野が訪ねた事に嘘を付いています。早苗は杉下にとっては母親であり、家庭「内」の不都合な状態(母親の精神状態)を「外」である警官の高野に対して隠すために嘘を付いています。前項で示しましたが、この時成瀬に高野に対する口留めをしています。この時の経験がスカイローズガーデンで成瀬が彼女の意図を読み違える原因になっています。
さざなみ炎上の偽証(2話):
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さざなみの炎上を成瀬による放火と誤解した杉下は、高野及び警察に対して咄嗟に『東屋に一緒にいた』という偽証をしました。彼女にとって、成瀬は『内』の存在であり、その彼の放火行動は彼女にとって『内の不都合』に相当するものです。
このように彼女の癖は複数の箇所で確認できます。安藤の入室阻止行動は彼女の特徴から考えると、野口宅『内』の3人の不都合(=野口夫妻が亡くなった)を宅『外』から入ってきた安藤に対して隠そうとする行為と言えます。
もう一つ、3つには成瀬との間に嘘(偽証内容)を共有しているという共通する特徴があります。この杉下の特徴から考えると、安藤の入室阻止行動を杉下のN=安藤の根拠とは出来ないのです。
「その時考えていたのは、大切な人の事だけだった」の「その時」は安藤の僻地行き阻止行動の時ではない
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このモノローグは過去形で話されています。後からの振り返りです。「その時」とは大きくはスカイローズガーデンの事件の時です。ではスカイローズガーデンの進展中で、「その時」とはどの場面であったのか?が問題になります。
スカイローズガーデンで一番の問題は警察に対してどう証言するか?です。つまり西崎が偽装行動を取り始めた処から警察への証言まで、となります。モノローグは「みんな一番大切な人の事だけを考えた」と続きます。「その時」とは並行して四人(若しくは3人か)それぞれが同じ内容について同時並行的に進む時間です。そうすると野口に対する安藤の僻地行き阻止行動はあくまで杉下の個人的な行動であり、「みんな」が共有する同時的時間ではありません。
そうすると、映像として表現される時間とモノローグが示す時間はずれている事となり、このシーンを根拠に杉下のN=安藤とする事は出来ません。
「残された時間をあなたを護るために使いたい」の「あなた」は安藤ではない
杉下は余命宣告を受けています。このモノローグは表現を変えれば彼女が『真実を墓場まで持って行く』という意思表明です。仮に「あなた」が安藤だとしても、安藤を攻撃する事が可能な人物である成瀬と西崎が杉下の死後も残ります。その意味では彼女が『真実を墓場まで持って行』っても、その後の安藤を護れる保証は、彼女の死では得られないのです。そして、既に指摘している事項ですが、少なくとも事件について刑事・司法においてスカイローズガーデンで安藤が対象となる事はないのです。
一方さざなみ炎上に関しては未解決事件です。時効まで1年を切り、ほぼ杉下が受けた余命宣告期間と重なります。彼女がその存命中、頑張れば時効となります。モノローグの内容と状況を鑑みるとこの「あなた」は安藤ではなく成瀬が相応しい事となります。ですのでこのシーンも視聴者のミスリードを誘う演出であり、杉下のN=安藤の根拠たりえないのです。
安藤が杉下の心に入り込めていない証拠
東京編で安藤が杉下の心には入り込めていない証拠を列挙します。
- 将棋盤を並んで覗こうとする安藤に仰け反る杉下(6話)
- 杉下:「安藤にはこの事話ししてないし、関係ないから」(8話)
- 杉下:「安藤が何を求めているのか、私は知りません」(9話)
将棋盤を並んで覗こうとする安藤に仰け反る杉下(6話)
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安藤が杉下に将棋を習うシーンです。杉下の「クルクルしないでー!」のシーンですね。安藤が相手側から見た時にどう見えるのか?と杉下側に回り込み、杉下と並んで盤を覗こうとしたした際、微妙に杉下が安藤と距離を取るように体を安藤の側とは逆方向に逃がしているのです。これは自身のパーソナルスペースに侵入してきた者に対する一般的反応であり、この時杉下にとってはそのパーソナルスペースに入る事を許容できる関係ではない、という事です。
