…続き
『どうして、今自分がここに居るのか解った。四年前、杉下は何も聞かず俺を庇ってくれた。今度は俺の番だ』
改めてゆっくりと周囲を見回した。西崎はすでに覚悟を決めているようだ。落ち着いた表情をしている。杉下はまだ動揺していて、横たわる二人に視線を落としている。どうしたらいいか、混乱しているのだろう。意を決して口を開く。
「大丈夫、全部偶然だって言えば良い。俺と杉下は何も知らんかった。今日逢ったのも偶然…」杉下へ視線を向けて、言い聞かせるように言う。少し声が低くなった。「それでいいね」
杉下はそれが意味する事を理解したようだ。俺を見て、西崎に視線を移し、床に崩れ落ちて泣いた。そう、杉下、それでいいんだ。
「杉下を護ってやってくれ」
俺は杉下を何としても護る。その身と、彼女の気持ちを。そう決意し西崎に向かって頷き、手にした携帯で警察へ通報した。
程なくしてインターフォンがなった。〝安藤です〟
床に座り込んでいた杉下が慌てて玄関に向かう。杉下の声が飛ぶ。
〝入ってこないで〟〝お願い、待って!〟
杉下の制止を振り切り、安藤がリビングに現れた。部屋の有様に声を失ったようだ。杉下が力無く、先ほどと同じく俺の右隣に立った。耐えきれなくなったのだろう、安藤が口を開いた。
「何があった」
「逃げられなかった」
そう返す西崎の安藤への視線が厳しい。安藤はその視線に耐えられないのか、俯き、小さく呟いた。
「俺のせいだ」
その言葉に、杉下は安藤を見つめていた。感情の抜け落ちたような視線だった。
直後、警察が入って来た。
続く…
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