「安藤にはこの事話ししてないし、関係ないから」(8話)
成瀬、西崎と3人での作戦会議で西崎に向かって話した内容です。一般的には安藤を作戦に関わらせない事により、何かあっても安藤の立場を護る為の措置と取られています。
しかし冷静に考えると、杉下、西崎は友人である安藤が目を掛けてもらっている直属上司の家庭内の問題に対して直接的介入行動を取ろうとしている訳であり、作戦が成功しても失敗しても、野口から『安藤の彼女』と認識されている杉下が野口と対峙する事になる為、野口から見て『部下の安藤の彼女である杉下』が自分の家庭内の問題に対して穏やかならざる方法で介入した事が認識される事になります。このことは野口と安藤の関係、そして当然ながら安藤と杉下・西崎の関係に影響を与えます。
また、杉下・西崎からすれば安藤はこの時、野口側の立場をとる人物です。ですから彼から情報が洩れ作戦が阻止される事を防ぐ為の安藤に対する作戦の隠蔽です。
つまり、杉下・西崎にしてみれば作戦面において安藤は『敵』であり、その後に彼との関係が変化する、つまりそれは彼との関係が終了する覚悟が無ければこのような作戦は実施できないのです。そこから逆説的に言えば、杉下・西崎には奈央子救出作戦の実施が第一義であり、安藤との関係はその時点で放棄される対象であった。つまり杉下にとっては安藤との関係の維持の重要性は奈央子救出作戦の実行の重要性より劣る、という事です。
「安藤が何を求めているのか、私は知りません」(9話)
賭け将棋の内容が安藤の『僻地行き』としった杉下の野口への抗議です。全文を示します。
「安藤が何を求めているのか、私は知りません。だけど目標を持っているのは確かです。そこに向かって真っすぐな人の足を抄うようなことは、しないでください」
この後、10話で土下座中に野口から『安藤についてゆくか?』と聴かれた杉下は「付いてきてくれって言われたら、私は安藤について行きます」と言っています。土下座してまでの安藤の僻地行きの翻意を野口に懇願する姿勢とも併せ、杉下のN=安藤の根拠となっていますが、これもミスリードを誘う演出なのです。
そもそも、この「安藤が何を求めているのか、私は知りません」がおかしい。杉下にとって安藤が『僻地に付いてきてくれ』、と頼まれた時、本当に安藤に付いて行く程の相手であるなら、ストレートに『安藤は目標を持っています。そこに向かって…』と入ればよいはずです。「安藤が何を求めているのか、私は知りません」という表現が出てくるというのは、後の「そこに向かって…」という、野口に翻意してもらう為の行動を『自分は安藤の為にそんな事をする関係ではないけれど』、といったことわりを入れる心理から出ている言葉です。
つまり、杉下は『本来なら安藤の為にこんなことする関係ではない』と自身と安藤との関係を規定している事になります。
「安藤が何を求めているのか、私は知りません」の直後に野口の表情のカットが入ります。彼の眼は大きく見開かれています。野口も杉下のこのことわりに違和感を感じたのです。
安藤は許されざる者
安藤が成瀬にとって許されざる存在である事は前項で示しました。成瀬の安藤に対する態度が判る場面、実は成瀬以外のものにも安藤が許されざる者である点を挙げてみます。
- 西崎の「君とは関わる気は無い」(5話)
- 訪ねてきた安藤を拒絶する杉下の写真スタック(10話)
- 成瀬の「あなたが居てくれてよかった」(10話)
西崎の「君とは関わる気はない」(5話)
西崎の出所後、野ばら荘へ訪ねてきた安藤に対して西崎が放った言葉です。その顔に笑みは無く、彼への対応は冷徹なものでした。安藤は裁判に関して西崎を支援しています。そのような彼に対して西崎は心を開いていないのです。
訪ねてきた安藤を拒絶する杉下の写真スタック(10話)
スカイローズガーデンの描写が全て終わり、現代編に移る直前に写真のスタックシーンがあります。この中で野ばら莊に訪ねてきた安藤に対してドアを開けず、彼を拒絶する杉下が描かれています。この後二人は一切の接触を断っている事は安藤が高野に証言しています。また現代編において成瀬が杉下の電話番号を知らない事から、彼女も成瀬同様電話番号を変更しています。
この杉下の行動は一般的にはさざなみと同様に安藤との関係を断つ事で安藤を護るため、と見られています。
しかしこの理解は間違いです。さざなみとスカイローズガーデンでは状況が異なるからです。
さざなみにおいては、警察は成瀬の放火を疑っていました。杉下も成瀬が放火したと考えていました。杉下の、彼を警察から庇う証言のポイントは2点です。一つは、さざなみ出荷時に彼と東屋にいた。二つ目は、彼を庇うほど親しい関係ではない。この2点です。そして彼女が成瀬と距離を取ったのは、2つ目の偽証を担保する目的と言えます。その結果さざなみは未解決事件となりました。未解決事件ですので、事件後も彼と距離を撮り続けている事には意味があると言えます。
※ただし彼女が大学以降も彼と距離を取り続けた理由にはもっと突っ込んだ事項を考える必要があります。
しかし、スカイローズガーデンにおける安藤と杉下の関係はさざなみのアナロジーでは考える事が出来ません。まず、スカイローズガーデンにおける偽証構造において、安藤がドアチェーンを掛けた事は隠蔽され、それが嫌疑とはされていません。また刑事・司法的には西崎の単独犯として終了しています。また杉下と安藤は野口に対しては「恋人」として振舞っていました。偽証構造や事件の処理結果、状況を考えると杉下と安藤が事件後も接触があったとしても、なんら事件に影響を及ぼすような事態にはならないのです。
にも拘わらず杉下は安藤を拒絶し、その後10年間接触が絶えました。これは成瀬同様に杉下も安藤が許しがたい存在であったからです。
成瀬の「あなたが居てくれてよかった」(10話)
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これは結論ありき、ではなく安藤との会話を論理的に分析すると、成瀬の安藤に対する嫌味である事が解ります。
成瀬:「話せるようなことは、何も有りません」
(視線を落とし、寂しそうな安藤)
安藤:「君から何も聴けなかったら、もう事件の事は吹っ切ろうと思っていた」
(思案気な成瀬)
安藤:「ありがとう、時間取らせて悪かった」
(立ち去ろうとする安藤)
成瀬:「あの日、杉下が考えていたのは、安藤さんの事だと思います。あなたを護ろうとしていました」
(口を少し歪める安藤)
成瀬:「島を出る為に、お互いの支えが必要だったんです。あれから10年も経つんですね。あっという間だった」
(安藤を見据える成瀬)
安藤:「会いに来てよかった」
この時の安藤は状況として西崎にも杉下にもスカイローズガーデンの事を話してもらえず、最後に成瀬から聞き出そう、として彼を訪ねました。彼の心持は、成瀬から何も話してもらえないなら、もうスカイローズガーデンに関しては気持ちの整理を付けよう、と考えての成瀬訪問です。その心情を吐露しているのが、「君から何も聴けなかったら、もう事件の事は吹っ切ろうと思っていた」です。
成瀬は当初、彼の要求(スカイローズガーデンの事を話す)に対して「話せるようなことは、何も有りません」と、やんわりと拒絶します。これに対して安藤は寂しげな表情を見せます。結局彼は事件について関係する3人から全く話を聴けない、という疎外感を感じているのです。
安藤は成瀬の拒絶を見て『事件の事は吹っ切る』と言って別れようとします。この場面に至って成瀬は「あの日、杉下が考えていたのは…」と事件の一端を口にしました。
もし安藤が誰からも事件の事を話してもらえない事が、安藤を傷つけない為、であるなら、成瀬は当初の通り彼に口を噤むのが正しい行動です。しかし成瀬は安藤の『事件の事は吹っ切る』という発言に対して当初の方針を変更し、事件の一端を口にしました。彼のこの行動は、安藤に対して口を噤む行動が安藤を傷つけない為の行動ではない、そしてを表しています。また、成瀬の発言は安藤の『吹っ切る』事に対する阻止行動でもあるのです。
そうすると、この成瀬の発言の意図は安藤に対して『事件の原因を作っておいて、吹っ切るなんて、都合の良い事はさせない』というものであり、その後の「杉下のそばに、あなたが居てくれてよかった」は、杉下の余命を知る彼からすれば、安藤に対する強烈な皮肉以外の何物でもないのです。
成瀬のN=杉下ではない
成瀬は安藤を庇っているように見えた杉下を嫌悪しました。しかし警察への偽証は結局杉下がドアチェーンの隠蔽を成瀬に頼む前に3人で謀議した内容どおりです。そうするとやはり成瀬のNは杉下だと考えたくなりますが、実はそうではないのです。
Nは警察への証言時に護ろうと意図した人の事
Nを上記のように定義します。このように定義する必要があるのは、安藤が存在する為です。安藤は野口宅内での西崎・杉下・成瀬の謀議に加わっていません。その為他の3人と同じ土俵でそれぞれのNを評価するには状況が一致する警察への証言時における各人の意図とする必要があります。
成瀬は自身のNを語っていない
杉下のNは、それが謎解きの中心的なものである為、ドラマ内で語られることは有りませんでした。しかし杉下の他にもう一人自身のNを口にしていないのが実は成瀬です。
1~2話において、高野は弁護士に対する西崎の証言『すべてはNのために』を引き合いに出し、彼に「Nって何ですかね」「誰のために罪を被ったのか」と問います。それに対して西崎は「奈央子の事だけを思って刑を受けようと思った」と証言しています。事件の真相や彼が服役を望んだ理由に関しては実際には複雑ではありますが、彼は10話でも「奈央子を犯人にしたくない」と言っています。Nに関して定義が示された後に話が展開されている為、西崎は自身のNは奈央子、と言っている事になります。
2話で安藤に付いてはで「なんですか?Nって」と高野に聴き、高野が「西崎さんは被害者の奈央子さんのNだと仰っていました」と返します。安藤はそれを受けて「大切な誰かのためにってことでしょうか」と解釈した上で、「僕にとってのNは杉下希美でした」と答えています。彼は明確に自身のNを回答しています。
9話では成瀬と高野で以下のやり取りがされます
成瀬:「俺は杉下やった」
高野:「お前のNは希美ちゃんやったか」
成瀬おいては、高野は先にNの語を持ち出していません。成瀬の大事な相手は杉下、との言葉を受けて、高野が成瀬のNは杉下、としているのです。つまり成瀬は自身のNを語っていないのです。この表現の違いは西崎・安藤と成瀬の行動が異なる可能性を示しています。成瀬のNは杉下ではない、という可能性です。
成瀬の高野への説明と実際の彼の行動の矛盾
一方で成瀬は自身のスカイローズガーデンにおける大事な人は杉下だった、と認めています。しかし杉下のドアチェーンの隠蔽依頼以降の彼の態度、その後杉下と距離を取った事実は、成瀬が3人の謀議までの行動原理とそれ以後の行動原理が異なるという事です。
つまり、成瀬は3人の謀議までは杉下を事件から安全な場所に置くための行動をした。具体的には西崎単独計画/単独行動の偽証内容にのり、3人が居合わせたのは偶然だという謀議を杉下に飲ませました。これにより杉下は計画の存在をしらない事となります。そのうえで西崎の「杉下を護ってやってくれ」に対して頷き、それを西崎に約束しました。成瀬はこの段階まで、事件後に杉下と距離を取ることなど考えていなかったのです。また、事件を契機に成瀬と杉下が接触したとしても、それが警察から問題とされる事もありません。事件前の接触が隠蔽されるのであれば、その後の接触は偽証内容から言って問題ないのです。
成瀬には杉下の為でも、自己保身の為でも偽証内容は変わらないトリック
しかし彼は勘違いにより行動原理を変えました。西崎との約束を反故にし、杉下と接触を断ちました。彼の警察への証言段階における意図は杉下を護る事ではありません。彼自身の保身であるのです。3人での謀議の内容は、3人が居合わせたのは偶然、というものです。それは成瀬の警察への証言時の意図が自己保身であったとしても、自身は事件の枠外に身を置くことが出来るため、それが彼にとって都合がよい内容なのです。
この杉下の為であっても自分の為であっても、元の偽証内容が変わらないように出来ている構造(それはトリックでもありますが)であるため、視聴者には解りずらい、気づかないものとなっているのです。
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